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人事に科学を!HRテック
活躍する人材は「波形」から見つける?
金融とITの組み合わせは「フィンテック」。そして「HRテック」は、「Human Resources Technology」、つまり「人事」と「テクノロジー」を組み合わせた造語です。前例や経験則に頼りがちな人事も、HRテックを使えば、もっと人材を生かすことができるというのです。
隠れた人材 テクノロジーで探す
広島市で、自動車部品や金型などを造っている従業員1900人余りの企業「ヒロテック」。HRテックで社内の隠れた人材を見つけようという取り組みが行われています。責任者は、人材開発センター部長代理の小西信博さん。ここ数年、会社は事業を拡大していて、新規事業で活躍できる適性を持った人材を見つけ出すことが急務でした。
小西さんは「私の中では、そういう(優秀な)方々は(社内に)もっといるんじゃないか。ただ目が届かなくて、“いない”ことになっているんじゃないか」と考えています。
新規プロジェクトに向いているのはどんな人? 「波形」で分析
そこで活用し始めたのが、ある人事ソフトでグラフ化される、社員の適性検査の「波形」です。青い線で示されているのが平均値。一方、赤い線で示されているのが小西さんの波形です。小西さんは、環境順応性が低い値だった一方、革新性や活動性の値が平均より高くなっています。小西さんは技術者として長年、工場の生産設備の設計を担い、数々の新規プロジェクトを手がけてきました。
続いて、顔写真が並べられた図を見せてもらいました。この図は、隣に並んで表示されている社員は、波形が似ていることを表しています。小西さんは、自分の考え方に近ければ、その社員は新規のプロジェクトに向いているのでは、と考えました。
すると、小西さんと波形がほぼ一致した社員がいました。小西さんはこの社員に、波形の意味について説明。「非常に(私に)近い。結果を見ると、活動性、革新性、積極性が高い。ふだんから新しいことに取り組むとか、今も開発のプログラミングとかされている」と話しました。男性社員は「うれしいことです」と笑顔を見せました。
小西さんは今後、こうしたデータを蓄積していくことで、個々の能力を最大限に生かした人事配置ができるのではないかと期待しています。「その人のまだ知られていない技能や能力を見つけ出して、100%発揮できるような職務についてもらう。そういうことにつなげていきたい」と話しています。
「属人的な人事管理」から人材データ活用へ
この人事ソフトを開発した会社「プラスアルファ・コンサルティング」は、これからは社員のデータをいかに活用できるかが、企業の生産性を大きく左右すると見ています。
鈴村賢治副社長は「今までの属人的な人事管理では、もう限界がある」と指摘。「生産性を本気で上げるためには、社員のことを理解する。その情報を効果的に活用することによって、組織づくりをする。ここに踏み込んでいく必要がいよいよある」と話しています。
関口さん、こういう時代なんですねえ。適性検査の波形が全部平均値だったら「普通の人ですよ」と言われているみたいだし、自分と似た波形の人がいたら「代わりはいくらでもいますよ」と言われているみたいだし…。ただ、もうそういうやり方で優秀な人材を見出していくということなんですね。
そうですね。ある種の客観的な物差しを人材に当てることは、人事評価の透明性につながるのかなという気はします。ただ、最後の判断はやはり、人間の役目だと思いますね。HRテックは、人間の判断を助けるツールと考えるべきだと思います。