やるべきことは分かっている。内野ならどこでもこなせる三ツ俣大樹内野手(27)が秋に磨くのはバッティングだ。状況に応じて考えながら得点に貢献する打撃を自分のものにする。
「進塁打が必要な場面ならきっちり進塁打、バントならバント。追い込まれたなら、そこからどれだけ粘れるか。いまは『つなぎ』のバッティングを意識しています」
23日の韓国・ハンファ戦。6回に代打で出ると2球で2ストライクと追い込まれた。それでも3球目をファウルにしてから3球連続でボール球を見極めた。フルカウントから最後は一塁へのゴロに倒れ、「あれはダメでした。当てにいって右に打つのと右打ちでは全然違うので」。宮崎での試行錯誤は続く。
フェニックス・リーグではここまで10試合中9試合が途中出場。シーズン中、今季限りで退団した奈良原浩・内野守備走塁コーチに言われた言葉が今も頭に残る。「試合の途中から出るのは頭から出るよりも難しいんだよ」
そのために必要なのは心と体の準備。「1軍でも試合終盤での守備固めや代打が多い」とシーズンで果たす自分の役割を見据える。ベンチで自分の出番を待つ間も、あらゆる状況を想定して試合の状況を見極める。
ポジションにこだわりはあった。オリックス時代には主に遊撃手として出場。「ショートで勝負したい」という気持ちは強かった。大きな転機は2014年の中日へのトレード移籍。当時1軍でセカンドを守っていた荒木雅博2軍内野守備走塁コーチとサードの森野将彦さんのプレーを間近で見た。ショート以外のポジションの奥深さを知ると同時に、気持ちが吹っ切れた。
「求められているのは『便利屋』の役割。自分が活躍するというよりもチームに必要な選手にならないといけない」。誰もが幼い頃から一番を走ってきた選手が集まるプロの世界。主役ではなくても、名脇役を目指す。