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【社会】

文化庁に不服申し出 芸術祭不交付 愛知県「違法、不当」

 愛知県は二十四日、企画展「表現の不自由展・その後」を開催した国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」への補助金を不交付とした文化庁に対し、補助金適正化法に基づき不服を申し出た。文化庁は不交付理由を「県の申請手続きに不備があった」としたが、県は申し出書で「違法、不当な処分」と反論し、不服理由として七点を列挙した。

 県の八神秀之文化部長が同日午前、文化庁地域文化創生本部(京都市)を訪れ、宮田亮平文化庁長官宛ての申し出書を手渡した。同庁は「内容を確認中のためコメントは差し控える」としている。

 申し出書で、県は不交付決定を巡り「審査の対象とされていなかった事項を後付けで理由とした」と主張。さらに「具体的な事実が特定されていない」「理由に事実誤認がある」と指摘した。

 「調査、審査を尽くしていない」とも批判し「同様の理由に基づく不交付決定は存在せず、平等原則に反する」と訴えた。

 一部の展示を一時中止したことで補助金全額が不交付となった点について「裁量権の逸脱、乱用」と明記。「補助金行政への信頼を大きく損ない、甚大な萎縮効果をもたらす」とした。

 文化庁は九月二十六日、全額約七千八百万円の不交付を県に通知。芸術祭は今月十四日に閉幕した。

 大村秀章知事は裁判で争う意向を示しているが、補助金適正化法に基づく不服申し出の期限が迫っており、提訴前に手続きを進める方針を二十三日に表明した。

◆補助金カット 抗議の辞任 「常態化なら知的活動全般に悪影響」

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 「あいちトリエンナーレ2019」への文化庁の補助金不交付問題で、抗議の辞任をした元審査委員の野田邦弘・鳥取大特命教授=写真=が二十四日、日本記者クラブで会見し、「文化庁が不交付とした理由は全く納得がいかない。こうした補助金カットが常態化するなら、芸術だけでなく学術研究など知的活動全般に悪い影響が出てくる」と強く懸念した。

 野田教授は「補助金を得るために個人や自治体、企業などが政府に対して萎縮すれば、知的活動のレベルが低下し、国力も下がる」と説明。政治性や批判性を打ち出した海外の芸術祭の例を挙げて「現代アートは人間の本質を考える表現活動。議論を巻き起こすことがあるが、それが社会の活力になる」と説明した。

 さらに文化庁の宮田亮平長官について「アーティスト出身でもあり、電話攻撃やテロ予告があった段階で抗議声明を出すべきだったと思う」と語った。

 

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