つい先日ツイートした通り、奨学金71万円を返納した。
正直なところもう今回の奨学金返納騒動の件については忌々しい感情しかないので文に起こすのも憚られるのだけど、なんとか収束して落ち着いたので便所の落書き程度の気持ちでブログに残しておこうと思う。
発端
そもそも今回の騒動は去年自分がスイスに留学したことから始まる。
去年の8月からスイスに留学することが決まっており、そのための留学資金を調達することが必要で、その際に資金調達先として選んだのが文科省が主宰するトビタテ留学Japan (以下、「トビタテ」と略す) という給付型留学奨学金プロジェクトだった。
このトビタテの奨学金の受給条件としていくつかあり、
- 交換留学や研究留学など、正規留学ではなく日本の大学に在籍していること
- 留学期間は2年以内
- インターンやボランティアなどの授業以外の活動を行うこと
などがある。
今回自分は留学先でインターンをしてくるとして奨学金を受給することが決まっていた。
留学前のトラブル
留学開始にあたって一つトラブルがあり、奨学金の給付開始が9月からで、自分が渡航するのが8月からで1ヶ月分の生活費や保険代などが必要で、しかし手元の口座はすっからかんだった。
そこで自分がそれまで研究していた強化学習について概説した100ページ程度の資料を執筆し、それを元手にクラウドファンディングを行った。(当時執筆したものは以下のリンクに置いてある)
20万円程度が必要だったのだがクラウドファンディングのおかげで1週間で30万円以上集まり、無事に留学できることになった。
当時の支援していただいた各位には今でも感謝している。
留学から帰国
そんなこんなでスイスに留学していたのだけれど、数ヶ月経った頃に家庭の事情や進路の問題から帰国することになった。
具体的に、研究室配属や大学院入試の時期の問題と実家の教育ローンが膨らみすぎていることが発覚したことなどがある。
そんな背景で帰国してきたわけだけれど、トビタテ側からすれば勝手に帰国してきたという風に映るわけで、帰国したところ契約違反ということで奨学金全額返金しろという旨の連絡がきた。
トビタテのシステムとして、学生が自由に留学計画をデザインしてそれをトビタテ側にプレゼンしてそれで受給者を選ぶという形になっている。
そういうことで自分は今回の家庭の事情や進路の関係で帰国してきたので、留学計画を当初のものから今回帰国するまでのものに変更するという留学計画の変更を願い出ることにした。
ここで厄介なのがこの留学計画の変更で、変更が認められるまでかなりハードルが高く、同時に変更が受理されるまでかなり時間がかかる(数ヶ月から約半年)
さて、結果として自分の留学計画の変更はどうだったかというと、変更は認められなかった。
そんなこんなでトビタテ生を辞退させられることになり、そうして留学中に支給した奨学金は返金することになった。
追記. 後述にて「今回奨学金を返納することになったのも原因は自分の計画性の無さなどにあるので、個人的には奨学金の返納は自業自得だし仕方ないかなみたいに考えてい」るとあり、返金すること自体については特に被害者意識を持っていないことに注意されたい
借金を背負って
留学から帰ってきて進路について考えている中で、大学院進学はすることなく就職することにした。
ここらへんの就職に踏み切るまでの色々については以下のエントリーを参照。
今回奨学金を返納することになったのも原因は自分の計画性の無さなどにあるので、個人的には奨学金の返納は自業自得だし仕方ないかなみたいに考えていた。
奨学金の返納が決まったのでこれから来年からコツコツ返していかなきゃな〜俺も奨学金返済組になって毎月数万円給料から数万円引っこ抜かれるんか〜めんどいな〜なんてことも考えていた。
しかし事実は小説よりも奇なり、文科省との約束を守らなかった罪は想像以上に重かった。
今年の4月上旬に大学の窓口に呼び出され、そのときのやり取りが以下。
窓口の人「奨学金の件なんやけど、5月末に返せる?」 ぼく「...? 来年ですか?」 窓口の人「いや、今年。来月。一括で」 ぼく「留学準備金25万円と毎月16万円が3ヶ月でトータル73万円を?」 窓口の人「うん、そやね」
流石に唖然。
金がないから奨学金をもらったというのに、ほんの1ヶ月で70万もの大金出せるわけが無い。
最近話題のAI人材ということで普段からそれなりの時給でバイトをしていたが、流石に1ヶ月では腎臓でも売らない限り無理。
流石にこれは無理だと文句を言い、そっちは金欠でもないんだしなぜそこまで性急な返金を要求するのか、時期をもう少しズラしてくれと頼んだところ10月末までに返せということに。
渋々承諾し、数ヶ月で70万以上稼がなければならないことになった。
お金を用意するために
70万以上もの大金を用意するためにバイトをガチることになった。
