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台風19号で感じた「先人に感謝」という言葉の耐えられない軽さ

「民主党政権叩き」が裏にある

「八ッ場ダムの奇跡」

首都圏を直撃した非常に強い台風19号。

東京でこそ、可能性が視野に入れられていた荒川の氾濫などは起きなかったものの、全国各地で河川の氾濫などが発生し、多くの被害を与えた。

 

自民党の二階幹事長は被害について、「まずまずに収まった」と論じたが、実際の被害、特に氾濫などによる流通の停滞や倉庫の浸水、工場機械の破損など、産業に対する経済的影響はまだ十分に算出されておらず、なにをもって「まずまず」と論じたのか不明である。

少なくとも、大規模な自然災害による被害の大きさがハッキリと判明するのは、だいぶ経って後というのは常識であり、二階氏の発言は大規模災害を理解していないとしか考えられないのである。

10月2日、試験湛水開始時の八ツ場ダム(国土交通省関東地方整備局八ッ場ダム工事事務所記者発表資料より)
10月15日午後5時頃の八ツ場ダム(国土交通省関東地方整備局八ッ場ダム工事事務所記者発表資料より)

さて、広い地域に被害を与え、まだ被害の全貌は明らかではない台風19号だが、台風も峠を越したころに、ネットでは「八ッ場ダムの奇跡」というツイートがささやかれていた。

それは「八ッ場ダムが首都圏を氾濫から救った、八ッ場ダムスゲー」という内容のツイートである。八ッ場ダムは10月に入ってから試験湛水を行っており、本来であれば3〜4ヵ月かけて満水にする予定だったのが、今回の台風で一気に満水になったことを指して、これを「利根川の氾濫を抑え、首都圏を守った奇跡」であると主張しているのである。