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ソニーの業績が拡大している。30日発表した2019年4~9月期の連結営業利益は、前年同期比17%増の5098億円と、同期間として3期連続で最高益を更新した。CMOS(相補性金属酸化膜半導体)イメージセンサーがスマートフォン向けなどで伸び、20年3月期の通期予想を上方修正した。ゲームや音楽などの安定した収益に半導体の成長が加わり、景気が減速するなかでも稼げるようになってきた。
「(半導体の)需要増加に対応する」。十時裕樹最高財務責任者(CFO)は決算会見でこう話した。長崎県内の新工場建設に踏み切るなど、21年3月期までの3年間で半導体向けに7000億円の投資を実施する。
米アップルの「iPhone」の最新機種では3眼のカメラが搭載されるなどスマホでは複数のカメラを搭載する「複眼化」が進む。CMOSセンサーの需要は大きく高まっている。
4~9月期の半導体部門の営業利益は前年同期と比べ63%増の1259億円。通期利益も従来予想から550億円上積みし2000億円とした。連結全体の通期の営業利益見通しは8400億円と従来予想から300億円上方修正した。
ソニーが20年ぶりに最高益を更新したのが18年3月期だった。その後、米中貿易摩擦や半導体市況の悪化など逆風が吹く中でも利益を高めている。多岐にわたる事業全体の収益構造が改善した効果が大きく、金融、ゲーム、音楽などで安定的に稼ぎつつ、半導体で成長を追う体制になってきた。
19年4~9月期ではゲーム部門の営業利益が1388億円と、部門別の稼ぎ頭だった。家庭用ゲーム機「プレイステーション(PS)4」では従来の高価格路線を修正し、台数を普及させて自社開発ソフトを伸ばして稼ぐようにしてきた。
音楽事業では18年に「クイーン」などの著作権を持つ世界大手EMIミュ
ージックパブリッシングを完全子会社化した。音楽の聴き方がCDなどから「ストリーミング」にシフトするデジタル化の流れに乗り、営業利益はこの10年で4倍弱に増えた。巨額の製作費用がかかる映画部門では管理職を削減し、テレビと映画で取り合っていた俳優をシェアするなどの改革を進めた。
電機ではリチウムイオン電池やパソコンなどの事業を切り離した。テレビは量を追わない戦略に切り替え、世界景気減速の影響を受けてはいるが、連結全体の業績への影響は限られる。
半導体の伸びしろは大きい。CMOSセンサーでは5割のシェアを握り、世界首位。スマホなど従来の用途に加え、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」で、電子の目の役割を果たすため自動運転などの用途が期待されている。
一方、米投資ファンドのサード・ポイントが半導体事業の分離・独立を求めるなど、株式市場では多角化経営に反対する意見もある。複数の事業を抱える企業では投資家が適正に価値を評価しにくいためだ。それぞれ独立した方が経営資源を集中しやすいと判断する投資家も多い。
ソニーの株価は18年9月の高値と比べて1割程度低い水準にある。投資家を納得させるためには半導体の成長期待などでさらなる株価の上昇が必要になりそうだ。