日本と台湾のPythonコミュニティの架け橋に ―「PyCon Taiwan 2019」レポート

第2回 Python学びの道は人それぞれ ―2日目キーノート~3日目クロージング

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PyCon Taiwanの2日目と3日目の様子についてレポートします。キーノートスピーカーによる発表,筆者自身の発表,PyNight,Open Spacesなどについて紹介します。

2日目キーノート「Programming Language Tourism: Leave Python and see the world!」 ―Paul Ivanov

Paul Ivanov氏@ivanovはJupyterのSteering Counsilメンバーであり,Bloombergのシニアエンジニアです。

Paul Ivanov氏のキーノート

Paul Ivanov氏のキーノート

「私たちはどこにいますか? いま私たちはPyCon Taiwanにいます。」と問いかけたあとに「⁠⁠どこから来ましたか?』と参加者に問えば,それぞれ異なったスケールで回答があるよ」と言いました。Jupyterの人に聞いたら「地球(笑⁠⁠,アメリカ,カリフォルニア,サンフランシスコ,ベイエリア」のようにさまざまな尺度で答えるだろうと言っていました。

余談ですが,⁠私は台湾ははじめてで,日本やドイツには行ったことはないんだけど…」というくだりで「Have you heard of PyCon JP?(PyCon JPのことを聞いたことがありますか?⁠⁠」と1日目のLTのネタにかぶせて笑いを取っていました。

次に,プログラミングを自分の場所と考えたときにPythonはどこにいるかという話になりました。そこでStack Overflowの質問投稿数を表すグラフを紹介し,この10年間でPythonは上位のタグになったそうです(上にはJavaScriptがいますが⁠⁠。GitHubを見てみると,作成されたリポジトリの数は上位からJavaScript,Java,Pythonという順番だそうです。

Pythonは素晴らしい言語だが,仕事でPythonを使用している場合は,たまにプログラミングの休暇を取ることを参加者に勧めました。休暇というのは,プログラミング言語を場所と考えると,別の場所に行くようなことを指しています。またプログラミング以外のことを行って気分転換をしようという話がありました。

また自身が主催しているイベント「Jupyter Open Studio Day」について触れました。このイベントは2日間開催され,プログラミングについて,普段の仕事ではなく自分自身のために学んで向上することができます。そのイベントにはPyCon MalaysiaのキーノートスピーカーでもあるCarol Willingもいたり,さまざまな年齢やバックグラウンドの人が参加しており,参加者にとって別の場所となっていると述べていました。

私はPython mini Hack-athonというイベント主催者の1人ですが,このイベントが誰かの別の場所になるといいなと思いました。

自分の発表:「Automate the Boring Stuff with Slackbot」

いつものSlackbotを開発する内容で発表をしてきました。スライドで大きく変更した箇所は以下です。

  • 自己紹介のところでPyCon JPとPyCon TWの交流があるという話を追加
  • 今年の自分の各国PyConへの参加を地図で表示
  • 書籍が台湾でも出版されていることを紹介
  • Block Kitを使用したサンプルコードを追加

筆者の発表の様子

筆者の発表の様子

発表時間が30分と短めなため,はしょり気味に説明しました。具体的には細かいコードの説明をあまりしないことで,発表時間を調整しました。

PyCon Taiwanでは質疑応答はsli.doというサービスで質問を受け付けています。文字で表示されるので質問を聞き取れないという問題がない反面,質問者に直接「今の回答でよかったか」といったことが確認できないため,メリットデメリットがあるなと思いました。

以下は質疑応答の内容です。

Q:SlackのAPIでは3秒のリミットがあるが,slackbotではどのようにして防いでいるのか?

A:SlackbotではRTM APIの使用が推奨されているので3秒の制限はないはず。Botの場合は手でコマンドを送ってそれに反応しているので3秒のリミットは関係ないはず(後で調べてみたところ,これはEvents APIに対してレスポンスを返すリミットなので,botの場合は関係がなさそうです⁠⁠。

Q:Slack APIを使用してメッセージを送信したが表示されないときに,どのようにデバッグをしているのか?

