政府の「デジタル・ガバメント閣僚会議」が公表したマイナンバーカードの普及促進策が、カードの交付実務を担う自治体の窓口に混乱をもたらしそうだ。カードの普及率は交付から3年半たった2019年7月時点で13.5%にとどまる。ここから3年8カ月後の2023年3月末に「ほとんどの住民がカードを保有」するようにするとの方針を打ち出したからだ。
マイナンバーカードは自治体が窓口となって希望者に無償で交付している。ある自治体関係者がこれまでの実績を基に窓口で交付する枚数を試算したところ、「全国のほとんどの自治体は毎月の交付枚数を今の10倍以上に引き上げなければ政府方針を達成できない」という。
菅義偉内閣官房長官が議長を務めるデジタル・ガバメント閣僚会議は2019年9月にマイナンバーカードの想定交付枚数を公表している。グラフにすると、政府が公表した普及ペースは急な角度で右肩上がりに伸びていると分かる。
マイナンバーカード事業を主管する総務省は自治体関係者を集めた会合で、全国の自治体に対して、交付枚数を増やすための体制を整備する「円滑化計画」の策定を求めている。自治体職員が土日に窓口を開いたり企業などに出向いて申請を受け付けたりする体制の整備に、総務省は補助金を交付する計画だ。
しかし自治体関係者は不安を隠さない。カードを交付する際にはセキュリティーを確保した窓口で正規職員が対応する体制が不可欠だ。交付には厳格な本人確認や、カード内蔵ICチップに搭載した「公的個人認証サービス(JPKI)」のパスワードなどを設定する作業が必須だからだ。だが、多くの自治体は人手不足に悩んでおり、その体制を作るのは難しい。
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