佐藤金属工業のプレス機械の修理に当たる作業員ら=19日午後、足利市迫間町

 台風19号の影響でSUBARU(スバル)の自動車生産が停止する事態に陥っている。足利市の部品製造企業の生産設備被災などが一因。本県には輸送機械などのサプライチェーン(部品の調達・供給網)が広がっており、大規模化する自然災害に対する事業継続計画(BCP)の重要性が改めて浮き彫りになった。

 スバルは16日午後3時すぎから、国内で完成車を唯一生産する群馬県太田市の本工場、矢島工場、エンジン・トランスミッションを生産する同県大泉町の大泉工場(一部工程除く)の操業を停止した。一部取引先の浸水被害で部品供給に支障が出る見込みになったためだ。1日平均約2500台を生産しており、操業再開のめどは25日だという。

 同社広報部は「被災した取引先は2次を含めると相当数あるが、部品の在庫が少なく、生産代替えが利かない取引先が数社あり、生産を停止した。支援に全力を挙げている」という。

 県内では工業団地全体が冠水した足利市の毛野東部工業団地でスバルのサプライチェーンを担う佐藤金属工業(伊藤弘之(いとうひろゆき)社長)が操業できなくなった。二つの工場で金属プレスの車体構造品を生産するが、400トンの大型を含めプレス機械30基、溶接ロボット27基などの生産ラインが高さ約70センチまで濁水に漬かり、電気系統を中心に被害を受けた。

 このため、スバルは16日から工場設備の保全担当社員計190人を3交代態勢で応援に送り、昼夜24時間の復旧作業に当たる。伊藤社長は「自社(従業員120人)や業者だけでは早急な復旧は困難。操業再開は設備を生産ラインとして全て復旧させないとできない。メーカーからの応援はありがたい」と感謝した。

 同社工場は周囲の水田から2メートル近く高いがそれでも冠水した。「異常気象が異常でなくなりつつある。どうすればこうした被害が防げるのか、早急に考えないといけない」と話している。