2019.10.23

研究レポート

縦長LPはコンバージョンに寄与するのか?BtoBにおけるランディングページ(LP)のベストプラクティスに関する調査

調査の前提

縦長のサイト構造が定石とされている

一般にランディングページ(LP)では、製品やサービスの内容を縦長のサイト構造の中で紹介・説明されており、縦長のサイト構造が高い成果を挙げるための条件であるという指摘も存在する。

今回の調査では縦長のLPがコンバージョンに寄与するのかについて、LPの縦の長さとCVRの相関関係について調査を行う。

サイトの入口となる「ランディングページ(LP)」のベストプラクティスを調査

BtoBサービスを提供する企業は、流入元別・ターゲット別にランディングページ(以下LP)を設けているケースが多い。どのような流入経路で訪問したかにより、訪問者の期待は異なるため、それに合わせた受け皿にするためである。

とりわけLPに関しては、LPO(Landing Page Optimization、ランディングページ最適化)という言葉が2005年頃に台頭し、2010年以降はLPOに一定の需要があるといって良いだろう。

(参考)「ランディングページ」という検索ワードの検索数 Google Trendsより

さらに、LPO市場は成長市場であり、2017年には45億円程度あるとする調査も存在する。LPの見直しの重要性は近年になって高まっているのである。

(参考)クロスフィニティ、「2015年度版LPO市場調査」を発表 2014年は15.8億円(前年比約2倍)、2015年は25.0億円(前年比約158%)まで成長と予測

以上を踏まえ、今回の調査では、そのLPをどのような構造にし、問題点がある場合はどのような改善によってCVRが高まるのかを調査した。

調査の内容

BtoBサイトのLP30件を無作為に抽出し、「AIアナリスト」で分析

今回はBtoBサイトのLP30件を無作為に抽出し、調査対象とした。BtoBのサイトの場合、会社PCでアクセスする場合が多いと考え、PCでの閲覧に絞って調査を行った。ファーストビューのサイズもPCでの閲覧を想定している。

調査サイトのランディングページを分析、CVRを計測

今回の調査では高水準のCVRを記録したLPをベストプラクティスとする。BtoBサイトでもLPはサイトによりレイアウトや構成要素が大きく異っていたが、どのような場合にCVRが高くなるのかを調査した。

調査の概要は以下の通りである。

調査期間 2019/05/01-2019/08/31
CV 「資料請求」
調査サイト BtoBサイト30件(流入元を同一に揃えて検証)

調査結果

最もCVRが高いのはファーストビュー完結型のLP。さらにファーストビュー内にコンバージョン(CV)ボタンを配置したサイトはCVRが高い。CVテキストの工夫も効果あり。

  1. 縦長LPはCVRが低く、LPはファーストビュー完結型がベスト
    1. LPの縦の長さはCVRと無関係
    2. LPのファーストビューには、3点の必須要素が存在
  2. CV(CTA)ボタンは、ファーストビューの中央部に配置すべき
  3. CV(CTA)ボタンのテキストに補完的文言を付帯させるのは有効

1.縦長LPはCVRが低く、LPはファーストビュー完結型がベスト

1-a.LPの縦の長さはCVRと無関係

BtoBサイトのLPはサイトによって縦の長さが大きく異なる。BtoBのLPにおいては、様々なコンテンツを盛り込んで訴求する縦に長いLPの作成が定石とされる風潮もあるようだ。それが事実であるか確かめるために、今回は調査サイトのLPの縦ピクセル数を計測し、CVRとの関連を調査した。

調査サイトの縦ピクセル数とCVRを計測して相関をみたところ、相関係数は約-0.23という結果になった。散布図を参照しても、このサイトの縦ピクセル数とCVRの二者の相関関係が存在するとは言い難い。

図表1:縦ピクセル数とCVR

1-b.LPのファーストビューには、3点の必須要素がある

分析の結果、CVRの高いサイトはコンテンツをファーストビューに収める工夫が見られた。さらに、ファーストビュー内にて、サービス名の明示(1)、サービス概要の明示(2)、CV(CTA)ボタンの設置(3)という3点の条件を満たすサイトはCVRが高い傾向にあった。

なお、本調査におけるファーストビューの定義は、Windowsを搭載したPCにて縦解像度設定を768pxにした場合にブラウザ内で見える範囲であり、Windowsのタスクバー、ブラウザの上下幅部分は差し引いている。