A:slackbot_settings.pyERRORS_TOにチャンネル名またはユーザー名を設定すると,エラー時にそこにエラーメッセージが表示されます。

2日目ライトニングトーク

カンファレンス2日目のライトニングトークでもいろいろな発表がありました。いくつか紹介します。

高校生たちによる発表

高校生たちによる発表

高中生做點事

言葉がわからないので意味は全くわかりませんでしたが,元気な高校生4人組の発表でした。あとで調べてみたところソフトウェア関係の部活のようで,小学生にプログラミングを教えることもしているようです。発表の中では自分たちの活動とLINEBotを紹介していました。

個人発起的小小小社群

PyCon JPにも参加していたKK氏による発表です。小さいコミュニティを作って継続しようということを参加者に勧めていました。

高雄發大財

Kaohsiung(高雄).pyの主催者による発表です。高雄は台湾の南にある都市で,将来的にPyCon Taiwanを高雄で開催したいという発表をしていました。また,LTの冒頭に「Do you know Kaohsiung.py?」と1日目のLTのネタをかぶせてきました。

My PyCon diary in 2019

日本から参加したLina KATAYOSE氏@selina787bの発表です。今年US,Thailandにも参加している自身の体験を共有して,みんなも海外PyConに行ってみると楽しいよという話をしていました。今年は5回参加しているけど,筆者とNoah氏がさらにたくさん参加しているよと言及されていました。またこの発表の後にインドからの参加者に「PyCon Indiaにも来てね」と誘われていたようです。

SprintSeoul

韓国のYounggun氏@scari_netによる発表です。ソウルでは2ヵ月ごとにSprintSeoulという開発イベントを継続的に開催しているそうです。内容もPythonのみに限らずさまざまな言語で行っているようです。他の地域でもぜひやってみてねと促していました。

2日目:PyNight

カンファレンス2日目の夜はオフィシャルのパーティーであるPyNightでした。ピザなどの軽食とドリンクが振る舞われたカジュアルな会でした。

PyCon Taiwanのいつものパターンだとアルコールはないだろうなぁと思っていましたが,なんとサングリアやカクテルなど数種類のアルコールが提供されていました(しかしビールはありません)!!

奥の方でなにやら演奏がはじまりましたが,チェロの五重奏です。写真の一番左に写っているのはPyCon Taiwan 2019のChairであるTaihsiang Ho氏です。彼はチェロやピアノが演奏できるそうです。多才ですね。

チェロの演奏

チェロの演奏

PyNightのあとはいつものようにビールが飲みたくなったので,友人数名とRedpoint Brewing Co.に行きました。この店には「台.P.A.」という名前のIPAスタイルのビールがあります。なかなかいいネーミングですね。写真の真ん中に写っているのが韓国のYounggun氏で,私がPyCon MalaysiaにPSFのBooth Kitを持って行く原因となった人物です。

naoy,Younggun,selinaとビール

naoy,Younggun,selinaとビール

著者プロフィール

鈴木たかのり(すずきたかのり)

一般社団法人PyCon JP,副代表理事,株式会社ビープラウド所属。

部内のサイトを作るためにZope/Ploneと出会い,その後必要にかられてPythonを使い始める。PyCon JPでは2011年1月のPyCon mini JPからスタッフとして活動し,2014年-2016年のPyCon JP座長。他の主な活動は,Pythonボルダリング部(#kabepy)部長,Python mini Hack-a-thon(#pyhack)主催など。

共著書に『Pythonによるあたらしいデータ分析の教科書(2018 翔泳社刊)』『Pythonプロフェッショナルプログラミング 第3版(2018 秀和システム刊)』『Pythonエンジニア ファーストブック(2017 技術評論社刊)』『いちばんやさしいPythonの教本(2017 インプレス刊)』などがある。

最近の楽しみはPython Boot Campの講師で訪れた土地で,現地のクラフトビールを飲むこと。2019年は世界各国のPyConでの発表に挑戦している。趣味は吹奏楽とボルダリングとレゴとペンシルパズル。

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