温暖化で台風が凶暴化、列島各地で毎年のように、大水害が起きている。治山と治水。豊かな山林は災害から国土を守る“鎧(よろい)”ではなかったか。それをはぎ取るような政策は改めるべきではないか。
先月の台風15号。「記録的暴風」による大量の倒木が、送配電設備に「想定外」の損害を与えた上に復旧作業の妨げになり、千葉県の大規模停電を長期化させた。
林業が衰退し、手入れが足りない山が増え、幹が腐って空洞ができる「溝腐(みぞくされ)病」などが広がって、倒れやすくなっていた。
本来、深く広く根を張って山崩れを防いでくれるはずの山林が放置され、その機能を発揮できずに被害を拡大させている。
荒れ放題の山林は、雨水をためておく保水能力も低下する。
そして台風19号。大水害をもたらした「複合要因」の中に、森林の荒廃も含まれているはずだ。
古くからいわれてきたように、治山は治水だからである。
ところが現政権の森林林業政策は「治山治水」の考え方に反していると言うしかない。
戦後植林されたスギやヒノキが伐採の適期を迎え、国内需要の回復傾向や輸出の伸びを背景に、安倍政権は成長戦略の一環として、民有林の経営管理を「意欲ある林業経営者」に集約、伐採と生産を促進する方針を打ち出した。
これを受け、大規模伐採に向かう森林所有者が増えている。
この六月に成立した改正国有林野管理経営法が、その傾向に拍車をかけた。
国有林の伐採と販売は、入札により、民間の事業者に委託されている。改正法では、伐採可能な面積と期間を大幅に拡大し、大企業の参入を促すようにした。
問題なのは、大規模伐採を促しておきながら、相変わらず伐採者に切った後の再造林、森林再生の義務を課さないことだ。
木材の活用はもちろん望ましい。だが生産性重視のあまり、金になる山は切り尽くせ、そうでないものは、やせても枯れても放っておけ、切り尽くした後は丸裸のまま放置-。そんな持続不可能な林業にもなりかねない。
温暖化の進行により、大型台風の襲来は恒例化するという。保安林だけでは国土を守れない。森林政策は、今や文字どおりの防災政策なのである。
温暖化に適応し、国土と命を守る防災という観点を重視して、森林・林業政策を考え直すべきではないか。
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