「伝えることを、もっと簡単に。」をミッションに掲げ、現在はビジュアルSOPマネジメントプラットフォーム「Teachme Biz」を開発・提供している株式会社スタディストさま。
※SOPとは:標準作業手順書(Standard Operating Procedures)
「学ぶ」「研究する」「人」という名前の由来に違わず、エンジニア陣にも学習意欲・向上心の高い人が多くそろっていました。
計4名のシリーズとなる第3回は、情シスのプロフェッショナルである岡村慎太郎さん(@okash1n)に登場いただきます。
情シスは、もともとすごく得意だと思っていました
――まずは、岡村さんの職務内容について伺えますでしょうか。
岡村 今現在は管理部の情報システムグループにいます。私が入る前は情報システムグループが無かったので、総務や経理の方、一部の開発メンバーが協力し合って出来る範囲で運用してくれていました。
私はそこを巻き取って、あるべき形に変えつつ、より効率化していく。情報システム部の立ち上げみたいな所を担っている感じです。
――なるほど。「あるべき形」というのは具体的にはどの様な感じなんですか?
岡村 そうですね、これまでは自動化の考え方があまりない状態で。
例えばいろいろな管理表とか管理簿を作ろうとした時に、全部をベタ書きで手打ちしていくというふうになりがちなんですね。本来は一項目でまとめられるようなものもあったり、どこかの項目が紐づいて「この項目はこれだけしか表示されちゃダメなのに」みたいなのができてなくて整合性が取れなかったり。
それをロジックが通るように作って、いろいろなデータベースを使って、そのほかのいろいろな業務に流用できるような形に整えていく、というのが今やっていることのひとつですね。
――なるほど、完全に情報システム部門ですね。
岡村 そうですね。
――前職に転職される前は「プロダクトをやりたかった」とのことですが、結局は情報システムの方に戻られたというキャリアなんですね。
岡村 もともと、情報システム自体はすごく得意だと思っていて、ただ、より突き詰めた情シスをやるためには自分自身の専門性というところ、技術力というのがもっとないといけないなと。それでアソビューに入ってSREをやっていたんですが、もともと将来的にはまた情報システムをやりたいとは思っていたんです。
――なるほど、一時的に離れたのも情報システムとしての力量を上げるためだったんですね。
岡村 そうですね、やっぱり自分ができる領域が今の会社だとすごくたくさんあって。やらなきゃいけないこと、やるべきことがあって、かつ寄与できる部分が大きい職場だと思っています。
――なるほど、今の職場でやりがいを感じる時ってどんな時ですか?
岡村 例えば、管理のマスターを作る時にはこういう風な事を考えなきゃいけないんだよ、とか、もともと管理部門で個別のDMとかでいろいろな質問を受けたりしていたんですけど、チームで仕事をして、チームとして成果を出す為には入り口を一本化してタスク管理できないといけないよね、とか。
エンジニアだとチーム開発する上で当たり前にやっていることが、意外とバックオフィス部門だとできていなかったりするんです。自分がそういう考え方を持ち込みつつ、効率よくやるための仕組みを自分の持っている技術力を活かして作っていったり。今は、それがやりがいだなと思っています。
気づいたら、情シスに配属されていたんです
――恐らく、本連載で情報システム部門の方は初めてかもしれませんね。
岡村 そうですね、どちらかと言うとプロダクトサイトのエンジニアの方が多いですよね。
――そもそも、情報システムに進もうと思ったきっかけというのはどのようなものがあったんですか?
岡村 Sansanに入った時はいわゆるインフラエンジニアという枠で入ったんですね。社内のエンジニアだっていう風に聞いて入ったのですが、それが世間一般で言う情報システムだっていうのは1年くらい気付かなかったんです。気付いたら情シスだった、という感じでした。
情シスになりたくてなったわけでは無いのですが、とはいえやっていて「向いているな」とすぐに感じましたね。
情報システムっていわゆるヘルプデスクみたいな機能も持つことが多いんですけど、大学の時にパソコンを作って売ったりもしていて、売ったモノの最初のサポートとかもほぼ無償で対応していて。相手の画面も相手の環境もわからない中でトラブルシューティングをするわけなんですけど、そういった経験が活きているのかもしれないですね。
――パソコンを売っていた中で一番困った質問はどんなものがありましたか?
