公設秘書が支援者の通夜で香典を渡したとの週刊誌報道を受け、菅原一秀経済産業相が辞任した。国会審議への影響を懸念したのだろうが、事実なら公職選挙法違反に当たる。議員辞職も免れまい。
「政治とカネ」の問題が厳しく問われる時代になってからも、こんなことがいまだに行われていたことに驚きを禁じ得ない。
公職選挙法は政治家が選挙区内で寄付することを禁じている。有権者の「票」を「カネ」で買収するような不正選挙をなくすためであり、違反すれば五十万円以下の罰金が科される。
政治家本人が葬儀に出席し、香典を出した場合には適用されないが、菅原氏の場合、秘書が香典を手渡していた。菅原氏の説明によると、菅原氏本人も翌日、香典を持参したが、一つは遺族から返されたという。このことは秘書が持って行った香典も、菅原氏からのものだった証左だろう。
菅原氏を巡っては、二〇〇六~〇七年のお中元やお歳暮の時期に選挙区内の有権者にメロンなどの贈答品を配っていたと、週刊誌が経産相就任後に報道していた。
このこと自体、事実なら公選法違反の疑いが免れないが、秘書が香典を持参したのは、国会で贈答品問題が追及されている最中だ。
当選一、二回の若手議員ならまだしも、菅原氏は練馬区議や東京都議を経て衆院議員となり、閣僚に起用された中堅議員である。秘書を含めて「政治とカネ」に対する無理解が過ぎるのではないか。
寄付行為を巡っては、氏名入りの線香セットを配った公選法違反容疑で書類送検された小野寺五典衆院議員が〇〇年に議員を辞職。その後、罰金と公民権停止三年の略式命令を受けた。
一四年には、氏名入りのうちわを配った松島みどり法相が公選法違反の疑いを指摘され、法相を辞任した経緯がある。
同様のことがいまだに行われていないか、すべての議員がいま一度、総点検すべきであろう。
安倍晋三首相は辞表受理後「任命責任は私にあり、こうした事態になったことを国民に深くおわびする」と述べたが、どう責任を取るのかを明確にすべきだ。責任があると言うだけでは、責任を取ったことにはならない。
そもそも首相ら政権中枢は、菅原氏を巡る疑惑浮上後も「本人が説明する」というだけで、積極的に解明しようとはしなかった。そうした姿勢こそが問われるべきであり、猛省すべきである。
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