ネイア・バラハの聖地巡礼!   作:セパさん

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・この話は後日談であり、蛇足です。ネイア・バラハの聖地巡礼!本編を前提とした話しとなっておりますので、ご了承下さい。

・IF設定が更に独自の進化を遂げた世界を舞台にお送りしております。

・キャラ崩壊注意です。

・蛇足の蛇足という最早意味の解らないものになっております。

 以上を踏まえた上でお読み下さい。


【蛇足】閑話 月の女神

 蝋燭の薄灯りが照らす室内で、5人の男と1人の女、6人が6人とも病的に瘦せ痩けている。全員が直立不動で、倚子に堂々鎮座する、純白のドレスを纏い、漆黒の翼を生やした絶世の美女、魔導国宰相アルベドの視線を浴び、恐怖で逃げ出したい衝動を必死に押さえ込んでいた。

 

「途中経過ですが、ご報告を失礼致します。以前ご依頼を受けました、食糧の取引についてですが、順調に推移しております。」

 

「順調という根拠は何かしら?お前達は考えを述べるのでなく、事実をありのままこのわたしに伝えれば良いと、何度言えば覚えるの。」

 

 アルベドの鋭い声に、報告をした男はだくだくと汗を流しながら、全身を振るわせる。

 

「も!申し訳御座いません!魔導国からお借りしたアンデッドを用いてリ・エスティーゼ王国に足りずにいた労働力をまかない、農村での収穫に人員を誘導。収穫した作物は馬鹿貴族たちから宝石と交換し、多くの食糧の確保に成功しております!」

 

「そう……。まぁ定期報告通りね。……ところでお前達、何かわたしに隠していることはないかしら?」

 

 全員の肌がゾワッと粟立つ、勿論重要事項で隠し事なんて一切ない。あるとすればあの馬鹿(フィリップ)が、目の前のバケモノと結婚したいだのという妄言を宣っている事くらいだ。

 

 だがそんなことを報告すれば、機嫌を損ねたアルベド様からまた死んだ方がマシと思える地獄を味わう羽目になる。フィリップのことは話さない方が無難だろうと全員が暗黙の内に判断するが、その間にも、全身から滲んだ汗が雨のように床へ降り注いでいた。

 

「いえ、偉大なる魔導王陛下へ我々が隠し立てを行うなど、有り得ない話に御座います!」

 

「………。だったらいいわ。わたしは少し考え事をしたいから、全員部屋を出て行ってくれるかしら。」

 

 6人は同時に畏まりましたと声を挙げ、逃げるように部屋から出て行った。豪華な倚子に腰掛ける妖艶な美女は、憂い気なため息を吐いた。

 

「やっぱり見透かされたそぶりさえ無いわね。」

 

 アルベドの清楚ながらも何処か妖艶な動き、座り方や仕草、口調の強さやテンポ、僅かな癖に至るまでを一挙手一投足まで模倣したパンドラズ・アクターは、演技をやめ、歌劇女優のように仰々しい動きを始める。

 

「いやはや、やはり彼女が特別だったのでしょうか。あれは驚きました。まさか、至高なる41人の御方々に創造されて居ないにも関わらず、わたくしの千変万化を見破る者がこの世に存在するとは……。」

 

 パンドラズ・アクターはあの事件の後、半月ほど影武者修行-もちろんネイア・バラハに見破られたためという理由は秘密-として、アインズ様やアルベド、デミウルゴスの代理を次々行ったが、人間界や亜人界で見破られることは一度も無かった。

 

 それは人間では知者であるバハルス帝国の皇帝や、自分やデミウルゴス、アルベドに匹敵する頭脳を持つ人間種の形をした異形種、リ・エスティーゼ王国の黄金姫も、デミウルゴスに扮したパンドラを見抜けなかった。

 

 ナザリック内でアインズ様の影武者をするのは容易ではなく、アルベドや階層守護者、セバスには速攻、プレアデス達や、内政や機密を司るエルダーリッチなどには、残念ながら看破された。

 

 だが、それ以外は不自然を覚えられつつも、口八丁で騙し通せた上、NPCでは無いナザリックの面々では忠獣ハムスケでも気がつかなかった。影武者(アクター)として、汚名は返上出来ただろう。

 

「しかし、常日頃アインズ様の横にいる一般メイドにすら見破られなかった。では、彼女は一体何者なのでしょう?そういえばデミウルゴスさんが、面白い考察をしておりましたね。」

 

 曰く、ネイア・バラハは【死後アインズ様の御手によって再構成された存在なのかもしれない】と……

 

「アインズ様の御手により…………?それにわたくしを見破る能力!これは!これは!これは!」

 

 アインズ様の御手によって創造されたる存在。これはパンドラズ・アクターのアイデンティティであり、他の至高の41人たる御方々には不敬ながらも、なによりの自慢である。頭の中にこれまでの考えを巡らせ……

 

 

「まさか!彼女は、妹!!!」

 

 

 ……パンドラズ・アクターは、何故そうなったのか解らない結論に辿り着いた。

 

「そう!わたくしが全知全能神に創造されたるアポロンだとすれば、その月光の如く煌めく弓!アルティメット・シューティングスター・スーパーを携えた彼女は正しく妹の月の女神(ディアーナ)!!純潔を司り、アインズ様を唾棄する忌まわしき神官共へ勇ましく立ち向かうその可憐な姿も正しく!」

 

 アルベドの姿のまま、アルベドが見れば張り倒されそうな様々なポージングを披露し1人舞い上がっている。だが誰も止める者はおらず、パンドラズ・アクターの舞台は続く。

 

「しかし!!わたくしは偉大なる御方々の残したる秘宝を護る宝物殿!その領域守護者!そして日の当たる場所へ真の姿を見せることの無い影たる存在……。対して彼女は伝道師として、多くの者を真実へ導く地上に顕現する月光!なんと対称的な2人!正に悲劇!…………そう、彼女は一生、わたくしという兄の存在を知らぬまま、その生涯を終えるのでしょう。ああ!なんということ!」

 

 倚子から崩れ落ち、項垂れる美女の姿はまるで悲劇のヒロインだ。……外で待機している八本指の幹部6人が、僅かに聞こえる楽しげな歌声に戦慄していることなど、パンドラズ・アクターにとってはひどくどうでもいいことだった。

 

 

 

 ●

 

 

 

「んで、何だか月に2、3回手紙と一緒にすごい量の花束がわたし宛に届くんですよね。」

 

「…………〝月の女神よ、見守っている、会えないわたしを許してくれ〟。ストーカー?」

 

「不思議なことに、何処から送られてきたかも解らないみたいなんです。」

 

「…………ネイアのストーカー。レベルが高い。」

 

「シズ先輩!それどういう意味ですか!」

 

「…………非公認ファンクラブの非公認ファンクラブ。」

 

「今わざと小声で言いましたよね!?絶対ギリギリ聞こえない音量で言いましたよね!?」

 

「…………先輩からアドバイス。」

 

「なんですか。」

 

「…………ファンは大事に。」

 

「だから何の話ですか!?」


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