10月23日、香港政府はやっと最高議決機関である立法会で「逃亡犯条例」改定案を正式に撤回することを宣言した。6月9日に100万人の反対デモが起こってから4ヶ月以上かけての撤回である。
しかし犠牲は大きく、また今後も事態が容易に収集するとは思えない。9月に林鄭月娥・行政長官が撤回することを発表した後も抗議デモの勢いは衰えておらず、今月1日の国慶節(中国建国記念日)にはとうとうデモ隊が警察に拳銃で胸を射抜かれるという事態も起こった。
10月15日、香港紙「明報」が最新の世論調査の結果を発表した。それによると、市民の警察への信頼度を「ゼロ」と答えた人がなんと過半数の51.5%を占め、「どちらでもない」が7.5%、そして「10点満点」と警察を評価する人が9.3%。「ゼロ」とは言わないまでも信頼感が低いとした回答者を含めると、市民の7割以上が警察に不信感を抱いていることが明らかになった。
またこの調査で最も衝撃的だったのは、市民の68.8%が「警察を再編せよ」とまで要求していることだ。
デモが長引き、社会の基盤が大きく揺らいでいる時、市民はいかなる気持ちで生活を営んでいるのか。中学生と高校生の子供を持つ、黄さん夫婦(夫57歳、妻45歳)に話を聞いてみた。
わたしの30年来の友人である夫の黄さんは香港で生まれ育ち、中国で知り合った妻と結婚し、夫人も香港に暮らすようになってほぼ20年経っている。なお、インタビューは夫婦二人同席で行ったが、読みやすさを考えて一部を除き二人の言葉をまとめて表記した。
――上のお子さんが18歳、下が15歳ですよね。お子さんはデモに参加しているとのことですが、それをどう見ておられますか?
黄:大事なことなので応援しています。よその学校では学生の活動を阻止しようとして逆に反発を招いて騒ぎが大きくなったりもしていますが、うちの子たちの学校は学生にやりたいようにやらせ、終わったらハイ授業、という感じです。それで過激なことも起きていません。