しかし時期が悪く、4月5月は就活でいろんな会社を訪問したりで落ち着いてバイトすることはできていなかった。
気がつけば6月にもなり、そろそろタイムリミット的にもキツい感じになった。
生活費や交際費、通信費などを稼ぎつつ70万以上もの大金を用意することはかなり厳しく、そこでバイトだけでは追いつかないということで、バイト2本に加えて業務委託を受けることにした。
また、これ以外にも夏には給料が出るインターンにも行くことにした。
幸いなことにインターンの選考は2社通り、LINE Kyotoとフライウィールの2社に行かせてもらった。
ここらへんについては以下のエントリーを参照。
このエントリー内ではスキルアップのためとか社会勉強のためとか書いてあるが、実は今回のインターンで自分の中での裏テーマが奨学金返済だった。
受け入れ先の企業には少し申し訳ない気持ちもあったが、インターン自体はかなり楽しませてもらった。
特にLINE Kyotoのインターンは本当に最高だったので来年まだどこのインターンに参加するか悩んでいる人はLINE Kyotoのインターンを是非とも一考してみて欲しい。
給料について、LINE Kyotoは1週間で8万円、フライウィールは1ヶ月40万円だった(各社は本当にありがとうございました)
ということで8,9月はLINE Kyotoに1週間とフライウィールに1ヶ月半、それと現在はアイフルでバイトしているのでアイフルを1週間ちょっと、という感じでこの8, 9月でだいたい80万くらい稼ぐことができた。
ちなみに7月はバイトと先述の業務委託で25万程度稼ぐことができた。
ということで生活費や交際費、家賃などを差し引いても奨学金の返済に問題ない感じになったので気は熟したというわけである。
ちなみにお察しの通り、扶養控除枠の108万円までの枠については7, 8, 9月の3ヶ月で吹き飛ばした。
年末は確定申告がんばります。
返済準備ができた
9月分の給料が10月25日に入ってきて、準備は整った。
さあ振り込むぞというところで窓口の人から電話。
窓口「早く返金してください」
ここへ来て圧力かけてくるのか。相手が学生だということを認知しているんだろうか。
向こうもうるさいのでさっさと返金することに。
さて、窓口からの返金請求の紙には給付した奨学金の一部の71万円振り込めと書いてある。
留学の際に受け取った留学準備金25万円と毎月の給付で16万円が3ヶ月分のトータル73万円。
つまり謎の2万円の減額があり、それで73万円のうち71万円を返せというわけである。
奨学金及び留学準備金の一部請求と書いてあってかなりムカつくがここはスルー。(ほぼ全額でどこが一部なんだろうか)
そんなこんなでついに銀行で所定の口座に71万円を振り込んだ。
これにて完全勝利。ようやく長い戦いが終わった。
しかし流石は文科省、ただでは終わらない。
返金が完了した胸を窓口に報告しに行ったところ
窓口の人「2万円もらえて良かったですね^^」 ぼく「!?」 窓口の人「それでは2万円の受領書にサインしてください^^」
なんてこった。向こうは善意で学生に2万円プレゼントしたという姿勢をとってきたのである。
もうこの世界はカオスなのだと窓口を去りながら強く思った。
終わりに
このエントリーの冒頭でこの奨学金騒動について忌々しい感情しかないと書いたのはこうした背景にある。
何度も言うが、奨学金を返済すること自体には何も文句はない。全ては自分に原因があるので。
しかし71万という大金を数ヶ月で用意して一括で振り込めなんて完全にヤクザの所業だと思う。
文科省側には見捨てられ続けた。
色々家庭の事情などを訴えたものの全て無視された。
トビタテ本部の人にFacebookのMessangerで訴えてみたもののこれから会議始まるから後で返事するねと言われて3ヶ月以上経った。いつまで会議しているんだろう。
だが困ったときはたくさんいろんな人が助けてくれる。
業務委託を紹介してくれたエンジニアの方や返済で相談に乗ってくれた弁護士の方や話を聞いてくれた教授などなど。
まさに捨てる神あれば拾う神ありである。
色々学びがあった。たくさん学んだ。
自分に将来子どもができたとき奨学金に頼らずにやっていけるように高給取りになれるようになろうと強く思った。
この国で奨学金に関わったら最終的に憂き目に合う気がしてならない。
ところで自分はいわゆるAI人材というやつで学生ソフトウェアエンジニア業界は高給インターンだったり高給なバイト、業務委託などがあるので稼ぎ口は色々あるのだけれど、自分のように留学計画の変更を認められずトビタテ生の辞退を余儀なくされて奨学金の返納を迫られている人はどうなるんだろう。
大学生にして自分で借金を抱え込むんだろうか。
もう自分は済んだので良いのだけれど、他の人はどうなっているのかが気になる。
もうわからない。やはりこの世界はカオスである。