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 参院埼玉選挙区の補欠選挙投票率が20・81%と、戦後の衆参の補選で4番目に低い結果に終わった。有権者の5人に1人しか投票所に足を運ばず、8割近くが棄権したことの意味を重く受け止めねばならない。

 選挙戦は、立憲民主党や国民民主党が自主支援する無所属で前埼玉県知事上田清司氏と、参院比例区から転じた「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏の2人の争いとなった。自民、公明両党は候補者を擁立せず自主投票を選んだ。

 夏の参院選の埼玉選挙区の投票率は46・48%。一般的に補選の投票率は低くなる傾向があるうえに、台風19号の影響で期日前投票所の多くが一時閉鎖されたことも響いたであろう。

 しかし、主要政党が軒並み独自候補を立てず、知事を4期務め、抜群の知名度を誇る上田氏に事実上相乗りするような構図となったことが、有権者の選択肢を狭めたことは間違いない。

 7月の参院選後、内閣改造を経て初の国政選挙だった。消費増税や相次ぐ災害への対応など、論戦のテーマはいくらでもあったが、政権与党の候補者見送りで争点はかすみ、両候補の主張もかみ合わなかった。

 自民党は県議会で上田氏と対立してきたが、憲法改正に上田氏が前向きなことから、対立候補を立てなかったという。ただ、勝てる候補が見つからず、仮に勝っても、3年後の改選時に自民、公明の現職と議席を争う事態になることを避けたいという思惑もあったようだ。これでは党利党略優先の責任放棄と言われても仕方あるまい。

 立花氏は上田氏への批判票の唯一の受け皿となったが、過激な言動に加え、参院議員の職を捨てて参院補選にでるというわかりにくさ、選挙戦の最中に、落選した場合は来月の地方選挙に立候補すると表明するなどのふるまいが、有権者の支持を広げられなかったのは当然だ。

 今年は春に統一地方選、夏に参院選があったが、いずれも低投票率が特徴だった。統一選の道府県議選の平均は戦後最低。参院選も48・80%と5割を切り、過去2番目の低さだった。衆院選も、安倍首相が政権復帰を決めた12年以降、3回続けて6割を切っている。

 原因は選挙によってさまざまだろうが、民意が正当に反映されているのか疑われかねない低投票率は、代議制民主主義の土台を掘り崩す深刻な事態だ。

 投票をしやすくする制度の改善も検討すべきだろうが、まずは、政党が有権者に選択肢を示す責任を果たさねばならない。私たち有権者の側も、投票を通じた政治参加の重みを改めてかみしめたい。

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