「本当に怖い、でも戦い続ける」普通の香港市民が抱く、心震える思い

「長期戦」への覚悟が固まった
ふるまい よしこ プロフィール

――学生が平日に街を歩いていてもよく警察に難癖つけられていますね?

黄:出かけるときには絶対に黒い服を着るなと言ってあります。でも、弟の方はもともと黒が好きで、持ってるTシャツの半分が黒で…それでも週末に出かけるときは必ず色のついた服を着るようにと口を酸っぱくして言っています。

7月21日に地下鉄元朗駅が襲撃された*3翌日、香港中が震え上がっていた時、あの子は同級生と約束してるからと、それこそ元朗にご飯を食べに行った(笑)。止めときなさいよ、と言ったんですが、本人は「ビビることなんかないよ」「地下鉄には乗らずにバスで行くから大丈夫」と出かけ、夜の11時過ぎにやっと帰ってきましたよ。わたしは気が気じゃなかった。

実際、あの7月21日以降、事態はますます恐ろしいことになってしまった。我われは今でも本当にビクビクしながら過ごしていますよ。

 

毎日のように死体が見つかる

――具体的に怖いとは?

黄:「人が死んだ」という情報がたくさん流れてくるからです。ここ1カ月の間、毎日のように死体が見つかっています。そしてどのケースも死因などに怪しい点や疑問点があって、ほとんどが20歳くらい、あるいはティーンエージャーも含まれている。すぐに火葬されてしまうのもおかしい。さらに、そうして亡くなった人たちの家族が声をあげないし。

8月31日の夜*4に警察に首を後側に90度折られた市民6人分の遺体を見た、という噂も流れました。情報を流した人の友人が遺体安置所勤務で、そんな遺体があったというんです。だからこそ今でも毎日現場となった駅に人が集まって花を捧げているんですよ。そういうことばかりで本当に恐ろしかった、特に8月、9月は。

今は大きな衝突が少なくなったこともあって精神的に落ち着いてきました。長期的な抵抗に立ち向かう心の準備ができたからです。今はやるべきこと、自分の仕事や生活のことを考えるようになった。というのも、この事態はしばらく続くはずだから。すぐに解決して終わることではないから、すでにわたしたちはこのために長期的な心の準備段階に入っています。

そうでなければこうやってインタビュー受けることもしなかったでしょう。先月までは本当に気持ちがふさいでいて、こんなことを話したいとは思わなかった。