「本当に怖い、でも戦い続ける」普通の香港市民が抱く、心震える思い

「長期戦」への覚悟が固まった
ふるまい よしこ プロフィール

――あなた方としてはどんな有効的な手段がおありですか?

黄:使えると思っていた手段はほぼ使い尽くしてしまいました。でも、事態は大して大きく変わっていない。「林鄭よ、辞職しろ」とか「五大要求」とか、少なくとも独立調査委員会の設立を、と言っても実現されない。

だから、みんな落ち込んでいます。これだけ長い間戦い続けて、手にしたのは改定案の撤回だけ。大きな犠牲を払ったのに。一方でこの騒ぎを引き起こした本人はぴんぴんしていて、いい暮らしを続けている。そんなのを見ていると、本当にやるせないです。

ときどきふと思い立って「移民先でも探そうかしら」って言うんだけど、家族がみんな「やだ」(笑)。香港は自分の家だし、簡単に見捨てるなんてできない土地だって言うんです。たとえ、ここを離れてどこかに移住しても、結局は故郷で起きていることが気になって仕方がない。移住しても必ずしも幸せに暮らせるとは限りません。なので、ここに残って抵抗を続けようと思っています。

 

――お子さんたちの留学は考えておられませんか?

黄:もともとは、ここで大学に行かせるつもりでした。でも、これだけ長い間の抵抗を経てもなんの希望もなく、将来に期待できないと感じ始めたので、子供を海外に留学させて選択権を与えたいと思い始めました。帰ってくるならそれでもいいけれど、他の土地で大学に進めば海外での就職というチャンスもある。そうなれば、選択の幅が広がるわけです。

わたしたちも以前は年をとったら中国国内で暮らしてもいいかな、という話をしていたんですが、今回の事件を経て、将来あそこには住むことはないと思うようになりました。

習近平国家主席〔PHOTO〕Gettyimages

――ビジネスの方の影響は?

黄:うちは会員制のレジャー・サービスを提供しているんですが、会員が減少しました。地下鉄はよく止まるし、道が封鎖されていたりと、出かけたくても大変だからと、契約中止する人も多くて返金に追われています。収入面でも大きなプレッシャーになっています。

あと、わたしたちが作っているオリジナル商品もオンライン販売しているんですが、先月から売上が3割も減っています。たぶん、今月は半分くらいまで落ちるでしょう。

とにかく、誰もがショッピングしたり、レジャーを楽しんだりという気分にならないんです。わたしだって先月まではスーパーや八百屋で必要最低限買い込むだけで、その他の商品を買いたい、欲しいと感じることすらなかった。

以前なら1ヶ月に1回は家族で映画を見に行ったりしていたのに。一家4人で出かければ、食事したり、ショッピングを楽しんで、1回最低1000香港ドルは消費していました。でも、ここ数ヶ月一切そういうことをしていない。