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【社説】

台風・豪雨被害 生活再建の支援を急げ

 度重なる台風による水害で被災者の生活再建の見通しが立たない状況が続いている。とりわけ再建のかぎとなる住宅支援の遅れが深刻だ。自治体任せではない国主導の支援拡充を急ぐ必要がある。

 台風19号やその後の豪雨の影響などで約三千六百人が避難所生活を余儀なくされている。大半は浸水で自宅が損壊した人々だ。

 大規模災害で住宅が壊れた場合、公的な支援を受けるためには罹災(りさい)証明が必要だ。証明は地元の市町村に申請してもらう仕組みだ。しかし、申請が殺到して対応する職員が不足し、証明を受け取るまでに相当な時間がかかる問題が出ている。

 先月の台風15号で被害を受けた千葉県でも発行が大幅に遅れるケースが多発。その後に相次いだ台風や豪雨の被災地でも同様の事態が出始めている。この遅れは過去の台風被害の際にも指摘されており、自治体側の対策に甘さがあったと言わざるを得ないだろう。

 罹災証明は、一部損壊なら被災者が撮影した写真などを使って簡易判定してもらい発行することが可能だ。ただ全壊や半壊の場合は職員の現地調査が必要で対応には時間がかかる。

 各自治体は職員を増やし対処しているが人員は足りていない。ここは発行要件を制度的に緩和し、簡易判定の対象を大幅に拡充すべきではないか。

 水害の場合、木造住宅は放置すれば傷みが進んで損害の度合いが大きくなるケースが多い。損害の程度が軽微に見える家屋でも、浸水で基盤が緩み建て直さざるを得ない例もある。

 内閣府などによると今回に限らず罹災証明の申請自体が少ない傾向が続いている。住む家を失うという事態に直面し、支援の仕組みがあることさえ思い至らず泣き寝入りしてしまう姿は想像に難くない。だが支援なしでは最悪の場合、家だけでなく故郷も失う。支援策の周知徹底も課題だろう。

 災害の時、生活支援の主役は各自治体だ。だが年々、台風は大型化しその被害も甚大になっている。政府は国土強靱(きょうじん)化をうたうが、いくら治水事業に予算を投じても完全に被害を食い止めることは不可能だ。

 今回の浸水被害で、自治体ごとの支援に限界があることが改めて浮き彫りになった。罹災証明の遅れなど具体的な課題を迅速に解決するためにも、より国が深く関与した強力な生活支援体制の構築が急務だ。 

 

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