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古舘寛治 「もの申す」が支える民主主義

インタビュー 「個と全体」見つめ問い続けて

古舘寛治 俳優

 SNSなどで政治的な発信が注目されている俳優・古舘寛治さん。なぜ発信を? その根っこには今のジャーナリズムに対する不満もある。それを私たち記者、そして、ジャーナリズムを志す若い人たちはどう受けとめるべきか。話はジャーナリズムへの期待とこれから、「個と全体」という社会のありようにも及んだ。

――ジャーナリズムを志す若者に向けて、お話やメッセージをお聞かせください。政治的な発言や発信をなさっていますが、まずはその真意や、いつ、どういうきっかけだったのかを教えてください。

拡大古舘寛治さん
古舘 インターネットをちょろちょろいじるようになっていたころ、「アラブの春」があって、フェイスブックによって革命が起きたということが流れてきた。SNSでこんなことが起こるのか、これは新しい時代をよくしていくツールになるかもしれないと考えるようになった。ツイッター、フェイスブックを始めたら、海外のいろんな問題も入ってくるが、日本の問題もどんどん入ってきた。

 そうこうしているうちに、山口県の上関原発をめぐって警備員と住民がまさにフィジカルに争っているような映像などがツイッターで流れてきた。ある種の行政の暴力が行われているのに、全然メジャーなマスコミがやっていないと思って、「なんでニュースで扱わないんだ」とテレビ局にメールしたんです。返事は「ちゃんとこちらでバランスをとって報道はしてるんだ」という趣旨だった。

 そして、福島の原発事故があった。原発への政府の関わり方、情報の隠蔽というか、出さない具合というか、日本の政治が機能していないことが多くの人にばれた。それらが、いわゆる政治的な発言をするきっかけだったと思う。

――メディアに対する疑問や憤りがあったのですね。

古舘 福島のすぐあとのことはあまり覚えていないが、情報が錯綜する中で原発の危険性を訴え続けた京大の小出裕章さんなんかの発信を追いかけていた。僕は彼の主張が信じられた。「原発は大丈夫だ」というような御用学者らの話と聞き比べようにも、僕は素人だからどちらが正しいか知る由もない。でもチェルノブイリなどたくさんの情報を入れると、大体何を信じたらいいかわかってくる。それに、権力にはむかっても何の得もない学者の「とんでもないことが起きている」という見方の方が理屈として、人としての行動原理からしても正しいと判断した。

 メジャーなマスコミの報道も二の足を踏んでいるなという印象があった。朝日新聞の報道が問題になったこともありましたね。大きな報道を打ちながら、間違っていた。それによって、権力を批判する側が信頼を失うという打撃は大きかった。福島の報道に関しては、東京新聞がいいなと思っていた。組織が大きくなればなるほど、広告で商売をしているわけだから、どうしても発言が鈍るのは仕方ないシステムがあるのかなと疑うようになってしまった。

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筆者

古舘寛治

古舘寛治(ふるたち・かんじ) 俳優

大阪府生まれ。ニューヨークで演技を学び、帰国後、舞台をベースに数々の映画やテレビドラマ、CMに出演し、名バイプレイヤーとして活躍。2016 年には舞台 「高き彼物」で演出を手掛けた。主な出演作に、大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」、映画「淵に立つ」(深田晃司監督)、「キツツキと雨」(沖田修一監督)、「マイ・バック・ページ」(山下敦弘監督)などがある。