フルタイムの銅鑼(どら)が鳴ったあとも、南アフリカは攻め続けた。26―3とリードして、陣地は日本ゴール前22メートル線付近。勝ちチームはボールを外に蹴り出して終わることが多いが、もう1トライを取って終わりたい―そんな意地が伝わってきた。
だが日本はそれを許さなかった。80分戦い抜いても足は止まらず、タックルで止め続けた。南アの攻撃は4フェイズ、40秒続いても前進できず、SOポラードはトライをあきらめボールを蹴り出して試合を終わらせた。
「最後の5分間もいいディフェンスができた。ガタッと崩れなかったのは収穫だと思う」と言ったのはWTB松島幸太朗だ。スリリングなアタック、トライにスポットライトが当たりがちだが、今大会の日本躍進の決め手はディフェンス面だ。4試合で失点は62。前回の100から4割も減少した。
進化に大きく貢献したのは2016年から参戦したスーパーラグビーだ。ニュージーランド、オーストラリア、南アなどのトップチームと毎週のように戦い、選手にはトップレベルの激しさ、スピードが日常となったのだ。
W杯での躍進を経て、日本代表へは様々な方向からラブコールが届いている。海外では「南半球4カ国対抗に加えよう」「北半球の6カ国対抗に迎えるべき」などの声が飛び交う。来年限りで除外されることになったサンウルブズをスーパーラグビーに残留させようという動きもある。日本協会の森会長も「サンウルブズが来年優勝するくらいの思いでやらなきゃ」と話す。
一方で、選手の安全・福祉(ウェルフェア)も考える必要がある。トップ選手はこれまでも日本代表とサンウルブズ、トップリーグと過密日程を強いられてきた。逆に大学生など若手は試合数の不足が深刻だ。日本協会では2年後に国内プロリーグを発足させる方向で準備を進めているが、国際交流と国内の充実をどう両立させるかは大きな課題で、普及育成、集客を見据えた情報発信力も改善が急務だ。日本ラグビーが足を踏み入れた「8強」の舞台は、これまで以上にタフなものになることだろう。=終わり=