Dr.三島の「眠ってトクする最新科学」
コラム
「睡眠薬を飲んでも眠れない」は服用時刻に問題あり!?…「腕時計」よりも「体内時計」に従って
こんにちは。精神科医で睡眠専門医の三島和夫です。睡眠と健康に関する皆さんからのご質問に科学的見地からビシバシお答えします。
不眠に悩んでいる人は、「もう○時だから寝なければ!」「△時なのに眠気が来ない……」などと、眠りにつく「時刻」にこだわることが多いようです。そのため、極端な早寝をしている人がいます。でも、その人が快眠できる時刻は「腕時計」ではなく、「体内時計」で決められているのです。無理な早寝は、むしろ逆効果になることが少なくありません。
「21時頃かな。たまに20時過ぎのことも…」
不眠で悩んでいる患者さんの診療をしていて、驚かされることがあります。「他の病院で処方されている睡眠薬が効かない」という理由で、セカンドオピニオンを希望して、受診される患者さん。処方薬を見ると、ごく標準的な内容です。そこで、睡眠薬の服用時刻を伺うと、「夕食の後片付けが終わって、一段落してから」。ふむふむ。
「実際の時刻は?」と、もう一押しすると、少し答えにくそうに「21時頃かな。たまに20時過ぎのことも……」。80歳代の高齢者ならばともかく、50歳代の働き盛りでも、このような早い時間帯に睡眠薬を服用して早寝をしようとしている方が少なからずいます。これでは睡眠薬の効果は十分に発揮されません。その理由を解説しましょう。
横になりたいのは「眠気」ではなく「疲労感」
確かに不眠になるとだるいし、夜には目がしょぼしょぼしてきて読書もつらい。 観 たいテレビ番組もない。夕食や晩酌が済めば、すぐに横になりたくなる。「あ?あ、このまま気がつけば朝になってくれればよいのに」。そのような気持ちで、早い時間帯から寝床に入る人が多いようです。睡眠薬を服用している人は、さらに早い時間に服用することになります。
ところが、このような早い時間帯の、一見「眠気」に思える症状は、実は疲労感から来るもので、健康的な睡眠をとるための体内コンディションが、まだ整っていないことが多いのです。睡眠薬を早めに服用しても、「何となく眠気を感じるけれど、寝つけない」「いったん寝つけるのだが、すぐに目を覚ましてしまう」といった状態になりがちなのは、体内環境に後押しされる生理的な睡眠の勢いが十分ではないからです。
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