個人で基板を作りました
個人で基板を作りました。実は、昔(5年くらい前)はハードウェアエンジニアだったので、一応元プロ(多分、あんまり自信ないです)なのですが、個人では初めて基板設計しました。
自分の場合は、仕事だと基板自体の設計(アートワークと言います)は、ほとんど外注さん任せですし、基板の製造も会社でメーカーやルールはほとんど決まっていたので、個人でやるのは、色々と初めての経験ばかりでした。
というわけで何か良さそうな本はないかな、と思い買ったのがMaker Faire等様々なMaker系イベントに出展されているKimio Kosakaさんの以下のテキストでした。
実は、この本が良すぎてほとんどこの本の通りにやったら、基板が出来てしまいました(笑)なので、初心者はKimio Kosakaさんの本を買いましょう。
この記事では、メモがわりに本を捕捉する形で書いておこうと思います。
というわけで、電子工作をある程度したことのある、初級者レベルの人を想定して基板を作る流れを簡単に紹介していこうと思います。
個人での基板設計
基板を作る流れは、個人でも仕事でも大体同じで以下の通りです。
- 構想設計
- 回路設計
- 基板設計
- 基板製造
- 部品実装
仕事だと、お金の話とか、恐怖(?)の社内レビューとか、その他色々会社ごとのルールがあると思いますが、ここではそんなことは全て忘れて、ひたすらモノづくりをエンジョイします。
仕事だと、基板設計、製造、実装は外注することも多いです(会社によっては、回路設計も外注です)が、個人なので基本全て自分でやります。今回は、基板製造だけを外注しました。基板製造まで自分でやる方法もあるのですが、最近は中国メーカーがとても安く、高品質で基板を作ってくれるので、製造はお任せするのがオススメです。
構想設計
最初に、どんなものを作りたいのかという構想を練ります。仕事だと、仕様という形で降ってくることが多いかもしれませんね。
個人の場合は、電子工作のときブレッドボードを組んだ回路を基板化するのがオススメです。特に、基板化のメリットは、小さいケースに納めたい場合や、たくさん作りたい場合ですね。
私の場合は、練習として以下記事でブレッドボードで作成したルンバをラズパイで制御するとき、ルンバとラズパイを接続する回路を基板化してみることにしました。
良いものができたら、基板の販売といったことも面白いかもしれません(ハードウェア同人は、基本修羅道なので、あんまり儲けは考えない方が良いかとは個人的に思います)。
いずれにしても、最初は欲張らず小さい基板から始めるのが良いと思います。そうしないと部品の実装で死にます。
回路設計
回路設計をします。回路設計の基本に関しては、この記事では省略します。個人で電子工作を楽しみたいという初心者の方は、ラズパイマガジンあたりから入ると良いと思います。私も記事を書いたりしていますので(さりげない宣伝)。
PCで回路を書くには、回路CADを使います。今回は、冒頭で紹介したテキストのタイトルにもなっている「KiCad」というフリーのCADソフトを使います。以下からダウンロードしましょう。
Macの場合は、Homebrewで以下コマンドでダウンロードしてもOKです。
$ brew cask install kicad
Homebrewが分からない人は、以下記事参照下さい。
KiCADがインストールできたら、起動してテキストを参照しながら回路を描いていきましょう。まぁ、ここらへんはノリで適当にやればできます。
完成したヘナチョコ回路
注意するべきは、使いたい部品の納期ですね。ものによっては、在庫が切れていたり、時間がかかったりするものも多いです。
そして、基板を作るときは小さい部品で詰め込みたくなりますが、個人だと部品を実装するのも当然自分です。いざ部品を実装するときに、半田付けできないという悲劇に見舞われないように、初心者の場合は「大きめの部品を使う」「部品数を少なめにする」「部品同士の間隔を確保する」といったことに気をつけましょう。
回路設計が終わったら、早めに部品を注文しておくと良いです。電子部品の購入先は、以下記事など参照下さい。
