自然界に無駄なものなんてひとつもないんだ。
アメリカの非営利団体「Ocean Exploration Trust」が運営する海洋探査船ノーチラス号が、カリフォルニア州沖の海底でクジラの死骸を発見しました。
クジラの体長は4~5メートル。コククジラかミンククジラの可能性が高いそうで、まだ完全に白骨化していない状態から見ると、死後4カ月ほど経っているのではと推測されています。
あお向けに横たわるクジラの変わり果てた姿に、一種の無情さを感じずにはいられません。
そして、さらに目を凝らしてみると、その無情さを取り巻いているさらに無情な光景があらわに…。
タコ、ウナギ、無数に集まって茶色い毛皮のようにも見えるフナクイムシの類……。死肉に群がる海の底の生き物たちがうじゃうじゃと。
自然界に無駄なものなんてひとつもないのです。クジラのように大きな海の生物が死んで海底に沈むと、その死骸は晩餐会さながらの盛況ぶりを見せ、あらゆる生物が腹を満たしにやってきます。
稀にクジラの死骸が1,000メートルより深い海の底に沈んでいくと、あたりには異質な光景が広がっています。ほとんど光の届かない真っ暗闇、ものすごい水圧、無酸素状態。このような特異な環境を生き抜いてきたタフな生き物たちがわらわらとやってきて死肉のごちそうにありついている姿には、なんというか、すさまじい生命の力を感じます。
10月16日、カリフォルニア州モントレー沖のデビッドソン海山近くで発見されたクジラの死骸は、水深3,200メートルの海底に沈んでいました。遠隔操作探査機「ヘラクレス」が捉えた映像の数々はびっくりするほど鮮明で、蠕虫類やウナギ、タコ、カニやエビなどの甲殻類、節足動物類などがはっきりと見て取れます。
クジラの死因はまだ分かっていません。最近エサ不足によるコククジラの死が多発しているとのことで、このクジラともなんらかの関係があるかもしれないそうです。
または、船との接触事故で死んでしまった可能性も。ですが、ノーチラス号に乗船している海洋生物学者たちが見たところでは目立った骨の損傷は確認できていないそうです。
今後はまだ肉が残っている部分をサンプルとして集め、研究に役立てるそうです。これだけ一生懸命食らいついているタコさんたちからごちそうを奪うのは、ちょっと申し訳ない気もしますが。
でもこれらのサンプルから集められたデータは世界中の海洋生物学者たちに提供されるそうだから、科学の名において許して~。
例えば、この水深の酸素濃度だとか、この水深の酸素濃度でどのように腐敗が進むのかとか、骨を喰らう蠕虫類の実態だとかがクジラのおかげで解明されるかもしれないそうです。
遠隔操作探査機には目もくれずに黙々と食べ続けている深海生物たちですが、そのうちの一匹は「ヘラクレス」に興味を持ったようで…
Announcement: Citizen science isn't just for humans anymore. This octopus was just hanging out on @EVNautilus's ROV Hercules in @MBNMS!
Watch live: http://nautiluslive.org
Learn more: https://sanctuaries.noaa.gov/live/2019/oet.html …#SanctuariesLive
…ぴょいこらと乗ってきたんだそうですよ。
おいしそう、とまで言えそうなかわいいピンク色をしたタコさん。君の体を作っているのは、君よりももっとずっと体の大きな命だったんだね。
Reference: Nautilus Live