「もっと声に出して読みたい歌詞特集」のボーナス・トラックとして、また番組の中では1曲もかかっていない最後の大物=吉田拓郎の歌詞に注目してみたいと思います。
■吉田拓郎『元気です』
当時の吉田拓郎としては珍しい、自身による作詞。吉田拓郎と矢沢永吉という、広島を代表する長身男前の音楽家は、作詞よりも作曲&歌の人ということ。宮崎美子が主演したTBS系ポーラテレビ小説『元気です!』の主題歌。
歌は4番まであって、それぞれ「春」「夏」「秋」「冬」と割り当てられているのだが、中でも最後を飾る「冬」がいい。四季を超えて「冬」に旅立っていくという設定で、次のような歌詞が歌われる。これは声を出して読みたくなる。
「私も今」「船出の時」だけど、「言葉を選んで渡すより」「元気ですよと答えよう」。
お涙ちょうだいのウェットなメッセージではなく「元気です」の一言でいいじゃないか。まさに。未だにお涙ちょうだいの湿った歌詞が多い、Jポップのお別れソングに対する1980年からのアンチテーゼだ。
最後に老婆心ながら。この『元気です』という曲は、吉田拓郎のアルバム『元気です。』には収録されていない。アルバム『元気です。』は、シングル『元気です』の8年前=72年に発売されたもので、シングル『元気です』とは無関係なので要注意(クイーンの『Sheer Heart Attack』と同じ構造)。
■吉田拓郎『ビートルズが教えてくれた』
作詞は岡本おさみ。この人は、吉田拓郎が作曲し、1974年の日本レコード大賞に輝いた、森進一『襟裳岬』の作詞もした人で、言わば、70年代吉田拓郎の「田舎系歌詞」の担当。逆に「都会系歌詞」は喜多條忠(きたじょうまこと)ということになる。
この、アルバム『伽草子』(73年)の中の1曲は、当時の日本人によるビートルズ論として、非常に画期的だったと思う。
「ビートルズが教えてくれた」のは、「もっと陽気であっていいじゃないか」ということだったのではないか。この歌詞は、そう訴えている。
これは、当時の貧乏くさくて陰鬱な音楽家たちに対する、岡本おさみと吉田拓郎からの批判のようにも聴こえてくる。ビートルズは、(一見)陽気に快活にロックンロールを奏で、世界の若者を魅了したじゃないか。それに比べて、お前ら、何ウジウジやってるんだよと。
桑田佳祐はラジオで「吉田拓郎を聴いて、音楽で金を稼ぐって、すげぇいいなと思ったんです」と発言していた。日本にロックビジネスを確立させたのは、ビートルズと吉田拓郎と矢沢永吉だと思う。だから日本のリバプールは広島だ。
第50回「ジミー・ペイジのギター編曲を聴く!」
2019年10月15日放送
収録の合間に、何度となくレッド・ツェッペリンのギタリスト=ジミー・ペイジの話が出た、第50回「おじさん、ギターやめるってよ特集」のボーナス・トラックは、アレンジャーとしてのジミー・ペイジの話をしたい。
第49回「ビートルズの変態クリシェ」
2019年10月07日放送
第49回「コード進行まとめました特集」において私は「クリシェ」を徹底的に分析したが、今回は、クリシェ、ひいてはコード進行まわりのアレもコレもの始祖である、ビートルズのクリシェを特集してみたい。
第48回「ユーミンのポツンと一曲」
2019年09月10日放送
桑田佳祐や山下達郎のレア音源をお届けした第48回「ポツンと一曲」のボーナストラックとして、ここではユーミンの「ポツンと一曲」をお届けしたい。
第47回「声質の似た女性ボーカリストもう1組」
2019年09月02日放送
第47回「いい声特集」では、私好みの女性ボーカリストとして、竹内まりや、夏川りみ、矢野顕子などを取り上げ、それぞれに似た声質を持つ洋楽のボーカリストとして、カレン・カーペンター、バーブラ・ストライサンド、ケイト・ブッシュを併せて紹介した。
第46回「踊りたくなるCのグルーヴ」
2019年08月13日放送
第46回「夏だ!祭りだ!踊っちゃおう特集」のボーナス・トラックは「踊りたくなるCのグルーヴ」と題して、Cから始まる名前を持つバンドの、思わず腰が動くグルーヴを取り上げたい。
第45回「小室哲哉ナインス特集」
2019年08月04日放送
第45回「暑中お見舞い申し上げナインス」のボーナス・トラックとして、今回は「小室哲哉ナインス」を特集したい。