Ubisoftは10月24日、2019-2020会計年度の財務目標を更新(PDFリンク)。同会計年度中のリリース予定となっていた『ウォッチドッグス レギオン』『Rainbow Six Quarantine(レインボーシックス クアランティン)』『Gods & Monsters』の開発期間を延ばすため、いずれも2020-2021会計年度(2020年4月~2021年3月)まで発売を延期。つまり、今会計年度内のビッグタイトルは11月発売の『Just Dance 2020』のみとなる。
『ウォッチドッグス レギオン』は、舞台となる近未来ロンドンのほぼ全ての住民を仲間として操作できるという野心的なコンセプトを売りにしたシリーズ新作。『レインボーシックス クアランティン』は『レインボーシックス シージ』のオペレーターが登場する3人Co-opシューター。寄生虫の感染がもたらす脅威に立ち向かう。『Gods & Monsters』は『アサシン クリード オデッセイ』開発者がギリシャ神話の世界を描くオープンワールド・アクションアドベンチャーゲームである。
今会計年度の売上高予測は33%減
当初の計画では、『ウォッチドッグス レギオン』は2020年3月、『レインボーシックス クアランティン』は2020年初旬(会計年度内)、『Gods & Monsters』は2020年2月発売予定となっていた。これら3作品の発売延期と、『ディビジョン2』『ゴーストリコン ブレイクポイント』の不調により収支予測が下方修正され、非IFRSベースでの年間売上高は約21億8500万ユーロから約14億5000万ユーロに、営業利益は4億8000万ユーロから2000万~5000万ユーロにまで予測値が下げられた。
『ディビジョン2』の収益予測は軽度の下方修正、『ゴーストリコン ブレイクポイント』の収益予測は大幅に下げたと伝えていることから、後者の売れ行きは芳しくないことがうかがえる。10月に発売された『ゴーストリコン ブレイクポイント』はメディアとユーザーの双方から酷評されており、本稿執筆時点でMetacriticのPC版メタスコアは58点、ユーザースコアは2.2点を記録。ストーリーを含めて長期運営を想定した内容となっているが、雲行きの怪しいスタートを切ったようだ。
CEOが『ゴーストリコン ブレイクポイント』の不振理由を説明
UbisoftのCEO Yves Guillemot氏は『ディビジョン2』『ゴーストリコン ブレイクポイント』について、ポテンシャルを活かしきれなかったと説明。後者については、発売前のプレビューや社内テスト段階では品質が合格水準に達しているように見えたが、発売後の評価と売上は非常に残念なものであったと伝えている。とはいえ、Ubisoftの過去タイトルと同様にゲームをサポートし続け、コミュニティのフィードバックを聞きながら改善に務めていくとのことだ。
なおGuillemot氏は、売上が伸び悩んでいる理由を3つ挙げている。ひとつめは、ライブサービスゲームの続編に関心を持ってもらうことの難しさだ。前作にあたる『ディビジョン』は2016年3月、『ゴーストリコン ワイルドランズ』は2017年3月に発売され、定期的なアップデートによりコンテンツの充実化と品質改善が進んできた。そうしたタイトルが現役で動いている中で続編を出しても、人を集めにくいということだろう。Guillemot氏は、今後ライブサービスゲームの続編を出すときには、もっと間隔をあけるようにすると伝えている。
続いて、これまでのUbisoft作品ではゲームプレイの革新が好意的に受け止められてきたが、『ゴーストリコン ブレイクポイント』においては大多数のプレイヤーから強い反発を受けたと説明。ゲームプレイの革新は、最適な形で実装しなければ、望ましいプレイ体験は生み出せないとの教訓を述べている。同作では、Ubisoftの他フランチャイズを追従するようにRPGメカニックを取り入れており、銃器や防具に装備スコアやレアリティの概念が導入された。発売前からタクティカルシューターである『ゴーストリコン』には適していないのではないかと懸念されていたが、その懸念どおりシリーズファンを落胆させる結果となった。3つ目の不振理由としては、『ゴーストリコン ブレイクポイント』には他作品との差別化要素が足りず、ゲームの本質部分が際立たなかったと説明されている。
仮に『ウォッチドッグス レギオン』『レインボーシックス クアランティン』『Gods & Monsters』の品質が、『ゴーストリコン ブレイクポイント』に続いて批判されるような事態になれば、企業として長期的なダメージを被りかねない。そう考えると、このタイミングで目玉作品の開発期間を揃って延ばすという判断には納得がいくだろう。Guillemot氏も、先述した3つの過ちを繰り返さないよう、開発プロセスを大きく見直していると伝えている。そして、そうした事情を踏まえて3作品の発売延期を決断したと述べていることから、今回の計画変更は、『ゴーストリコン ブレイクポイント』の不振による影響が大きいと考えられる。
なお『ディビジョン2』『ゴーストリコン ブレイクポイント』は不振気味だが、今会計年度第2四半期には旧作群が予想を上る結果を残したとも述べられている。なかでも『レインボーシックス』『アサシン クリード オリジンズ』の2作品は特筆すべき勢いを見せたとのことだ。
売上高予測33%減の厳しい会計年度になりそうだが、上述した3作品のリリースが2020-2021会計年度に持ち越されたことで、次会計年度には頼もしいラインナップが待っている。AAA級作品のリリース数は5。非IFRSベースの売上高は26億ユーロに回復する見通しだ。Guillemot氏は、発売延期による今会計年度への影響は大きいが、Ubisoftの各ブランドの価値を最大化するという目標に沿った判断であり、長期的には従業員、株主、プレイヤーが恩恵を得られるだろうと説明。Ubisoftの今後については、各フランチャイズの成長に投資することで、モバイル市場での収益を伸ばし、アジア市場やeスポーツ分野における成長を促進し、ストリーミング技術の台頭およびプラットフォームの多様化による恩恵を高めていくと述べ、今回の報告を締めくくった。