世界中で、リアル店舗の閉鎖が止まらないーー。
10月2日、女性向けの衣料ブランド「23区」などを展開するオンワード・ホールディングスが、国内外の600店舗(全体の2割に相当)を閉鎖すると発表した。成長しているオンライン事業に投資をしてそちらの売上を倍増させる計画だという。
三越伊勢丹ホールディングスも、前社長の更迭騒ぎの後、新体制のもとで構造改革を進めており、9月30日には伊勢丹相模原店と府中店を閉鎖した。どちらも20年以上地元の人々に親しまれてきた店舗だ。
果たして日本でもリアル店舗閉鎖の動きが、これから本格化するのだろうかーー。
近年の米国でのリアル店舗閉鎖の動きは凄まじく、この世の終末を予言した聖書の黙示録にちなんで「小売の黙示録(リテール・アポカリプス)」とまで呼ばれているが、今年はさらにひどくなっている。
靴のディスカウント「ペイレス・シューズ」が全2100店舗を閉鎖するのを筆頭に、昨年破産申請した老舗デパートの「シアーズ」がそれまでの140店舗以上に加えて新たに40店舗を閉鎖。
高級デパートとしてのブランドが強固だった「バーニーズ」も破産申請して15店舗、感謝祭パレードのスポンサーとして有名な「メイシーズ」が6店舗、「ロード&テイラー」、「ノードストーム」が各々6〜9店舗の閉鎖を発表している。
アパレルでは、おしゃれで安価な「ファースト・ファッション」を武器に日本にも進出した「フォエバー21」が経営破綻し、全世界で350店舗を閉鎖予定。GAPも、「GAP」と「バナナ・リパブリック」あわせて200店舗の閉鎖を発表。ちょっと挑発的でホットな若者ブランドだったはずの「アバクロ」ことアバクロンビー&フィッチも苦戦して40店舗を閉鎖。
超有名モデルがランジェリーを纏う「エンジェル」のカタログで一世風靡したヴィクトリア・シークレットも53店舗を閉店予定だ。
今年の9月末までに全米では8500店舗以上が閉鎖、通年では1万2000店舗に達するとの観測もある。UBSは、2026年までにさらに7万5000店舗が閉鎖するだろうと予測している。
カナダや欧州でも同様の現象が見られる。英国では昨年、老舗の「マーク・アンド・スペンサー」が100店舗の閉鎖を発表したが、有名ブランドが並ぶロンドンのハイストリートでも小売店が今年に入って1200店以上純減する異常事態となっている。
米国ではショッピングモールの廃墟化、「デッド(死んだ)・モール」や「ゴースト(幽霊)・モール」がここ数年社会現象になっている。複数のデパートを併設する大規模モールは全米に1150程度あるが、そのうち3分の1が死んでいるか死につつある、という調査もある。
デパートや有名ブランドなどの主要テナントが抜けて買い物客の波が途絶え、それがさらにテナント撤退を加速化するという負のスパイラルだ。