岡村 「電源がつかないんですけど」とか? デスクトップのPCだったんですけど、モニターをそもそも持っていない、みたいな。
――えええ……。
岡村 「どうやって使うんですか?」みたいな感じで質問が噛み合わなかったりとか。「動いてはいるんですか?」って聞いたら「ライトはついて動いているみたいなんですけど」と返されて「何を言っているんだ……?」みたいな。そういうのはかなり困ったパターンのひとつですね。
――そういう質問もあるんですね。逆に、情報システムの仕事で大変だった、というものはありましたか?
岡村 結構大変だったのは、職場にもよると思うんですけど、例えば「コーヒーが出ないんだけど」とかそういう質問があって、そういう時はちょっと困ったな、という感じですね。
――「コーヒーを自動制御してたっけ?」みたいな(笑)。
岡村 そういうのもありますし、あとはハードウェア依存のバグとか、本当にロット単位で壊れていることがあるんですよね。
そういった時って割とどうする事もできなかったりするんです。修理に出すしかないとか、メーカー側がパッチを出さなきゃ治らない問題だったりとか、そういった時の対処は難しいですね。
そういった時に他社に聞いたりとか海外の掲示板を調べたりもするんですけど、「これ自体が悪いロットなんだな」と思い至るまで調べることを繰り返していくと、経験値として溜まっていきます。外に聞くのは、すごい大事だな、と思います。
――今後、キャリアとしてずっと情シスを続けていかれるつもりですか?
岡村 基本的には情シスを続けていきたいな、と思っているんですけど、開発組織のいわゆるPDMみたいなポジションにも興味があって。
情報システムっていろいろな会社のSaaSを導入したりするじゃないですか、弊社ももちろんSaaSの企業なんですけど、SaaSのプロダクトを作るに当たって、どういったプロダクトだと管理者にとって使いやすく、どういったUIやUXだったら浸透しやすいのか。そういった事ってかなり知見がある方だと思っています。
最終的にはCIOみたいなポジションを目指したいですね。IT投資とかセキュリティへの投資ってパッと見、単なるコストに見えるのかな、と思っていて。でも、もっと経営的な視点で、組織の中でどういう風に情報システムを浸透させたら組織の生産性が一番上がるのか。
そういう観点で考え始めると、コストは別軸になると思うんです。そういう話ができるのって、経営サイドに近い所にいないと厳しいなと。そのためには、もちろん現場レベルで経験を積まないといけないですけど。
3浪して医学部に入ったのに、なぜエンジニアへ?
――noteを拝見しました、社会人になられる前に割と紆余曲折があったみたいですね。
岡村 そうですね、割とあった方かもしれないです。
――高校を卒業後3年間浪人して、香川大学の医学部医学科に入学。2度の留年、1度の休学を経て2015年3月で自主退学をした、と。本当にいろいろありましたね。
岡村 そうですね、お恥ずかしながら苦学生みたいな感じでは全然なくて、高校の時は将来の目標とかそんな明確にある人間ではなかったんです。
ただ、どこも行く大学が無い状態で、私学ならあったかもしれないですけど「私学は行かせられない」と言われて。国立でも浪人するなら東大や京大、医学部だったら、みたいなそういった話をされる状態でした。
なんとなく「まだ働きたくない」と思ったのが正直なところで、だったら浪人しようと。それで東大や京大、医学部だったら、その時はサラリーマンより専門職の方が向いているんじゃないかと思って。その中だったら医学部に行くか、という事で浪人しました。
――とはいえ、なかなか医学部に入学するのは大変じゃないですか?
岡村 1年を使う、というのが大変でしたね。
――なるほど、どういった所が大変でしたか?