慣れている人は、海外サイト等を使えば良いですが、初心者は秋月電子あたりで全部の部品を揃えるのが楽です。
基板設計
KiCADで基板設計をしていきます。この作業はアートワークと呼ばれます。
アートワークもテキスト通りにやればばっちりでした。自動配線のテクニックのおかげで、とても簡単に作れます。
重要なのは、部品配置ですね。適当に配置すると以下のように非常に複雑な配線になります。
複雑な配線
ここで信号の流れを意識して、部品の配置を変えるだけで、以下のように非常にすっきりとした配線になります。
すっきりとした配線
また、配線とビアのクリーンアップとDRCのときはBでベタ領域を再描画しましょう。テキストを読めばなんのことか分かると思います(分からなかったらすみません)。
アートワークで間違えやすい上に、リカバリーが大変なのはコネクタのピン配置です。特に、基板の裏表等を意識して、何度も確認しましょう。仕事で何人もの人が、ピン配の誤りで絶望するのを見たとか見ないとか(幸いにも私は間違えたことありませんでした)。
他、よくやるのはTX(送信)とRX(受信)のつなぎ間違いあたりですね。
KiCADの基板設計の機能で「表示 -> 3Dビューワー」で以下のような3D図が表示できます。
3D図で確認すると、コネクタの向きや部品の実装等、思わぬ問題が見つかったりするので、一度見ておくのがオススメです。無駄にカッコいいですし(笑)
基板製造
アートワークが完成したら、必要なデータを出力して基板の製造依頼をかけましょう。テキスト通り基板メーカはSeeed StudioのFusion PCBを使います。仕事で多くの基板メーカを使いましたが、はっきり言って信じられないくらい激安です。
基板メーカに送るデータの出力は、色々設定があり複雑ですが、テキストに詳しく書いてあります。素晴らしいですね。
発注するときの基板仕様の指定は、以下のように選択しました。
住所入力のときは、以下のような日本の住所を海外向けに変換してくれるサイトを使うと便利です。
自分は、結構適当に入力してしまい、一度住所不明になってしまい再配送を依頼する羽目になりました…ちゃんとルール通り書きましょう。
発注完了すると、以下のような表示が出ます。
ちなみに、価格は基板代が約5ドルで、送料が約20ドル、合計25ドルです。ほとんど送料ですね。送料抜いたらバカみたいに安いです。
発注したら2週間もしないうちに届きました。
こんな感じで届きます
大量の基板!
基板は予備考えても3枚あれば十分なのですが、値段変わらないのでたくさん頼みました。
表側
裏側
見た感じは悪くないですね。
いくつか、テスターで導通を確認してみましたが、どの基板も配線しっかり繋がっていました。
部品実装
基板が届いたら、いよいよ部品を実装していきましょう。半田こてや半田、ピンセット、テスター、ニッパー、手元のライトなど用意して実装していきます。
実装に関しては、色々細かいテクニックがありますが、全てを文章で記載するのは困難なため、この記事では省略します。
実装の様子(イメージ図です、もうちょっと整理した中で実装してます)
完成した基板
これで自作基板完成です。あとは、ちゃんと動作確認(テスト)をしましょう。ハードウェアのテストも中々奥深い世界なのですが、ここでは個人用途のため省略します。
まとめ
個人で自作基板を作った記録を残してみました。自分で作ったものが、作った通りに動くのはなかなか嬉しいですね。仕事で何度も基板作った自分でも嬉しいので、初めて個人で作る人が、出来上がったものを動かしたときの感動は相当なのじゃないかなと思います。
今は非常に安く簡単にできるので、気軽に基板を作ってみると、作れるものの幅と可能性が広がって良いのではないかなと思います。
繰り返しになりますが、初心者の方には以下のテキストがオススメです。ちなみに、特にお金を貰っているわけではありません(笑)
なお、今回は作り方にフォーカスしましたが、製作した基板でやったことに関しては、また別の記事で詳しく取り上げたいと思います。
参考リンク
Raspberry Pi HAT KiCAD Template - Hackster.io