by mnm.all

お酒を飲んでいないにもかかわらず飲酒運転で逮捕され、気分のむらや攻撃性といった症状を呈し、酔って転倒し頭にケガを負う……といった状態が7年以上続いていた男性が、体内でビールを醸造してしまう「自動醸造所症候群」(ABS)だったことが判明しました。ABSと診断された男性が通常の状態に戻るためには、2年間にわたる治療を要したとのことこです。

Man kept getting drunk without drinking. Docs found brewer’s yeast in his guts | Ars Technica

https://arstechnica.com/science/2019/10/man-charged-with-dwi-after-alcohol-fermenting-yeast-in-his-gut-got-him-wasted/

アメリカ・ノースカロライナ州に住む46歳の男性は、数年前から食後に頭がぼんやりし、気分が落ち込むという症状を呈していました。原因がはっきりしないまま数年を過ごし、2014年に男性はお酒を全く飲んでいないにもかかわらず飲酒運転で逮捕されました。この時の男性の血中アルコール濃度は0.2%で、法定の基準値を大きく上回る値だったため、警察・看護師は「飲酒していない」という男性の主張を信じなかったとのこと。その後、2017年に男性は転倒し、頭部に外傷を負っています。自らの体調を不信に思った男性は何件もの精神科医・内科医・神経科医・胃腸科医を回りましたが、原因は不明のままでした。



by thom masat

しかし、男性のおじとおばが同様の症状について耳に挟んだことから、男性はオハイオ州の研究者に連絡。2015年に男性は「自動醸造所症候群」(ABS)と診断されるに至り、症状が出てから7年以上が経過した2018年に、ようやく治療に成功しました。

自動醸造所症候群は体内で発酵が起こり、ビールを醸造してしまうという症状です。非常にまれな症状と言われていますが、過去にも同様のケースが報告されており、抗生物質を摂取し腸の中が一掃された状態で出芽酵母(イースト)に感染すると、このような症状が出ると考えられています。

これが本当のビール腹、身体の中でビールを醸造し酔い続けていた男性 - GIGAZINE



今回の男性の場合は2011年に親指を負傷し、3週間にわたって抗生物質をした後に症状が出るようになったとのことです。

検査を行ったオハイオ州の研究者は、男性が炭水化物を含む食事をした後の便にビール酵母が含まれていることを発見しました。研究者は薬を投与しましたが十分ではなかったため、すぐに男性の症状は再発。食後に男性の血中アルコール濃度は0.4%にまで上昇するようになったため、男性は複数の医師の元を渡り歩きました。

そして2017年、ニューヨーク州スタテン島にあるリッチモンド大学メディカルセンターの研究者グループは、男性に強力な抗真菌薬を投与。この時も一度目はピザとソーダによって再発してしまったため、より強力な静脈注射を行うことで、ついに菌の駆逐に成功させました。2018年2月時点で男性が通常の食事を行っても、血中アルコールが検出されなかったそうです。そして、2019年時点でも再発は報告されていません。



by Yakov_Oskanov

ABSは非常にまれな症状といわれていますが、研究者は「診断されていない」状態がほかにも存在する可能性を示唆しています。「血中アルコール値が高いかアルコール検査で陽性と出るにもかかわらずアルコール摂取を否定している、という人がいたらABSについて調べるべきです」と研究者は呼びかけました。