これは、最近3ヶ月間(5月29日〜8月26日)の統計データによると縦768px以上のモニタ解像度が約95%であることを参考に設定した定義である。

(参考)画面幅のシェアの統計情報

コンテンツをファーストビューに収める工夫とは、ユーザーが見た際にファーストビューの一画面だけでページが完結しているように見せる工夫のことである。言い換えると、一見その下にはコンテンツが配置されていないように見せるデザインである。

このようなデザインが用いられているサイトでは、具体的にはファーストビュー下部に空白や仕切り線を置くなどの工夫が見られた。これにより、ファーストビューにおいて下部にコンテンツが中途半端に露出して下にスクロールさせられるように見えることは回避される。

また、自社の製品のセールの宣伝のみが行われ、商品の概要が示されていない場合や、サービスの説明ではなく、導入事例から掲載されているサイトも散見された。

また調査サイトの半数以上がファーストビューにCVボタンを配置していたが、トップページを下までスクロールしない限り、資料請求のCVボタンが表示されないというサイトも存在した。

以上を踏まえ、「ファーストビューにてコンテンツを収める工夫があり、サービス名の明示(1)、概要の明示(2)、CV(CTA)ボタンの設置(3)という3点が揃っている」という条件を満たすサイトを本調査では「ファーストビュー完結型サイト」と呼称する。

ファーストビュー完結型サイトと、その条件を満たしていない完結型ではないサイトを分け、それぞれCVR平均を測定したところ、ファーストビュー完結型は1.15%、そうではないサイトは0.70%であった。

これより、ファーストビュー完結型がLPのベストプラクティスであることが示された。また、前項でLPの縦の長さとCVRの相関関係が示されなかったことが明らかとなったが、ファーストビュー完結型のサイトが高CVRを記録しているという事実と照合すると、不思議ではないことが読み取れる。

図表2:ファーストビューで完結しているか否かによるCVR平均の差

2.CV(CTA)ボタンは、ファーストビューの中央部に配置すべき

前項ではファーストビューにおいてCV(CTA)ボタン(以下、「CVボタン」)が設置されている場合、CVRが高い傾向にあることが示された。本調査ではさらに分析を行い、目に留まりやすいファーストビューの中央にCVボタンを設置しているサイトと、ヘッダー部分などファーストビュー中央以外にCVボタンを配置しているサイトを二分し、それぞれCVR平均を算出した。

その結果、ファーストビューの中央にCVボタンを置いたサイトはCVR平均が1.10%、ヘッダーに設置したサイトは0.83%であり、ファーストビュー中央に置いた場合の方が1.32倍CVRが高かった。

ファーストビューにCVボタンが設置された調査サイトが多かったことは、既にその重要性が認知されているからと解釈することも可能だろう。

しかし、さらに踏み込んでCVボタンをファーストビューの中央に設置しているか否かについては、調査サイトでは半数に分かれていた。そのため、ファーストビューにCVボタンを設置することのみに留まっているサイトは、更なる改善の余地があるといえるだろう。

図表3:ファーストビュー中央にCVボタンがおかれているか否かによるCVR平均の差

3.CV(CTA)ボタンのテキストに補完的文言を付帯させるのは有効

本調査ではCVを「資料請求」に限定しているが、調査サイトのCVボタンには単純に「資料請求」と書かれたである場合だけでなく、「3分でわかる資料ダウンロード」など、資料請求という文言に加え、補完的な文言が加えられている場合がある。

そこで、CVボタンの文言が「資料請求」あるいは「資料ダウンロード」のような単純なテキストのサイトと、「3分で分かる(商品名)資料ダウンロード」「まずは資料請求」のように、「資料請求」という言葉を補完する文言がついているサイトを二分し、それぞれのCVR平均を計測した。

補足であるが、CVテキストの工夫の定義に関しては、サイトによって使用する文言が違い、厳密な定義が難しいが、本調査では第一段階として、「資料請求」という文言に何らかの補完的な文言が付帯した場合、それは工夫であるとみなすこととする。

調査の結果、CVテキストに補完的文言が付帯しているサイトのCVR平均は1.16%、それが見られないサイトは0.80%であった。この結果、CVテキストの工夫がCVRの向上をもたらすことが示された。

