前回、発達障害の特性を捉える上では『情報の入力、入力された情報の理解・判断、遂行』の過程を捉えることが大切だということをご説明しました。
今回は私がこの過程を考える際によく使っている例えをご紹介したいと思います。
それは、『カメラ』です。
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人は3つのカメラを使って生活していると考える
カメラに例えるということは、私が働きだした頃に国立秩父学園(現在は国立障害者リハビリテーションセンターの一組織のような位置付けになっているようです)という発達障害療育の総本山のような施設の研修を受けた際にお伺いし、その後自分なりに解釈を重ねて下記のような捉え方として利用している考え方です。
人は、下の図のような3つのカメラを使って生活していると考えます。
①1カメは、自分目線で、自分から見た相手や周囲を映しているカメラです。
②2カメは、相手目線で、相手からどのように見えているかを映しているカメラです。
③3カメは、自分と相手を含んだ場を、やや引きの位置から映しているカメラです。
人は、この3つのカメラを使っているから、その時の状況を正確に把握することができます。
カメラの機能はどうか?ONになっているか?
では、これらのカメラの機能が弱かったり、どこかのカメラがOFFになっていたらどうなるでしょうか?
2カメの機能が弱いと、相手の立場に立って考えることは難しくなります。
3カメの機能が弱いと、自分と相手を含んだ状況を把握することが難しくなります。
つまり、2カメ・3カメの機能が弱かったり、OFFになっていたりすると、1カメのみ=自分目線のみの考え方になってしまうため、「自分本位」「わがまま」「人のせい」「自分のこと棚上げ」と捉えられてしまう言動が多くなってしまいます。
ただ、このカメラの機能は、強ければ良いというものでもありません。
1カメの機能が強いと、やはり「自分本位」「わがまま」と捉えられてしまうでしょう。
反対に2カメ・3カメが強いと、相手にどう思われるかや世間体に敏感過ぎて、「気にし過ぎ」「心配性」という状況になってしまいます。
このように、カメラの機能は強過ぎても弱過ぎても社会生活を送る上ではやりにくさに繋がってしまいます。
「3つのカメラが、万遍なくほどほどに機能している」というのが理想の状態であると思います。
確認すべきその他のスペック
それぞれのカメラの視野はどうか?
情報を取り込むことができる範囲についても考えなければなりません。
カメラが機能していても、カメラの視野が狭いと抜け落ちる情報が多くなり、勘違いをしやすかったりしてしまいます。
カメラにフォーカス機能は備わっているか?
最近のカメラは、人の笑顔を認証して自動でピントを合わせてくれたりしますよね。
レンズに映っている情報を同じように捉えるのではなく、その情報の中の大事な部分にフォーカスできるかということも大切になってきます。
フォーカスできないと、入ってきた情報について優先順位をつけることができず、「今それをやっている場合?」となりやすいです。
カメラの苦手な部分を補ってあげよう
そして、察しの良い方は、いや良くなくても、もうお分かりだと思いますが、発達障害を中心とした配慮が必要なお子さんたちは、「2カメ・3カメの機能が弱い」「2カメ・3カメをうっかりONにし忘れる」、「カメラの視野は狭い」、「フォーカス機能は備わっていない」ということが多いです。
そのようなお子さんに対しては、カメラの苦手な部分を補ってあげるような働きかけをしてあげると、お子さんにとって生活しやすい環境に近づくのではないかと思います。
2カメ・3カメの機能が弱いお子さんに対しては、「あなたがそれをされたらどう思う?」と2カメの視点からの見え方を尋ねてみたり。
視野が狭かったりフォーカス機能が備わっていないお子さんに対しては、「〇〇についてはどう思う?」と見えていない部分を意識させてあげたり。
このような対応は、お子さんと上手に接することができている親御さんはすでにできていることだと思います。
ただ、カメラの例えを使うことで、それがより簡単にイメージしやすくなるのではないかと思っています。
私の所に相談に来られて、上記のカメラの説明をさせていただくと、その後の相談の際に「うちの子はほんとに2カメが弱くて・・・。」とカメラの例えを使ってエピソードを説明してくださるようになる親御さんがかなりいらっしゃいます。
そのような親御さんは、相談に来られる前に比べて、お子さんに対する理解も対応もより良くなっています。
2カメ・3カメを補う働きかけを意識してくださっています。
分かりやすい枠組みの中に入れてあげるということは、こういうメリットもあるのかなと思います。
当然、『発達障害』という言葉についてで説明させていただいたように、括りに入れるだけではなく、お子さんそれぞれのカメラの苦手さの特徴を正確に捉えなければいけません。
しかし、「ダメでしょ!」「違う!」「何度言ったら分かるの!」といった言葉を使った関わりが、2カメ・3カメを補うような働きかけに変わったら、お子さんの様子、親子の関係、家庭の雰囲気はかなり変わるのではないでしょうか☆