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名勝八景 ─憧れの山水

開催期間 2019年10月5日(土)~11月10日(日)
月曜休館(ただし、10月14日、11月4日は開館)

展示概要

憧れの名勝、夢のようなその光景を、ひと目この眼で見てみたい ─そんな願いを古来かなえてきたのが山水画でした。さまざまな景勝地の美しき情景を山水画の中で想像し、そこに自らが遊ぶ様子を妄想する鑑賞の仕方を、中国では「臥遊(がゆう)」と呼びました。文字通り、寝ながらにして山水に遊ぶ、という意味です。つまり、山水画を愛でること自体が、部屋にいながらにして行える旅そのものなのです。
この「臥遊」を象徴する画題に、「瀟湘八景(しょうしょうはっけい)」があります。かつて北宋時代(960 - 1127)後期の文人画家・宋迪(そうてき)は、湖南省の名勝・瀟湘地方に見た折々の風光を、その懐旧の念とともに情趣豊かな八つの情景に描き出しました。これを契機として、後に「瀟湘八景」の画題そのものが好ましき山水画の手本となり、画家たちには発想の源として定着しています。
地上の楽園とも称された杭州・西湖(せいこ)を描いた山水画も、同様に親しまれてきたものです。豊かな水をたたえる湖を中心に、その周辺に無数の名所・名刹を擁する内海の景観は、理想郷の具現として描き継がれてきました。
こうした中国の名勝は、日本においても大いなる憧れをもって受け入れられました。そして単に本家である中国の模倣というにとどまらず、日本各地の名所をこの八景にあやかって表現したり、西湖に見立てた景観を創り出したりするなど、日本独自の変容を経ることで、馴染みの深い名勝の数々は、現在の人々の意識へと定着していったのです。
本展では、中国・日本の名勝を描いた優品、約40件を展示します。人々が心に抱き憧れた山水の世界を、どうぞご堪能ください。

名勝八景 ─憧れの山水

本展のみどころ

01中国・日本の名勝を一堂に!


「瀟湘八景」や「西湖図」といった中国の名勝にちなんだ画題は、いつ、どんな経緯で創り上げられ、それがどのように日本に定着していったのでしょうか? 本展では、重要文化財4件を含む中国・日本の名勝を描いた作品およそ40件をとおして、こうした画題の作品の発展と継承の様子をわかりやすく紹介します。

02瀟湘八景がわかれば山水画がわかる!

室町時代には、将軍が蒐集した瀟湘八景の名品が、後の山水画の典範として、絶大な影響を持つことになりました。本展では室町将軍の愛蔵品として著名な玉澗「山市晴嵐図」や、室町時代に描かれた八景図の名品である香雪美術館の「瀟湘八景図屏風」、そしてその影響を受けて描かれた雪村、狩野探幽・安信、久隅守景などの作品もご覧いただきます。

03西湖図の細部に込められた違いと個性を楽しもう!

地上の楽園の呼び名も高い中国南方の都市・杭州に接する西湖は、その明媚な風光より、古くから多くの文人たちに愛され、日本人にとっても憧れの地でした。本展では狩野元信、鴎斎、狩野山楽といった名手の描いた西湖図が勢ぞろい。一見同じような図様の西湖図の、細部に込められた違いと個性をお楽しみください。

04瀟湘や西湖だけじゃない! 名勝・名所がズラリ

中国には他にもさまざまな名勝があります。会稽山や赤壁などは、その代表格です。こうした文人たち憧れの地を描いた作品も、本展では出品します。また日本でも、古来より歌枕の地を絵画にあらわしたり、日本の景勝地を八景や西湖になぞらえるということもさかんに行われました。時代の変遷とともに多様に変化する名勝・名所の美を、ぜひお楽しみください。

展覧会の構成

第1章
瀟湘八景 ―「臥遊」の発展と継承
第2章
西湖 ―描かれた「地上の楽園」
第3章
閑雅なる名勝 ―文人たちのいるところ
第4章
名所八景 ―日本の名所(などころ)

各章の解説

第1章 瀟湘八景 ─「臥遊」の発展と継承

北宋時代後期、文人画家の宋迪は、かつて赴任した中国南方の名勝・瀟湘を懐かしみ、その風光を八つの情景に名付けて描き出しました。「瀟湘八景」と呼ばれるこの画題は、鎌倉時代には日本にもたらされ、以来山水画の代表格として人々に親しまれたのです。とりわけ室町時代には、玉澗(ぎょくかん)、牧谿(もっけい)、夏珪(かけい)といった中国絵画の名手の作品が足利将軍に所蔵され、この図様の典範が築き上げられました。本展の始まりでは、玉澗八景図の名品「山市晴嵐(さんしせいらん)図」を基点に、室町時代から江戸時代初期にかけての瀟湘八景の継承と発展の様相を見ていきます。

中務集山市晴嵐図
玉澗 中国 南宋時代末期~元時代初期 重要文化財 出光美術館

第2章 西湖 ─描かれた「地上の楽園」

「上有天堂 下有蘇杭(天には楽園があり、地には蘇州・杭州がある)」という佳句で知られる杭州は、中国南方の景勝地として古くから栄え、また中国北部を追われた漢民族が行宮(あんぐう/臨時の宮廷)を置いた南宋王朝の時代は、豊かな都市文化を体現する地としても知られます。この地の中でも、市街地の西に広がる西湖は、多数の仏教寺院や文人所縁の地を擁することから、杭州を象徴する名勝として親しまれ、日本でも憧れの地として絵に描かれてゆきました。ここでは日本で描かれた西湖図を通して、人々が憧れた「地上の楽園」のすがたを辿ります。

中務集西湖図屏風(右隻)
狩野元信 室町時代 出光美術館

第3章 閑雅なる名勝 ―文人たちのいるところ

単なる景色の良い場所が「名勝」へと変貌するには、欠くことのできない立役者がいます。それが「文人」という人々です。瀟湘八景や西湖がそうであったように、「文の人」である彼らは、心寄せる地の風光を華麗な言葉でもって語り、絵に描きました。彼らが遺した詩文や絵画の舞台は、彼らに憧れを抱く後代の文人によって書き継がれ描き継がれていくなかで、ある特別な場所へと昇華していくのです。ここでは江戸の画人たちが描いた名勝の中から、蘭亭や赤壁など、文芸と関わりの深い画題を中心に見ていき、彼らが憧れた文人たちのすがたに迫ります。

雙峯挿雲図雙峯挿雲図
浦上玉堂 江戸時代 重要文化財
出光美術館

第4章 名所八景 ―日本の名所(などころ)

「名所」は古くは「などころ」と呼ばれ、和歌に詠まれる歌枕の地を示すものでした。桜の吉野、紅葉の龍田などは、その代表的なものです。また、中国より瀟湘八景が紹介されるとほどなくして、見たことのない異国の地ではなく、自分たちになじみある日本の名所を八景になぞらえることも行われるようになります。琵琶湖に接する近江八景は、こうした日本の八景の中でもとくに知られています。本展の最後となる本章では、日本の各地で見いだされた名所の数々をご覧いただきます。

三津浜図三津浜図
田能村竹田 天保5年(1834) 出光美術館
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