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【社会】

呼吸器事件「無罪確実」 元看護助手弁護団が会見

 滋賀県東近江市の湖東記念病院で二〇〇三年、入院患者の男性=当時(72)=の人工呼吸器のチューブを外して殺害したとして殺人罪で懲役十二年が確定し、再審開始が決まった「呼吸器事件」で、元看護助手西山美香さん(39)=同県彦根市=と弁護団が二十三日に大津市内で記者会見し、「無罪が確実な状況になった」と表明した。検察側がすでに実質的に有罪立証を断念する旨の意向を弁護団に示しており、即日結審で来年三月末までに判決を受ける見通し。

 弁護団は記者会見で、検察側から「再審公判の主張等について」と題する十八日付の書面を受け取ったと説明。書面で検察側は、新たな有罪立証をしないことのほか、殺害に関する西山さんの自白調書を証拠として採用しないよう弁護側が求めている点については裁判所に判断を一任し、排除決定がなされても異議を申し立てないとしている。公判は来年三月末までの一回結審による早期終結を求めるとした。

 書面を受けて弁護団は二十一日、一回結審に同意し、年度内の判決を求める旨の意見書を裁判所に提出した。

 弁護団長の井戸謙一弁護士は会見で、検察側は証人尋問は不要であるとしていることなどから「事実上、美香さんの無罪は確実な状況になった」と説明した。

 明るい表情で会見場に現れた西山さんは「早く終わってもらえれば、両親は安心して普通の老後生活が送れる」と語った一方で、「裁判所がどうしてくれるか不安な面はあります」と述べた。

 再審開始を認めた一七年十二月の大阪高裁決定は、弁護側の主張に基づき、男性は自然死した可能性があるとしており、ことし三月に最高裁が決定を確定させていた。

 再審公判に向けてことし四月に始まった裁判所、弁護団、検察側による三者協議で、検察側は当初、有罪立証をする方針を示していたが、九月に一転して、法医学者らの証人尋問の申請を撤回し、新たな有罪立証は行わない方針を示していた。

<滋賀の呼吸器外し事件> 滋賀県東近江市の湖東記念病院で2003年5月22日、入院中の男性患者=当時(72)=が死亡しているのを看護師が発見。県警は04年7月、人工呼吸器を外して殺害したと自白した看護助手西山美香さんを殺人容疑で逮捕した。西山さんは公判では無罪を主張したが、懲役12年の判決が確定した。しかし第2次再審請求審で大阪高裁は、新証拠の医師の意見書などを基に不整脈による自然死の可能性や、虚偽の自白の疑いを指摘し、再審開始を決定。最高裁で確定した。

 

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