2019年秋冬商戦を控え、携帯電話各社がスマートフォン新機種を次々投入している。その内容を見ると各社ともに3万円前後のミドルクラス(中級機)への注力が進み、明らかにこれまでとは傾向が変わってきている様子がうかがえる。その背景にあるのは2019年10月に実施された電気通信事業法の改正だ。今後国内ではミドルクラスのスマートフォンが販売の主流になっていくのだろうか。
NTTドコモが2万円を切る端末を積極アピール
2019年も10月に入り、秋冬の商戦期に向けて携帯電話事業者や端末メーカー各社が次々とスマートフォン新製品を発表している。その内容を見ると、例年とは大きく異なる様子を見て取ることができる。
それを象徴しているのが、2019年10月11日にNTTドコモが実施した秋冬商戦向けの新サービス・新商品発表会である。同社はこの発表会で、スマートフォン5機種を含む8機種を新機種として発表したのだが、その内容は例年と明確な違いを示していた。
なぜなら、発表会に登壇した同社代表取締役社長の吉澤和弘氏が最初にアピールした端末は、ハイスペックモデルではなく価格を抑えたスタンダードモデルだったからである。中でも吉澤氏がアピールしていたのが韓国サムスン電子製の「Galaxy A20」で、防水性能やFeliCaなどを備えながらも、同社のオンラインショップでは税別1万9440円で販売されるなど価格が安いことを前面に打ち出していた。
NTTドコモは5G(第5世代移動通信システム)のサービス開始を2020年春に控えており、その際投入する5G対応スマートフォンはハイエンドモデルが大半を占めると予想される。そうした事情も今回の発表内容に影響したのかもしれない。だが新製品発表会で端末価格の安さをメインに打ち出すというのは、過去を振り返っても2016年に「MONO」を発表したときや、2017年に開始した「docomo with」の対応端末を発表したときくらいであり、極めて珍しいケースであることは確かだ。
同様に、発表会で端末価格の安さを打ち出したのが、ソフトバンクのワイモバイルブランドである。ワイモバイルは2019年10月7日に新商品の記者説明会を実施したが、発表したスマートフォン4機種の中でも特徴的な存在となっていたのが、中国ZTE(中興通訊)製の「Libero S10」である。
Libero S10の性能はミドルクラス相応だが、防水性能を備えるなど安心して利用できる点に注力したモデルであり、価格は税込みで2万8800円。電気通信事業法改正後の端末値引き額の上限である2万円を適用した場合、1万円を切る価格で提供できることがアピールポイントとなっているようだ。低価格端末の販売で消費者に安心感を与え、契約拡大につなげていきたいワイモバイル側の狙いを見て取ることができる。
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