| ファミコンというハードの能力の限界を見せてくれた伝説のゲーム、 それが 『メタルスレイダーグローリー』(以下、MSG) です。 1991年に発売されたこのゲームですが、 開発期間はなんと4年! そして、ファミコンのカセットでは最大の8Mビット、1025KBのROMを採用。 おまけにMMC5という特殊チップを搭載していて ファミコンのものとは思えないくらい動的で美麗なグラフィックを可能にしてるんです。 ドラクエⅣやFFⅢが512KBのROMだから、その倍の容量になる。 しかし、あまりの高水準・美麗グラフィックを求めて4年の開発期間を費やした末に待っていたのは 長期開発による大幅な赤字(噂では出荷本数が推定1万本だったとか)と 製作メーカーであるHAL研究所の倒産→任天堂へ吸収という末路だった。 現在ではファミコン以外の媒体でもプレイ可能なため、 カセット自体は昔ほどプレミア物ではなくなったけど 一時期は2万円くらいで売買されていたほどのレアゲームだった。 現在は平均相場11000円くらいだそうだ。 このMSGが発売された91年8月といえば、 既にスーパーファミコンが90年の11月に発売され、軌道に乗ってきた頃だ。 多くのメーカーも次期開発ソフトをスーパーファミコンに移行しつつあり、 ファミコン衰退期初年度といった時代だった。 要するに、開発が4年もかかってしまったために もはやファミコンというハードが時代遅れのものとなってしまっていた。 もし、開発期間が3年で、完成があと1年早かったら これほどプレミアが付くほど出荷本数の少ないレアゲームに終わらなかっただろう。 むしろ、スーパーファミコンが無い時代にこのグラフィックを見たら それこそPCエンジンに匹敵する美麗グラフィックのゲームとして、相当の評価を得ていたはず。 もう何がどう美麗なのかというと、 まず普通に見て画面に一度に表示する色の数が多い。 それまでのファミコンゲームのキャラはたしか4色くらいで表現していたはず。 けど、このMSGではどう見ても5~7色くらい使っているように見える。 もしそんなに無かったとしても、そう見える時点でその技術は素晴らしい。 それに、会話シーンではキャラがひっきりなしに目が動いたり口がパクパクしたり、 本当によく動く。 ファミコンのアドベンチャーゲームといえば大体が静止画像だ。 俺の好きな「めぞん一刻」もファミコン版、PCエンジン版ともにほとんど静止画像だった。 そして、ストーリーはファミコンでは有り得ないくらいの選択肢の数のマルチストーリー。 箱裏に書かれている「壮大な宇宙叙事詩」の名に恥じない膨大な量だ。 そして、何よりバックアップシステムのカセットじゃないってこと。 パスワード式なんだけど、そのパスワードが一風変わっていて ドラクエⅡのような意味不明でひたすら長い文字の羅列ではなく 例えば「めかにっくにいってみよう」とか意味を持った短い文章だったりするんですね。 携帯電話にカメラが標準で付いたこのご時勢なら長いパスワードをメモる必要も無いんだけど 何より、今、レトロゲームを買う時にネックになるのがバックアップバッテリーの寿命。 中古で売られてるほとんどのバッテリーが切れてる。 そんな中、MSGは幸いにもバックアップシステムを採用していない。 つまり、何年経ってもその価値は変わらないということだ。 しかし、これだけの時間と金と労力と容量を駆使したゲームが ファミコン主流の時代のうちに発売されなかったのが本当に悔しいですね。 せめて対抗ハードがPCエンジンだけの時代に発売されていれば評価も変わったのに……。 でも、ファミコンの能力の限界に挑戦したというその一点だけを考慮してみても 俺は、MSGがファミコン史上に残る珠玉の一本だと思う。 |