「本当に怖い、でも戦い続ける」普通の香港市民が抱く、心震える思い

「長期戦」への覚悟が固まった
ふるまい よしこ プロフィール

「政府が何をしてくれる?」

――ここ数日は、かつてのような激しい衝突は減ってきましたね。抗議活動も、行進や歌を歌ったりするスタイルが増えている。

黄:みんなが長期的な抵抗に心を切り替えたからでしょう。まずは自分の生活スタイルを取り戻そうとし始めているんです。

それはわざとではなく、自然な流れです。わたしのようにこれまで重苦しい気持ちに苛まれてきた人たちがさまざまな体験を経て、以前ほど苦しいと感じなくなってきた。ここまできたら抵抗自体が自分の生活の一部になってしまったんです。だから、勉強すべきは勉強する、仕事をするべきは仕事する。

 

だって、期待を寄せても政府が何をしてくれる? わたしたちはもうかなりの間、こうした「無政府状態」を受け入れてきました。香港にはもともときちんとした生活基盤があるので、そうした(無政府)状態下でも「自動ギア」で走れちゃうんです。企業は企業としての仕事を、役所は役所がすべき作業をやり続ける。こうした人たちがそれを忘れてしまったら、香港は本当に混乱状態に陥ってしまいます。

黄(夫):ぼくはある意味、現時点でデモはある程度成功したと考えています。だって、ぼくらはみんなで我慢して経済に影響を与え、大財閥が牛耳っている経済に影響を与えたわけだから。一般庶民は10%くらい資産が縮小してもどうにかなる、でも大金持ちにとっての10%は非常に大きな額です。

企業はすでに予算を縮小していますね。そんな経済のプレッシャーが政治にプレッシャーをかけている。つまり、政治が政治的な手段で問題を解決しないからこそ、経済が減退し続ける。これこそがぼくらの「元手」なんですよ、財布の紐を引き締めて起こしたことです。

黄:わたしたちも生活面でお金を使わずにすむところは使わないようにしています。節約の意味もあるし、収入も減っている。でも、子どもたちの塾などは支払い続けなければならない。だから大変なんです。

――でも五大要求は維持し続ける?

黄:もちろん! そこは変わりません。いつになったらこの要求が実現されるのかは全くわかりませんが……今は希望はないけれど、香港の若者は素晴らしい。彼らを見ていると、わたしたちにはまだまだ希望はあると思うんです。