今回のCVテキストの定義は、「資料請求」「資料ダウンロード」という文言に、形式や意味を問わず何らかの文言が付帯することとしたが、それでも二者のCVR平均には差が確認された。このことから、CVボタンの位置だけでなく文言の見直しを図ることもCVR向上に繋がるといえるだろう。

図表4:CVテキストに工夫が見られるか否かによるCVR平均の差

本調査から得られた知見

BtoBサイトのランディングページ(LP)では以下の条件を満すことがCVR向上において重要である。

  • ファーストビューで完結しているように見せる設計。具体的にはファーストビュー内にサービス名・商品の概要・CVボタンの3点を全て設置し、下部に空白や仕切り線を置いて完結しているように見せる。
  • ファーストビューにCVボタンを配置。位置はヘッダーよりも、ファーストビュー中央の目立つ位置が望ましい。
  • CVテキストには工夫の余地あり。単純に「資料請求」ではなく「まずは資料請求」「3分でわかる資料ダウンロード」など、資料請求という言葉に対して補完的文言が付帯すると良い。

本調査の提言

ランディングページ(LP)においてはファーストビューの構成要素が鍵を握る。ファーストビューに絞って改善することでより効率的に成果を上げることが可能。ファーストビューで要素を一旦完結させてCV誘導させる(ファーストビューで完結しているように見せる)ことが有効であり、またCVボタン関連の改善も成果に直結しやすい。

通常、商材・サービスについてLP上で丁寧に説明していったほうがよいのではないかと考え、縦長のLPを展開する。

しかし、商材・サービスが複雑なBtoBではWeb上で丁寧に説明されてもユーザーには理解が難しく、営業担当が直接説明したほうが、ユーザーにとっても、企業にとっても望ましいことが少なくない。Web上で無理に詳細を説明して理解させるのではなく、ファーストビューで速やかにCVに誘導し最速で営業担当に渡すことをまず考えるべきといえるだろう。

仮にそれにより薄いリードが増えて対応が難しくなる場合は、以前のレポートで触れたように申込み完了後のアンケートで顧客情報を取得し、企業側でリードを取捨選択できるようにするなどの手段もある。まずはCVさせてリードの量を優先し、後から質を判定できるようにしておいてリードを選ぶスタンスが望ましい。

株式会社才流 代表取締役社長 栗原氏 コメント

これまでランディングページ制作の現場においては、どのようなコンテンツを、どのような順番で掲載するのか。キャッチコピーやデザインをどう表現するか、が中心に議論されてきた。

つまり、コンバージョン率を左右するのは、コンテンツの内容、提示される順番、キャッチコピー、デザインの質だと思われてきた。しかし、今回の調査で明らかになったのは、実は『ファーストビューの構成要素(完結しているように見える、中央にCVボタンが設置されている、CVテキストが工夫されている)』がコンバージョン率において鍵を握っていた、という結果である。

実際、私が過去にBtoBサイトのユーザーテストを多数行ってきた中でも、ユーザーは製品/サービスの概要や気になる機能をざっと把握した後は、「まずは資料を見て、決めたい」「とりあえず営業に話を聞きたい」などの動機が強く現れ、Webサイトやランディングページ上で、すべての情報を得て、すべてを理解しようと思っていない。(※現実問題としても、無形商材や専門性の高いBtoB商材の場合、Webサイト上で製品/サービスを正解に理解してもらうことは難しい)

今回の結果は、「まずは資料を見て、決めたい」「とりあえず営業に話を聞きたい」といったユーザーニーズに的確に応えているページはコンバージョン率が高くなった、ということだろう。

さらに、今回はランディングページに関する調査であったが、「ファーストビュー」は、ランディングページ以外のWebコンテンツ(記事コンテンツ、メール、事例インタビュー、SNSなど)においても同様に重要だ。『人は見た目が9割』という本があるが、Webコンテンツにおいては『ファーストビューが9割』というぐらいの意識を持って、ファーストビューの内容や魅せ方を考え抜く必要がある。

今回の知見は、ランディングページの改善において明日からすぐに活かせるノウハウだが、それ以外の自社のWebコンテンツ(記事コンテンツ、メール、事例インタビュー、SNSなど)に関しても、ファーストビューを見直すきっかけとできるだろう。

※この研究レポートはWACUL社提供のAIアナリストに登録されたサイトデータを元に作成されました。
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