豪ウルルに観光客が殺到、登山禁止目前に駆け込み
オーストラリア中部の有名な巨大一枚岩「ウルル」(エアーズロック)への登山が、26日から禁止される。登山「最終日」の25日、大勢の観光客が夜明け前から長い列をつくった。
地元の先住民アボリジニは、自分たちの聖地であるウルルに登らないよう観光客に長年訴えていた。
登山禁止が決まった2017年には、観光客のわずか16%がウルルに登っていた。ところが、ここ数週間で登山者が殺到している。
公園当局は25日、強風で登山は危険と判断し、登山開始を3時間遅らせた。
登山者で「大渋滞」
過去数カ月の間、登山者がうねうねと長い列をつくってウルルを登る様子と、登山者が殺到して「大渋滞」がおきているエヴェレストを比較する人もいる。
あるツイッターユーザーは、「ばかげてる。2日前にウルルに登った。10月に永久に登山が禁止される」と、写真つきで投稿した。
別の人は、ウルル登山への順番待ちの様子を映したタイムラプス(微速度撮影)映像を投稿した。午前7時の時点ですでに大行列ができていることがわかる。
なぜ登山が禁止されるのか
ウルル・カタ・ジュタ国立公園委員会は2017年、全会一致で登山禁止を決定した。聖地としての重要性や安全面、環境への影響が理由だという。
公園や観光当局は、登山の禁止による同国立公園への訪問者数への影響はそれほど大きくないだろうとしている。
ウルルの麓には、観光客に対し登山をしないよう求める表示が複数設置されている。
アボリジニ男性のラメス・トーマスさんはBBCに対し、ウルルは「教会のような、非常に神聖な場所」だと話す。
「世界中の人々は(中略)ウルルに登るためだけにここに来る。リスペクトがありません」
一方、ある登山者男性はBBCに対し、「何が重要なのかを理解するのは難しい。ウルルは岩だし、登るためにあると思う」と述べた。
ホテルは満室、ごみ問題も
今週、周辺のキャンプ場やホテルは予約でいっぱいになった。地元の人によると、宿泊先が見つからなかった観光客が、近隣で違法にキャンプをしたり、ごみを捨てたりしているという。
日本人の死亡事故も
1950年代以降、脱水症状や熱中症などにより、数十人がウルルの登山中に亡くなっている。最近では2018年に、最も急な斜面の1つを登ろうとした日本人男性が死亡した。
高さ348メートルのウルルの登山ルートは急斜面で滑りやすくなっている。夏場には最高気温が47度に達することがある。
<解説>「負担が解消される」――フィル・マーサー、BBCニュース(ウルル・カタ・ジュタ国立公園)
砂漠地帯にそびえ立つウルルは見事だ。オーストラリアの先住民は、ウルルには他のどこにもないような力や崇高さがあると話す。
地元に住むドナルド・フレイザーさんは、「今日で負担が解消される。そんな気がする。今こそ、良い休息と癒しを得る時だ」と言う。
25日、ウルルの麓には夜明け前から、最後にもう1度登ろうとする大勢の人が集まった。
一部の人たちにとっては、ウルル登山は大切な思い出となるだろう。その一方で、アボリジニの長年の苦悩に終止符が打たれることとなる。