事務所は沈黙するも……283プロの“黒い”噂にメス
2019年10月28日15:00
記者:阿久井徳次郎
成長というヒカリには必ず影が伴う。
飛ぶ鳥を落とす勢いで躍進を続ける某アイドル事務所に激震だ。
イルミネーションスターズなどフレッシュなユニットを立て続けに送り出し、アイドル界に新風を巻き起こしている283プロダクションに、「ブラック企業」疑惑が持ち上がっている。詳細を追うべく記者が現場へと向かうと、そこには疑惑を裏付ける光景が広がっていた──。
緑も多い爽やかな外観だが、中はいかに──
某日、オフィスへと突撃すると、インターホン越しに聞こえてきたのは疲労の色をうかがわせる事務員の声。極度の眠気にさいなまれる様子で扉を開けてくれたが、その額にはアイマスクが。長らく自宅に帰れないまま、激務に追われているのかもしれない。
疑惑について尋ねると、「弊社は全社一丸となって、施行の始まった『働き方超革命』に取り組んでいるんです」とにこやかだ。「今も、『しっかりと休憩を取りましょう』という社内キャンペーンを実施していたんですよ」とあくびを噛み殺していたが、これは昼日中に仮眠をとらなければ回らない量の業務が存在することを裏付けるものだろう。くだんの『働き方超革命』も、このように「見えない残業」を生んでしまっては皮肉と笑うこともできない。
同様に、所属アイドルたちの労働環境についても不安視する声がある。
「ああ、あそこの女の子たちでしょ? 量販店で何着もパジャマ買ってたのよ。きっと夜も帰れないのねぇ」と声をひそめるのは、事務所近くに住む主婦だ。アイドルたちのことはたまに見かけるというが、以前買い物の際に目にした様子が気になっていたという。「着飾って遊びたい盛りに、あんなおかしなパジャマばっかりねぇ……不憫よ」と聞けば、先の事務員の様子と併せ、労働環境をめぐる後ろ暗い組織体質があると勘繰らざるを得ない。これも『社内キャンペーン』の一環だと開き直るか。
この手の情報には枚挙にいとまがない。「噂はありますよ。海の家で、メンバー同士が膝枕で休息をとらされていたとか。プールサイドで食べ物を取り合っていたというような目撃談も聞きますね。あるいは副業で畑仕事に従事しているというような噂や、ユニットのひとりだけが廃校みたいな場所に宿泊させられていたなどという話も、財務的なひっ迫を想像させます。真偽はわからないですけどね」(芸能関係者)。アイドルという輝きの代償としてはいささか黒すぎる印象だ。
尽きぬ目撃談。秘密のベールはいまだ厚いが……
ちなみに後日、事務所内の環境についても訊ねたが、期日までに回答は得られなかった。
公式サイトには「あたたかい『わが家』を思わせる内装」「仮眠スペースあり」「エナジードリンクやコーヒー、紅茶などを無料で提供」「レジャー休暇あり」などとホワイトな表現が並んでいるが、実情はうかがい知れない。
同ビルに入るテナントショップにも聞き込みを行ってみると、書店主からは「スーツのスタッフさんが、自己啓発本なんかの棚によくいらっしゃってますよ」と気になる情報が。同棚には転職本もずらりと並ぶが、転職理由の上位ランクといえば、「会社への不満」「給与への不満」と相場が決まっている。クリーニング店では「シャツのクリーニングで若い方がお見えになるの。ちょっと金券おまけしてあげるのよ、うふふ」と従業員への同情ともとれる証言。さらにペットショップでは「ピシッとした立派な紳士の方が……ああ、社長さんなの? よくそこの窓からねー、チワワと目と目で会話されてますよ」といった目撃情報も飛び出し、蓄積されているであろう疲労の色を生活の細部に見ることができる。
「経済的な正は道徳的にもまた正である」とはヘンリー・フォードの言だが、かの事務所がその逆を行くことのないよう動向に注目したい。