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【暮らし】

<縁のカタチ 多様な性>同性婚(上) 婚姻は男女だけなのか

鷹見さんと大野さんが結んだ結婚契約などの公正証書。3通合わせて40ページにも及ぶ=愛知県内で(一部画像処理)

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 「互いに人生のパートナーとして助け合い、支えあって生きていくことを相互に誓約する」「一方が先に死亡した場合、死亡した者が死亡時に有する一切の財産を、死亡と同時に他方に贈与する」…。

 愛知県に同居するともに三十代の男性同性愛者で、カップルの会社員鷹見彰一さん(仮名)と公務員大野利政さん(同)が二〇一七年に作った「結婚契約等公正証書」。十五ページにわたる書面には重婚の禁止や同居義務、財産の共有など二人の関係を示す事柄が並ぶ。

 病気や加齢などで判断能力が衰えた際、代わりに意思決定する「任意後見人」を互いに委任する証書もそれぞれ作成。三通の証書で結んだ内容は、四十ページ九十三項目に上る。

 公正証書は法務大臣に任命された公証人が作成する公文書。高い信用力があり、遺言や土地建物の賃借、離婚時の取り決めといった重要事項の権利や義務、事実、契約などを証明する。

 作成を依頼した弁護士代も含め費用は約十二万円。鷹見さんは「男女なら、無料の婚姻届を一枚役所に出せばいい。男性同士でも、限りなく男女の婚姻に近づけたい一心で作った」。

 二人は一六年九月に知り合い、鷹見さんは大野さんのおおらかな性格に、大野さんは鷹見さんの明るさに引かれた。ともに「すぐ“結婚”を意識した」といい、翌年五月に大野さんがプロポーズ。二人で分譲マンションを三十五年ローンで購入し、昨年四月から3LDKの新居で暮らす。

 財布は鷹見さんが握り、老後に備えて三千五百万円を貯金するのが目標。炊事洗濯などの家事は鷹見さんが中心に担う。暮らしは男女の夫婦と変わらない。

 だが、日本で同性婚は認められておらず、二人は法律上は「赤の他人」だ。憲法二四条一項はすべての人に「婚姻の自由」を認める一方、「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立」と規定。「両性」は男性と女性という解釈に基づき、民法や戸籍法などは男女の異性婚が前提とされている。

 このため、マンションのローンを組むときも共同名義にできず、大野さんだけの名義に。大野さんが亡くなった場合、遺言などがなければ、鷹見さんは相続できず、住居がなくなるおそれも。相続できても、法律上の配偶者は一定額まで非課税だが、他人への相続は相続税が二割増しになる。

 また、鷹見さんが最も心配したのは、大野さんが事故や急病で倒れた際に、自分に連絡が来ない可能性があることだ。分かっても、病院から家族としてみなされず、付き添いや説明を断られるおそれもある。

 結婚契約などの公正証書は、それらを補完する目的もある。「手続きが終わり、公証人に『おめでとうございます』と言ってもらい、結婚を実感した」と鷹見さん。今夏、鷹見さんの生命保険の受取人を母親から大野さんに変える際、関係を証明する書類としてコピーを提示し、認められた。だが、結婚契約の公正証書には法的拘束力はなく、遺産相続などでどの程度効力があるかは未知数だ。

 「同性というだけで男女に認められている権利がないのは不平等」と大野さん。二人は「同性婚ができないのは婚姻の自由と法の下の平等を定めた憲法に反する」として二月、名古屋地裁に提訴した。

     ◇      

 同性婚ができないことの憲法上の是非を初めて問う訴訟。札幌、東京、大阪とともに一斉提訴した男性カップルの姿を通し、「結婚」の意味を考える。

 

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