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【社会】

<税を追う>人件費削減などで4400万円捻出 総研大、学長らは報酬増

 若手研究者を育成する国立大学法人「総合研究大学院大学」(神奈川県葉山町)の学長らによるハワイ視察の訪問先の七割が観光地や土産店だった問題で、約二百万円の視察費は、財政悪化から職員人件費削減などで予算を見直す中で、新規に計上されていたことが分かった。 (中沢誠)

 人件費削減が進む一方、長谷川真理子学長と副学長、理事の執行部三人の報酬や賞与は増額されていたことも分かった。総研大関係者によると、ハワイ視察直後の学内の会議では、職員人件費を削って視察に行った執行部の対応に異論が出たという。

 長谷川氏は二〇一七年度に学長に就任。同年度の総研大の当初予算は前執行部が編成し、ハワイ視察費は計上されていなかった。総研大によると、一七年十一月に国立天文台との間でハワイ観測所への視察話が持ち上がったという。

 本紙が入手した総研大の内部資料によると、新執行部は年度途中に当初予算の見直しに着手。一八年一月の組み直しでは、人件費削減などで捻出した四千四百万円分の一部を、ハワイ視察費に再分配した。

 この際の組み直し予算の半分近い二千万円は、教職員の人件費削減で捻出された。多くは非常勤職員の勤務を、フルタイムから一日六時間の短時間に切り替えたことによるものだった。

 非常勤職員の人件費は一七年度末までに、前年度比17・5%減に当たる千二百七十万円をカット。一八年度はさらに七百四十万円が削られた。労働条件の悪化で退職者も相次ぎ、総研大によると、非常勤職員は一七年度だけで二十六人中十八人が退職した。人件費削減について、総研大の前田輝伸財務課長は「このままでいくと人件費の増加で、事業経費の逼迫(ひっぱく)が予想される」と説明。近年、国から国立大学の運営費交付金は減っており、収入の大半を交付金に依存する総研大も一六年度までの十年間で三億円の減収となっていた。

 学長ら執行部三人の報酬・賞与は一七年度から一八年度にかけ、長谷川学長が四十四万円増の千七百五十九万円、永田敬副学長と中村幸男理事も七十万円前後の上積みとなった。総研大は、就任一年で昇給する大学の報酬規定や人事院勧告を増額の理由としている。

◆戦略的な予算措置

<総研大の長谷川真理子学長のコメント> 学内予算編成については過去の予算編成を精査するとともに、各部局の役割分担、人員体制、業務の効率化などを検討し、年度途中での予算編成の見直しを断行することとした。その中で人件費削減の方針を打ち出し、戦略的、重点的な予算措置を行った。これらの大学業務を少ない執行部体制三人で実施することは、非常に大変なことであった。この状況に鑑み、現理事の報酬の昇給を決断した。

<総研大のハワイ視察> 国立天文台のハワイ観測所訪問を目的に2018年3月2~6日、総研大から長谷川学長ら7人が参加。世界遺産のキラウエア火山や「この木なんの木」のCMで知られる公園などを訪れた。視察行程の調整では、長谷川学長が「綺麗(きれい)なところが見たい」などと天文台に注文を付けていた。

(東京新聞)

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