北朝鮮の処刑場318カ所を特定 「韓国のテレビ見て死刑」 NGO報告
韓国のNGOは11日、北朝鮮の処刑場318カ所を特定したとする報告書を公表した。公開処刑が実施された場所だと説明している。
NGO「転換期正義ワーキンググループ」は、約4年かけて計610人の脱北者に聞き取りをし、報告書「死者の運命のマッピング」をまとめた。過去数十年間の処刑について、証言を集めたとしている。
報告書によると、死刑の罪状には、牛を盗んだことや、韓国のテレビを見たことも含まれている。
家族を強制的に立ち会わせる
公開処刑の場所は、川辺や広場、市場、学校、運動場が使われた。処刑の際には、1000人を超す群衆が集まることもあった。中には7歳の子どももいたという。
政治犯に鉱山や山林での作業をさせる強制労働収容所や刑務所など、隔離施設で公開処刑が行われることもあったとされる。
死刑を執行される死刑囚の家族も刑場に連れ出し、処刑場面を強制的に見せることもあった。そうした家族には、死刑囚の子どもも含まれていた。処刑後の遺体が遺族に返されることや、埋葬場所が遺族に知らされることは、めったになかったという。
「お前たちにも起こるぞ」
2000年代初めに強制労働収容所に入れられていた脱北者は、中国に脱出しようとしたとされた女性3人の処刑を見せられた。刑場には収容者80人が集められたという。
処刑の際、治安当局者が「これはお前たちにも起こりうる」と収容者たちに向かって言ったという。
報告書は、北朝鮮では死刑が恐怖政治の中心的な道具になっていると指摘している。
酔った勢いで執行
大多数の処刑は、射撃隊による銃殺だったという。射撃隊は3人構成が多く、各自3発発砲するとされる。
死刑を執行する役人の中には、精神的な負担を軽くするため、わざと酒を飲んで酔っ払った状態で臨む者もいたという。
報告書を執筆したイーサン・シン氏はAFP通信に、「公開処刑の数は減少傾向にあるようだ」と述べた。ただ、北朝鮮政府が「ふつうの国として認知されるよう」、極秘に処刑している可能性はあると話した。
北朝鮮における死刑の件数や、誰が死刑執行されたのかを確認するのは非常に難しい。これまで、政府高官が処刑されたとの情報が流れ、のちに生存が確認されたケースも少なくない。