東京にいたころ。偏差値によって輪切りにすると、かなり低いレベルの大学で非常勤講師として教えていた。その大学とさして偏差値輪切りでは変わらないはずの大学から教えに来ている非常勤講師が、やたらと小難しいことを小難しく話すうえ、授業でその大学の学生さんをバカにすると評判が悪かった。
内藤 正典(ないとう まさのり、1956年9月29日 - ) は、日本の社会学者・地理学者・国際政治学者。同志社大学大学院グローバルスタディーズ研究科長・教授、一橋大学博士 (社会学)。
専門は中東の国際関係、特にヨーロッパにおけるムスリム移民の研究、9・11以降はイスラムと西欧世界との関係、現代トルコの政治と社会。80年代まではシリアを中心としたアラブ地域研究を行ってきたが、フィールドワークに重点を置くため、政治的な事情でトルコに研究対象を移し、さらに、9.11以降はヨーロッパ在住ムスリム移民および西欧とイスラームの衝突を抑止するための研究・著作を中心に発表。
どんなに偏差値の低い大学だろうと、学生さんをバカにしちゃあ、教師はおしまいよ。ところで、小難しいことを小難しく話したくてうずうずする気持ちは分からないでもないが、それは半端な学者のすること。研究所にいるのならともかく、大学で禄を食んでいるなら、それは間違っている。
給料の源は、あんたの眼の前にいる学生さんの親なんだよ。それなのに、ほんとなら、こんな奴らに教えている自分じゃないんだ、みたいな態度をとる大学教師を、若いのも、中年も、年寄りも、いやってほど見てきたけど、あんたたちのとんでもない見当違いだ。それなら、さっさと教員やめるべきだ。
学生さんを馬鹿にするなら、教師やるな。
ことのついでに思い出しちまった。何年か前、公共放送の学校放送番組の改編があったとき。担当の教員(それまで出演していた教員と学者)は、それなりに頑張っていたんだけど、NHK上層部のお達しで、エンタメ路線に変えると通告。つまりこれからは、お笑い芸人が番組を回し、先生は脇に控えろと
お笑いの人に罪はない。彼らは一生懸命やってくれたけど、どう考えたって、彼らは教師じゃないから、教科内容で番組を仕切れるはずはない。
番組に関する会議で、NHK本体の偉い人はこう言った。「先生、そういうけどね。通信制の高校生は、通信高校講座の番組なんて見てやしませんよ。見なくたってリポート書けるんだからね。だから、尺も20分、MCもお笑いで行きます。
それが事実かどうかよりも、ほんの少数でも、通信高校講座をみて、家で高校卒業の資格をとろうと勉強している人は、いたはずだよ、絶対。たとえひとりでも、勉強したいっていうひとがいる限り、その人たちに寄り添って、難しいことを易しく話していくのが教師だろ。
私が担当した番組のお笑いの人は、実にセンスが良かったし、頑張ってくれた。しかし、教科内容としては、その前、先生がMCと掛け合いでやってたころの5分の1ぐらいしか話せなかった。悔しかったし、怒ったけど、巨大組織と争ったって勝てやしない。
じっと再放送期間の3年が過ぎるのを待った。そのあいだに通信高校で勉強された方には、本当に申し訳ないと思う。NHKが、教師の意見よりも、視聴率のような数字を気にして、お笑いをつかえば観てくれるだろう、などという愚劣な発想で高校講座の番組をつくったことには今でも怒りを覚える
でも、今年から、新作に変わるという連絡を受けた。20分の尺は変わらないらしいけど、そこで何を伝えられるか、担当のCP(チーフプロデューサー)もPD(ディレクター)もかなり真剣に考えてくれているらしい。短期的な会社の方針で、教育というものをいじくりまわすんじゃない。
年明け早々、番組の打ち合わせ。しゃべりが下手でも、教科の内容をしぼってでも、可能な限り、勉強している学生さんたちに、きっちりお伝えするのが、学校放送番組の使命だ。このためには、小難しい話なんて、およそ要らない。何の番組、と思われるかもしれないから明かしますが、高校講座『地理』です
NHK高校講座・地理 出演者紹介(魚拓)
私がメディアにでるのは、ひどい戦争やテロが起きたとき。または、NHKの教育テレビでやってる高校講座。前者は限られた時間で、できるだけ分かりやすく事の本質を伝えることに専心。後者は、ニュースでは展開が速すぎてわからないことを、じっくり説明しながら世界の今を伝えること。
もう一つNHKが間違えていること。学校放送番組って、テレビでやるのもラジオでやるのもいろいろある。で、実は、高齢の方たちが聴いておられる。一種の生涯教育として。NHKにはずっとそのことを大事にするように言ったのだが、「生涯教育と学校放送は違う」という縄張りで切って捨てられた。
ニュースじゃテンポが速すぎてついていけないけど、高校講座の世界史、地理でそれをゆっくり30分(昔は30分だった)かけて先生が話してくれるから、よくわかったという意見をずいぶん頂戴した。しかし4年前にエンタメ路線を主張したNHKの幹部には一蹴された。年寄り相手の番組じゃないと。
1000人でも、100人でも、メディアを通じて勉強しようという通信制の高校生がいるかぎり、NHKは高校講座をきっちりやるべきだと思う。そんな視聴率や効率の悪い番組は要らないって、視聴者は言うだろうか?私は、言わない方に賭ける。
でも、実際、いたんだ。90歳近いおばあさんで、ニュースはどんどん先に行っちゃってわからないから、高校講座の世界史を何度も聞いて勉強してるっている人が。そういう人を大切にしろよ、NHK。