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アラブ世界を沸かせた日本アニメ「UFOロボ グレンダイザー」

26 Oct 2019
衛星放送が中東で始まる遥か前の時代、ましてやオンデマンド配信など存在すらしなかった時代、グレンダイザーは地域で放送が開始されると、またたく間にヒット作となった。(アラブニュース)
Updated 26 Oct 2019
26 Oct 2019
  • 45周年を迎える日本のアニメ作品が、中東に与え続ける影響力に着目

東京 ― ハラ・タシュカンディ

西洋で生まれ育った人にとって子供心を躍らせたものは何だろうか。もしかするとマクドナルドのロゴ「黄金のM」がそれなのかもしれない。一方、1990年代まで同チェーンが進出していなかったアラブ世界の子供たちは、「黄金の角」に夢中だった。「UFOロボ グレンダイザー」に登場するスーパーロボットのグレンダイザーと、そのヘルメットから伸びる黄金の角は、中東ではマクドナルドの大きな「黄金のM」と同じくらい知名度が高い。

日本の漫画家、永井豪氏が1975年に制作したグレンダイザーが、地元のテレビで放送されるハッピーなひとときは、さながら中東版のハッピーセットであった。

レバノンのテレビ局、テレ・レバノンで1980年代に初放送された同作品は、当時中東で視聴できる数少ない完全吹替版アニメのひとつであった。ヒーローの宇門大介と彼が乗り込む強力なロボットが繰り広げる物語は、アラブの子供たちの憧れであった。

スーパーロボット系の作品に革命を巻き起こしたことで日本での知名度を獲得した永井氏だが、パイロットがコックピットで実際に操縦する演出は、同氏の作品が初めてであった。また同氏によるデザインの多くは、他の作品のメカロボットに対して新しい基準を定めたものと見られている。

グレンダイザーとその他の過去作品により日本で一躍有名になった永井氏は、日本のアニメと漫画界における伝説的存在として確固たる地位を築いた。

グレンダイザーを含むマジンガーシリーズ三部作は、「マジンガー Z」、「グレートマジンガー」そして「UFOロボ グレンダイザー」で構成される。このうち最初の2作品は日本で大ヒットし、マジンガー Zはまたたく間に国のポップカルチャーを代表する象徴として、抜群の認知度を獲得した。しかし、グレンダイザーは全国的な知名度で他の2作品に見劣りしたと、ファンの多くは考えている。

東京にある自身のスタジオでアラブニュースの独占取材に応じた永井氏は、そうとは限らないと話す。「日本でヒットしたのは確かです。マジンガー Zの知名度が高すぎたせいで、それと比べて人気がイマイチと考える人もいたのでしょう」

「日本で最初に作られたのはマジンガー Zで、その次がグレートマジンガー。グレンダイザーはシリーズの3作目でした。ロボットがテーマの作品が3作連続で放送されたので、グレンダイザーの視聴率は多少下がりしました。それでも大ヒット作だと私は思います」

日本におけるグレンダイザーの人気については賛否両論あるが、アラブ世界での人気に議論の余地はない。レバノンで初めて制作された吹替版は、1980年代に同国テレビ局で放送されていたが、クウェート・テレビやSaudi Channel 1など、他のアラブ系テレビ局でも後に放送されるようになった。

衛星放送が中東で始まる遥か前の時代、ましてやオンデマンド配信など存在すらしなかった時代、グレンダイザーは地域で放送が開始されると、またたく間にヒット作となった。

グレンダイザーの放送時間には街から人影が消え、熱狂的な視聴者たちはテレビ画面を食い入るように見つめていた。レバノン、サウジアラビア、クウェート、モロッコなど、中東のどの地域においても同じであった。

レバノン人声優のジハード・アルアトラシュ氏は、宇門大介(中東では「Duke Fleed」と呼ばれる)の声を演じ、グレンダイザーが2つの理由で成功するのに貢献した。一つは作品のプロダクション・バリューの高さ、もう一つは当時の中東における地政学的情勢だ。

2005年にアラビア語紙「アッシャルク・アルアウサト」とのインタビューで、アルアトラシュ氏はこう語っている。「シリーズは時代に先んじていました。現代と比べて利用可能な手段が限られていたにも関わらず、隅々まで完璧を追求して制作されました。あらゆる意味で、スケールの大きな作品でした」

レバノン内戦中に初放送されたことは、中東における訴求力に繋がった。「パレスチナ人の領土が占領され、アラブ世界全体が悲しみに暮れていました」とアルアトラシュ氏は言う。「そのタイミングでグレンダイザーが登場したのです。愛、平和、祖国防衛、敵に立ち向かうという価値観を掲げて。ナショナリズムの感情にも影響を与えたと思います」

