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【東京】

16年度の児童虐待重大事件2件 危機感の共有されず 関係機関の連携不足

 都は二〇一六年度に都内で起きた重大な児童虐待事件のうち、都や区市町村の機関が相談などで関わった二件を検証し、改善策をまとめた報告書を公表した。関係機関の連携不足や、リスク認識の不十分さが子どもの死亡につながったと指摘。情報共有や支援対象の状況評価で改善点を挙げた。 (石原真樹)

 報告書は、社会的に影響の大きい事件の検証など、都として他の作業を優先することなどがあり、年度によって発表時期にばらつきがある。今回は一七年度の報告書を発表した。それなどによると、一件は、一六年十二月、二十代夫婦が子ども四人を置いて深夜に外出中、一歳の第四子が風呂でおぼれ、重度の障害が残った件。

 一一年に市の子ども家庭支援センター(子家セン)が、他のきょうだいの養育状況を見て虐待(ネグレクト)として受理。児童相談所も関わっていたが、養育環境が改善したとして一六年三月に指導を終了。

 家族は翌月転居し、転居先の子家センが情報提供を受けて「養育困難」と受理したが、支援が進まないまま事件に至った。

 改善策として、転居前にきょうだいが通っていた保育所は危機感を持っていたのに共有されなかったとして、危機感が最も高い機関の情報を重視することや、関係者が支援策などを話し合う要保護児童対策地域協議会を定期的に開くことなどを指摘した。

 もう一件は一七年三月、都外に住むうつ病の既往歴のある三十代の母親が、都内に子どもを連れて里帰り中、生後二カ月の長男の首を絞めて死亡させた件。母親が住んでいる市の保健機関は、里帰り先の保健機関に新生児の訪問を依頼した。市の保健機関は、母親から育児不安の訴えを受けていたが、虐待リスクが高いとまでは認識せず、里帰り先の保健機関も連絡が取れなかった。母親が全国児童相談所共通ダイヤル「189」に電話して「子どもをかわいいと思えず悲しい」などと訴えた五日後に事件が起きた。

 改善策として、精神的に不安定な妊婦は支援が必要な特定妊婦であると認識し、里帰り先の機関は「自分たちの管轄内に支援が必要な母子がいる」との意識を持ち、子育て支援サービスを柔軟に運用することなどを挙げた。

 報告書は、大学教授や小児科医らでつくる都児童福祉審議会検証部会が関係機関へ聞き取りするなどしてまとめた。

 

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