◇27日 ラグビーW杯準決勝 南アフリカ19-16ウェールズ(日産スタジアム)
必死に食らいついたウェールズは、わずかに3点が届かず、決勝の扉を閉ざされた。ガットランド監督は「勇気を持って戦い、最後まで粘った。非常にタフでフィジカルな試合だった。選手の一人一人を誇りに思っている」と振り返った。
人口は約300万人。世界地図には独立国としては載っていない。英国グレートブリテン島の西の外れ、炭坑と漁村の連なる一地方にすぎないウェールズは、それでも独自の文字と言語と文化を持つ誇り高い「国」だ。イングランドに併合されて何百年が過ぎても、独立心は失わない。
苦難に耐えてきた民族の歴史の象徴がラグビーだ。苦しい局面でも決して希望を失わない。南アとの準決勝は、ウェールズのアイデンティティーを象徴するような展開だった。
前半はひたすら耐える時間。南アのSHデクラーク、SOポラードの蹴り上げるハイボールが雨あられと振ってくる。だが、リアム・ウイリアムズの負傷で急きょ先発したFBハーフペニーが再三の神業キャッチでピンチの芽を摘む。
ガットランド監督は戦前言っていた。「彼は空中戦では世界一のFBなんだよ」。その安定感がチームの粘りを生んだ。PGで先行されても粘り強く追いかけ、後半開始早々には9―9と並んだ。トライでリードを奪われても、WTBアダムズが奪い返す。左隅の難しいゴールをハーフペニーが蹴り込み、3たび追い付いた。
だが、そこまでだった。残り5分を切り、無情のPGを献上。欧州6カ国対抗の王者は、南アの強固な壁を突き崩すことができず、ノーサイドを迎えた。