グレンダイザーは子供時代そのものだったと語るのは、内戦中のレバノンで生まれ育ったラチャ・サーダウィ氏だ。

「年が近くとても仲が良かった兄弟が、作品の大ファンでした。なので私もいつの間にかファンになっていました」とサーダウィ氏は話す。

「戦争の危険と隣り合わせだったという点では最悪の幼少期でしたが、作品は素敵な逃避手段を与えてくれました。子供にとって理解できなくても何となく影響を感じる作品でした」

地元のテレビ局で何度も再放送され、中東で衛星放送が開始し(後にはストリーミングサービスも登場)、さらには録画した登場人物を基に海賊版が作られたりなど、新規視聴者が気軽に楽しめる条件が整ったことで、作品はアラビア語圏のポップカルチャーにおいて確固たる地位を築いた。親子揃って楽しめる番組なので、絆を深めるきっかけにもなった。「奴はグレンダイザー気取りだ」や「グレンダイザーな奴だ」といった具合に、グレンダイザーは「タフガイ」を意味する隠語にもなっている。

グレンダイザーのグッズは今でも中東で飛ぶように売れていおり、人気は衰えを知らない。ドバイにある24時間営業の料理店、ザルーブでは、外壁の一部にグレンダイザーの巨大な壁画が飾られている。

サウジアラビア人のアーティスト兼ピンデザイナー、ラビード・アシドミ氏は、昔のアニメのアラビア語吹替版に登場するキャラクターをあしらったピンを販売している。アシドミ氏はアラブニュースに対し、グレンダイザー・ピンは大人気なため、すぐに売り切れてしまうと話している。グレンダイザーの人気絶頂期に発売されたアンティーク商品には、eBayなどのオークションサイトで法外の値が付けられており、一部ビンテージ玩具の美品に至っては、ゆうに1000ドルを超える値段で取引されている。

さらに最近、サウジアラビア・リヤドで今月開催された「Joy Forum」では、巨大なグレンダイザー像が展示され、来場するイベント参加者を迎えていた。同イベントは、サウジアラビアで急成長する娯楽産業に外国投資家を呼び寄せることを目的としている。

巨大ロボットと記念撮影をするためにできた人だかりの大きさが、中東で作品の人気が衰えていないことを物語っている。

アラビア語吹替版の動画はYouTube上で数百万回の再生数を獲得しており、グレンダイザーの人気を裏付けている。テーマ曲の動画だけでも200万回近い再生数だ。

中東で知名度の高いグレンダイザーだが、その制作者についてはほとんど知られていない。画業50周年を迎え、8月に東京で展示会を開いた永井氏は、アラブ世界で作品を愛してくれているファンたちには深く感謝していると言う。

「今後の作品もぜひ楽しんでください。様々な環境に困難を抱えながらも、未来へ向けて歩み続けなければならない人たちが居ます。しかしその人たちも、アニメを観てファンタジーの世界に夢中になれば、自由と幸せを感じることができるはずです。それを念頭に今後も楽しんでもらえれば嬉しいです」と永井氏は語る。

さらに永井氏は、意図的ではなかったものの、作品を公開したタイミングが、中東で人気を博した理由の一つであることを認める。

「歴史を見れば、多くの国々で数々の戦争や戦いが繰り広げられてきました。そこで私は、人々が経験してきた様々な場面を、グレンダイザーという形でひとまとめにしたいと考えました。過去の記憶を、作品を通じて共有できるようにしたかったのです」と永井氏は続ける。

「良いタイミングだったと思います。日本もその長い歴史において、数々の戦争を経験してきました。日本人にも同じような記憶が心の奥底に刻まれています。それが視聴者の心に共鳴したのでしょう」

グレンダイザーは、他にも意外な場所で熱狂的な人気を呼んでいた。中東以外では、フランスとカナダのフランス語圏(現地名「Goldorak」)に加え、イタリア(現地名「Goldrake」)でも人々に広く愛されていた。

しかしどの地域も、グレンダイザーへの愛では中東に遠く及ばない。グレンダイザーの大ファンであるサレハ・アルザイド氏が指摘するように、作品の影響はアラブ人の若者たちに残っている。

「グレンダイザーがアラブ人の子供たちに与えた影響は、日本人に対してよりも明らかに大きかったと思います。宇宙やエイリアン、UFO、地球外の惑星について考えを巡らせたり、飛行ロボットやレーザー兵器などの技術を正義のために使うことに興味を引かれた作品は、グレンダイザーが初めてでした」とアルザイド氏は語る。

「アニメーション、アート、音楽、ストーリー、そして子供時代の思い出にもなった力強いキャラクターたち。私はSFの物語やゲームのファンとして、グレンダイザーはこれらの要素を見事に組み合わせた作品だと思います」

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