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 昨年度、小中学校を30日以上欠席した児童・生徒の数は16万4千人を超え、98年度以降で最多となった。中学の場合、40人の学級に1人はいる計算だ。各校からの報告を文部科学省がまとめて、先日公表した。

 増えたのは「無理に登校する必要はない」との考えが浸透してきた結果でもあろう。2年前に教育機会確保法が施行され、民間のフリースクールなど、子どもの事情に応じた多様な学びの場を用意することの大切さが確認された。自治体も6割が公立の受け皿を設けている。

 一方で、本当は学校に行きたいのに行けない子がいるのも事実だ。子どもを遠ざけている原因を探り、取り除く。国や教育委員会、各学校現場にはその責務がある。それは学校を良くする糸口にもなるはずだ。

 不登校の理由(複数回答)は家庭の状況38%、いじめを除く友人関係28%、学業不振22%、教職員との関係、学校のきまり各3%などとなっている。

 少子化による学校の小規模化に悩む地域は多く、子どもが日常的に接する友だちや先生が固定化する傾向にある。そこでうまく人間関係を築けなかった子どもにとって、学校は息が詰まる場所になってしまう。

 学級、学年をこえた活動や交流行事を増やす。その学年を担当する全ての教員が、全ての生徒に目配りする「全員担任制」を試みる。そんな試みを重ねて、風通しのいい学校をつくることが求められる。

 解せないのは、同じ調査で「いじめ」が小中あわせて52万件を超え、やはり過去最多となったのに、不登校の理由では1%未満とされたことだ。学校側の認識が間違っている可能性はないか。子どもの側へのアプローチも定期的におこない、実態に迫る必要がある。

 「学業不振22%」という数字も、学校の存在意義にかかわる深刻な問題だ。休むと授業についていけなくなる。疎外感を抱き、さらに足が遠のく。この悪循環を断つには、欠席期間中も独自に勉強を続けられるようにする工夫が欠かせない。

 たとえば、校長の裁量でIT教材を使った自宅学習を出席扱いにできる制度があるが、昨年度の利用者は小中あわせて115人にとどまった。学校によって対応に差があるとの指摘もある。文科省は改めて趣旨の周知を図ってほしい。

 背景に貧困問題が隠れていることも多い。勉強の遅れを取り戻すにせよ、校外に学びの場を探すにせよ、家庭に経済的な余裕がないとなかなか思うようにならない。民間の無償の学習支援活動に助成するなど、格差を広げない施策の充実が必要だ。

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