第2話 爆速のレベルアップ
俺が冒険者活動の拠点にしようと思っている街、ジェーセンに向かって1時間ほど歩いた頃。
「そろそろ人通りも少なくなったし、いいかな」
俺は髪を染めることにした。
別に、こんな街と街の中間地点なんかにダンジョンがあるって訳じゃあない。
ただ、黒髪のステータスと銀髪のステータス、どちらで走るとより早く、疲れずに街につくかは言うまでもないことだ。
臭いキノコ周辺の水たまりの水(長いので以下1剤と呼ぶ)とスライムの毒液(以下2剤と呼ぶ)を収納から取り出す。
2剤はそのまま使うと髪や頭皮へのダメージがでかいので、ちょっと希釈する。
そして、1剤と2剤を混ぜて髪に塗るんだ。
今回は前の反省を生かし、倒木に寝転んで染める液が頭皮につかないよう丁寧に塗ることにした。
待つこと30分。水で液を洗い流してから、紫キャベツの煮汁で再度洗い髪を仕上げた。
「ステータスオープン」
上手くいったようだ。
今回は頭皮も痛くない。完璧だ。
俺は透明化の魔法を使い、人目につかないようにした。
この魔法は銀髪族にしか使えない魔法で、MPを消費しない。
同じく銀髪族だけが使える「完全気配探知」や高位の魔物の探知能力相手には通用しないけど、一般の通行人とかからは絶対に見えないのでお手頃な魔法だ。
「うわ、速え」
このステータスだと、ジョギング感覚で駿馬の全速力くらいのスピードは出せる。
あと30分くらいでジェーセンの街に着きそうだな。
☆ ☆ ☆
ジェーセンの街に入ると、俺は早速ダンジョンに入ることにした。
冒険者ギルド?
そんなの後回しに決まっているだろう。
そもそも、駆け出しの冒険者がいきなり50層とかの魔物を持ち込んだら確実に騒ぎになる。
その後は、不正を疑われてギルドから厳重注意を受けるなり国の偉いひとに尋問されるなり、何かしらの酷い目にあうんじゃないかな。
そういう面倒ごとを避けるには、冒険者登録をする前にゲストの立場で荒稼ぎするのが最良の選択だろう。
冒険者を守るため、冒険者以外が魔物を売ると売値が通常の1/3になるのが曲者だけど……背に腹は変えられないってもんだ。
1層から49層までは、ただひたすらにダンジョン内を駆け抜けていく。
黒髪族の狩場クラスの魔物で「透明化」を見破れるやつはいないし、仮に見破られたとてこちとら「AGL100」だ。
その動きについて来れる敵なんて、まず出現しない。
しばらくすると、50層に着いた。ここが、熟練の黒髪冒険者が主な狩場にしてる所だ。
ステータス上は銀髪族なのに、51層に行かないのには理由がある。
51層の魔物は、黒髪族には絶対に太刀打ちできないことからついた「超えられない壁」とかいう俗称があるくらいには50層の魔物より強いクセして、手に入る経験値は50層の魔物と同じなのだ。
この事情から、黒髪族保護のため「ダンジョンマスター出現時を除き、Lv.2以上の銀髪族の50層での狩は厳禁」というルールがあるらしいけど……僕は黒髪族だし、しばらくお世話になっていいよね。
おっと、考え事をしてると魔物が現れた。確かこの階層に出てくるのは……「H6N6型のグリズリー」だったっけ。
「聖龍」
MPを100消費して、魔法を放った。H6N6型のグリズリーは、一瞬で消滅してドロップ品を落とした。
おそらく、今回のはかなりのオーバーキルだ。
Sランク冒険者の平均の1.5倍ほどのPWRを有し、更には黒髪族に使えるどの魔法より魔力効率の高い「聖龍」を放つにも関わらず、MPを100も消費する道理はないのだ。
今後は消費MPを2づつ下げていって、境界をさぐっていくとしよう。
☆ ☆ ☆
結局、今日は5体だけ50層で狩って早々にダンジョンを引き上げた。
消費MP92とかだと、まだまだ余裕で狩れたね。
MPはあと400近く残ってるけど、まあ冒険者初日なんて過剰に安全に配慮して早く撤退するもんなんじゃないかな。
収納から回復ポーションを取り出し、頭にバシャバシャとかける。
「ステータスオープン」
うん、黒髪族のステータスに戻っ……
……
……
……
E X P 。
あちゃー。
確かに、50層の魔物を討伐した時の取得経験値は2500だ。
そうなんだけど……ね。黒髪族のステータスに戻り、必要経験値も黒髪族基準に戻ってることでEXP周りがどえらいことになってしまってる。
「レベルアップ」
「レベルアップ」
「レベルアップ」
普通、Lv1〜10の間はレベル1アップに1か月くらいかかる。
それを、俺は今日一日でレベルを3も上げてしまった。
もしかして、銀髪と黒髪を行ったり来たりできるのって、純粋な銀髪より素晴らしいことなんじゃないのか?
俺が度重なる実験の末発見した事実は、思いの外とんでもないことだったのかもしれない……
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