岡村 例えば、最初は5月で駿台模試で全国で10本の指に入るくらいになった時期もあって。割と短期的には頑張れるんですけど、ずっと続けるというのが中々しんどかったです。モチベーションコントロールが大変でした。
――すごくわかります、1年って長いですよね。
岡村 そうなんです、1年って長いんですよね。全部を学びきるのに、私の感覚だと2~3か月もあれば全科目の全範囲を網羅できるんですけど、それを続けるというのが大変でした。
なので受かった時は最後の2~3カ月だけ勉強して、あとは遊んでしました。だから「3浪して頑張って入った」という感じでもないんですよね。
――なるほど、よく親御さんは……
岡村 そりゃもう、ブチ切れですよ(笑)。1浪と2浪の時は予備校に行かせてもらいましたけど、3浪の時は行かせてもらえませんでした。予備校もほとんど授業出てなかったので。
――実際、授業って「できない人」にも歩調を合わせないといけないから、大変な部分ありますよね。
岡村 そんな感じなので、別にそこまで「医者になる」みたいな目標が高かったわけでもなく。大学に入って初めて自分のPCを手に入れて、カスタマイズしたりして遊ぶようになって、今度は自分で作って売ったりして。
PCを作るに当たって一番高いのってOSだったりするんです。それで「じゃあLinuxならタダで良いじゃん」みたいな感じでLinuxを触りだして、自宅にサーバー立てたりして。
社会人になった時にLinuxの資格(LPIC)を取ったんですけど、その辺の資格の事とかは大学の時にほぼほぼ知っていたかな、という感じです。
だんだん「医者になるって違うな」と思い始めたものの、親にも苦労をかけて入ったのでなかなか踏ん切りもつかず。最終的にはやめようと決意したんですけど、他のことをやるなら自分の興味も強くて得意だったIT系に進もうと思って、エンジニアになった次第です。
ビジョンに共感している仲間が多いほど、推進力は高くなる
――ここからは、岡村さんが働く上で大切にしていることについて、「事業内容」「仲間」「会社愛」「お金」「専門性向上」「働き方自由度」の6つの項目から合計20点になるよう、点数を振り分けていただきます。
・会社愛:5
――おぉ、素晴らしい。会社愛が5というのは初めてかもしれません。
岡村 その言葉通りの意味で5としたわけではなくて、会社愛と言うよりは自分の中では会社のビジョンやミッションへの共感を一番大事にしていて、そういった意味で5にしました。
経営者が思い描く方向と全然違う方向に進むっていうのは、基本的に難しいと思っているんですね。自分は資産家の家系でも、不労所得があるわけでもないので、今後の人生で働いている時間の割合って人生の中で結構な割合を占めていると思うんです。
だとしたら、自分のビジョンと重なる所で働いた方がおのずと「自分の時間」を生きていけるんじゃないかな、という考え方があって。
・専門性向上:4
岡村 エンジニアとして価値を発揮できるとしたら、究極的にはそこしかないと思っていて。それが失われたらエンジニアとして仕事をする意味がないと思っているし、誰でもできるような事だけをやる仕事にはつきたくないなと思っています。
・仲間:4
岡村 会社愛に関連して、自分と同じようにビジョンに共感している仲間が多いほど会社の推進力は高くなると思います。自分の人生をよくするためには、自分と会社のビジョンが一致する所に入り、一緒に目指す仲間が多いほどより良い人生が送れると考えています。
・お金:4
岡村 贅沢できるほどじゃなくても良いのですが、生活に不安がある状態だと良い仕事はできないので。そこを担保するのは、絶対に必要だなと思っているんですね。
・事業内容:2
岡村 残ったポイントを振っただけなんですが、会社のビジョンがしっかりしていたり、仲間がそろっていさえすれば事業内容自体は手段だと思っていて。今現在の事業内容が100パーセントのものじゃなくても、自分が作っていける領域だと思っています。
・働き方自由度:1
岡村 事業内容と同じ理由ですね。情報システムという仕事柄、そこは自分が作っていくべきなので。
――すごくしっかりされた考え方をお持ちだと思いますが、こうした背景にはご結婚されたことが大きいですか?
岡村 結婚した事も大きいと思いますし、大学時代に考える時間が多かったこともあると思います。あと、最初にSESの会社に入った、という事もあるかもしれないですね。
――最後に、キャリアに迷うエンジニアの方々にメッセージを頂けますでしょうか。
岡村 強みを活かす、というのがすごく大事なんじゃないかなと思っています。自分にしかできない事を探し求めて進めて良ければいい道が開けるんじゃないかなと。
――強みが見つからなければ、伸ばすものかもしれないと。
岡村 そうですね、もし見つからなければ自分なりの方法を、日々仕事をする中で考え続ける。もちろん強みが見つからなくても仕事をするわけですが、自分なりの方法を常に考えるというのが大事かなと思います。
――ありがとうございました。
<了>
ライター:澤山大輔
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