あなたは、本当の吉永小百合を、知る。

プロフェッショナル 仕事の流儀

10月26日(土)[総合]後7:30

国民的映画俳優・吉永小百合(74)が、異例の長期密着取材を受け入れた。最新作の映画撮影の舞台裏にカメラが潜入し、その一部始終を記録。ディレクターが目にした“素顔”とは。10か月にわたる密着取材で知られざる実像に迫る、全国民必見の73分スペシャル。

去年11月の取材初日。吉永は、はにかむような表情で言った。「60年間、自分をプロだと思ったことはありません。でも、この取材を通してプロになるにはどうしたらいいか、自分を見つめ直せたらと思っています」。
その真意はどこにあるのか…。取材は、吉永にとっての“プロフェッショナルとは”を探す旅となった。

密着は、衣装合わせに始まり、クランクアップ、さらにはプライベートに及んだ。過去にも密着番組はあったが、吉永のスタッフいわく、「これほど密着されるのは初めて。最初で最後」。やがて私たちは、フィルムには記録されることのない闘いを吉永が繰り広げていることに気づいた。それは、“限界”との闘い。撮影終盤のアクシデント。撮影続行を望んだ吉永の覚悟とは…。

あなたは、本当の吉永小百合を、知る。

去年の秋からおよそ10か月にわたり、吉永小百合さんに密着した築山卓観ディレクターに取材秘話を聞きました。

──長い間第一線で活躍されている吉永小百合さんですが、ドキュメンタリーの長期密着取材を受け入れてくださった経緯を教えてください。

僕たちプロフェッショナル班も、吉永さんにはずっとご出演のオファーをしていて、僕自身も今回は2度目のオファーだったんです。今回はまず会ってみましょう、とおっしゃっていただいたのが去年の11月でした。

もちろん吉永さんご出演の映画はかなり見ましたし、あとはお手紙で、自分の思いを伝えました。僕は佐賀出身なんですけど、学生の時に、吉永さんが映画のロケで佐賀にいらして、その作品に僕の家族がエキストラ出演したんです。それで僕もロケ現場を覗きに行かせてもらった時にお見かけしたので、手紙には「じつは僕が吉永さんにお会いするのは2回目です」という思い出も書いて、お渡ししました。その後、「精いっぱいこのドキュメンタリーを頑張りたいと思います」とおっしゃって頂けた時は、もちろんうれしかったですけど、緊張しましたね。日本を代表する大女優の吉永さんと、どう向き合えば良いのか、大きなプレッシャーを感じました。

──吉永さんの仕事ぶりを間近でご覧になっていかがでしたか?

生活の大部分を、役と共に生きるために過ごしていらっしゃるんですよね。作品への出演が決まったら、役のふるさとやゆかりの地を旅して、その役はどんなことを感じたのかな、とか考えて、風を感じて、自分の栄養と血肉にしていかれたり。

また、主演が風邪ひいたりケガしたりしたら大変だから、外出もプライベートも控えて、ずっと筋トレなどの体づくりや、メンテナンスを続けて・・・そういう毎日なんですよ。それを何十年もずっと続けてらっしゃることは、他の誰にもできないのではないかと。

もともと、この仕事を自分で選んで始めたわけではなくて、ご両親や周りの勧めもあってはじめて、人気が出たので次々と出演が続いたんですよね。そんな忙殺される日々の中で、次第に人間らしい生活を失って、10代・20代の頃の日記には「私は魂が抜けた人形だ、生の自分は葬られてしまった」というようなことまで書かれているんです。

それが高倉健さんと映画の共演で出会った時に、これまでにないくらい大きな感動を覚えて、ああ自分は映画が本当に好きなんだってことに気づいたそうなんです。それで今も心が揺れ動くことを大事にしたいという思いで映画の仕事を続けていらっしゃるので、すごく思いの強い人なんだと思いました。なので、本当に「その人間になる」っておっしゃっていましたし、自分自身を外に置いて、他人の人生を生きることができるのがこの仕事の醍醐味だともおっしゃっていました。

──およそ10か月間、吉永小百合さんを取材して今どんな気持ちですか?

これまでプロフェッショナルを20本近く作ってきて、いろいろな方を取材させていただくたびに、「この部分が描けたらきっと大丈夫」と思って作ってきたつもりだったんですけど、今回の吉永さんに限っては今でも不安のままです。

それは「映画俳優」って、例えば職人のように何かわかりやすく物を作り上げるものではなく、演技には正解がない。技術や流儀を極めて言語化しにくい仕事だと思うんです。だから、吉永さんの演技ひとつを切り取って僕らが勝手に解釈するのがすごく難しいなと思ったのと、あとは皆さんにもわかっていただけると思うんですけど、これだけ歴史のある方をたった73分で描くのがあまりに無謀というか、そういう難しさがかなりプレッシャーになっています。

たとえば同じロケテープなのに、僕と先輩とプロデューサーの3人が思い描くストーリーがそれぞれ違うんですよ。それくらいいっぱいあるんですよね、吉永さんを描く「線」みたいなものが。最終的には、その一番いいところを全部すくっていって、恥ずかしくないものにはしたいと思うんですけれど。ただ求められるものはきっと高いので、最後まで頑張らなきゃなって思っています。

──最後にみどころをお聞かせください。

吉永さんの意外なところがご覧いただけると思います。吉永さんといえば、皆さんがなんとなく抱くイメージがあるじゃないですか。お着物でしっとり歩かれて、いわゆる“日本の女性像”みたいな。それだけじゃなくて、はつらつとしていたり、少女のような可憐かれんな表情はそんなに見たことがないと思うんですよね。

さらにその対極で、とてもストイックな一面も見ていただけます。バーベルを担いでトレーニングされていたり、役のために食事を節制されていらっしゃったり。台本と役にどこまでも向き合うということを74歳の今でもされていらっしゃるというのは、きれいで優しそうな吉永小百合さんとはまったく違うものだと思いますよね。なので、可憐な表情とストイックな姿勢、その両面をご覧いただきたいなと思っています。

延べ日数およそ90日におよんだ吉永小百合さんの密着ドキュメンタリー。吉永さんの「仕事の流儀」にご期待ください!

プロフェッショナル 仕事の流儀「吉永小百合スペシャル」

【放送予定】10月26日(土)[総合]後7:30~8:43

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