「落ち着いて下さい。何がありました?」 「えっと、その、……あぁぁ…ッ!!!」 電話口の声は混乱し、完全に冷静さを失っていた。他の連中に聞かれないか確認してから、受話器の口元をかばい小声で先を促す。
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「何があったんです?」 「あぁぁあぁあの…お、…ぉぉ……俺……、」 「…落ち着いてたつきさん!今そこにゆっこを行かせます。私もすぐそっちに行きますよ!」 「あ、その……多分……無理です。l」 声に怯えと達観…。……まさか、電話をかけながら、すでに何者かに囲まれている?!
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「たつきさんは今、携帯電話からかけてますよね?どこにいるんですか?!」 たつきさんの声以外の雑音が凄まじい。居酒屋からか。メモに殴り書きをし、対面の駅長さんに突きつける。 (シンジュク、キンノクラ!!)
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駅長さんがすぐに事態を飲み込み、慌しく内線を回す。 「落ち着いてたつきさん! 今はどういう状況なんです?!」 混乱した相手に余計あおるような言い方はよくないのだが、今回はそういうケースじゃない。たつきさんは危機に襲われ、逃げて電話をかけてるんじゃない。
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今この瞬間も何らかの危機にさらされている…! だが、こっちがまくしたてたって、たつきさんは余計に焦るだけなのだ。たつきさんは助けを求めるためだけに電話をしてきたんじゃない。それ以上の何かを伝えたくて電話をしてきてるのだ。
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そしてその何かは、この電話の機会を逃すと、もう二度と伝えられないという確信に基づいている…! 駅長さんがメモを回してきた。 (新宿に金の蔵は14ヶ所。ひとまずいつもの店にゆっこさんを向かわせました。5分です。) 「かかり過ぎです!車には何人乗ってます?」 「ゆっこさん1人です」
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足りない。……もしも私の想像通りなら…たつきさんは多人数に囲まれている。それに5分じゃ遅すぎる! 「慶福さんには電話しました?!」 「ライザのアトリエプレイ中で連絡不能。」 「くそッ!!駅長さん、車を回して下さい。」 「了解っす!!!」
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「…もしもし?平安さん…?ごほっごぼッ!!」 「もしもし!大丈夫です。ちゃんと聞こえてますよ!」 たつきさんの様子がおかしい…。今の咳の音は普通じゃない。……嘔吐?それともまさか…血?!すでに襲われ負傷している?
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「たつきさん、今そこにゆっこが向かっています。2〜3分で到着しますから何とか持ちこたえて下さい!もしもし?!聞こえてますか?!たつきさん?!」 受話器の向こうで咳き込むのが聞こえた……脳裏に最悪の予感が過ぎる。 「たつきさん!!犯人は誰です?!何人なんですッ?!」
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「…お、…俺も……最初はニンゲンが犯人なんだと思いまし……げぼッ!!」 咳とも嘔吐ともつかない呻き。 「大丈夫ですか!!たつきさん!!」 「犯人はニンゲンなんだって、ネズ神さまの祟りなんかないんだって、そう思ってました…。ついさっきまで。…だけど……やっぱり…、げほげほ…ッ!!」
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激しい咳。それに続いて嘔吐。 「……でも…やっぱり…ネズ神さまってのは……いるんだと思います……。いや、います。今。」 「たつきさん、どうか、どうか落ち着いて…」
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「なんかさっきからおかしいと思ってたんです…。ずーっとつけてくるんですよ…!!走っても走っても、走っても走っても…!!!影みたいにぴったりくっついて!!だけども少しずつ…少しずつ…。俺の背中ににじり寄ってくるんです……。」
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「……たつきさん、そいつは……今、ひょっとして……たつきさんの…後ろに?」 「……………後ろに。……すぐ……後ろに………」 「お願いですたつきさん……怖いのはわかります。ですがお願いです!!……あなたの後ろに……誰がいるんですッ?!」
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「振り向けるわけ…ないじゃないですか…。振り向いたら……俺……俺…」 「怖いのはわかります!!でも教えて欲しい!!ちょっと振り返るだけでいいんです!!たつきさんの後ろに……誰がいるんですッ?!?!」
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直後に激しい悲鳴が聞こえる。それから何か嫌な音。 「……たつきさん……あんたまさか…アニメを作ってたりは……しないでしょうね…?」
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返事はない…ひたすらカチカチとマウスをクリックするような音……ガタンガシャン!とぶつかり合う音がした。たつきさんが携帯を落としたのだろう。電話の向こうからは唸りと嗚咽、そして繰り返される……異音。 「もしもし!もしもし?!たつきさん?! もしもーしッ?!?!」
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離された受話器の声がどんなに遠いかよくわかってる。でも…叫ばずにはいられないのだ。その時、受話器の向こうから…つぶやきが聞こえた。何を言っているのかはわからない。……口調からして…独り言?それとも…そこにいる誰かに言っているのか? 「もしもし…? …………………たつき…さん…?」
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それはつぶやきというより……お経みたいな、単調な何かの繰り返しだった。その何かを聞き取ろうと…神経を研ぎ澄ます…。何を繰り返してるんだ彼は……。一体……何を………!!! ぶつん! あまりに唐突に切れた。
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「…………あ。」 唐突に切られたから。…むしろ最後の一言は鮮明に脳裏に残った。 「平安さん、車はOKっす!!!平安さん…?!」 「……まだ作らへんの、だ。」 「平安さん……??」 たつきさんはずっと繰り返してたんだ。…まだ作らへんの、って………。
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