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【ラグビー】[ジョセフジャパンの旅路1]「ONE TEAM」究極の信頼関係で結ばれた選手とジョセフHC きっかけを作ったのは藤井強化委員長2019年10月22日 19時58分
南アフリカに完敗した夜。今年だけで200日以上も一緒に過ごした仲間に思いをはせ、日本代表の誰もが泣いていた。「ONE TEAM」を掲げ、家族のような絆で結ばれた選手たち。「このメンバーでプレーするのが最後だと思うと寂しい」。高校球児のような心境を吐露した。 ジョセフ・ヘッドコーチ(HC)の就任当初は、これほど信頼関係で結ばれた、情熱的なチームではなかった。むしろ、選手は戸惑っていた。 2016年秋。元ニュージーランド代表の新指揮官はまず、エディー・ジョーンズ前HC(現イングランド監督)の「亡霊」と戦った。15年大会を率いた前指揮官は、服装にまで口を出す徹底管理での手法で南アフリカをやっつけた。一部の選手はその成功体験に縛られていた。 ジョセフHCは違った。「試合は選手がするもの。刻一刻と変わる状況への対応力、判断力がないと強豪に勝てない」。チームをさらに引き上げるため「自主性」を求めた。 戦術も異なった。パスを回すジョーンズ流に対し、ジョセフ流はキックを多用した。結果の出ない状況が続き、選手の不満は沸点に近づいていた。今でこそ列島の人気を集めるリーチ主将も、HCとの面談に遅刻し、逆鱗(げきりん)に触れたことも。 この状況を打開したのは、当時日本協会の肩書がなく、今年8月に現職に就いた藤井強化委員長だった。ジョセフHCが現役時代にサニックスでともにプレーした20年来の盟友。選手の不満を聞き、一つ一つ誤解を解いていった。 昨年9月の和歌山合宿はミーティングに時間を費やした。「あそこで雰囲気が、がらりと変わった」と藤井強化委員長。同11月の英国遠征で、ジョーンズ監督率いるイングランドに敗れはしたものの、前半をリードして折り返した。ようやく選手は手応えを手に入れた。指揮官の求心力の高まりに合わせ、チーム力もぐんぐんと上がった。 「このチームはジェイミー(ジョセフHC)のおかげ」とリーチ主将。1次リーグ2試合でゲーム主将を外されたことにも、勝利のためと納得していた。非情采配に見えた主将外しも、究極の信頼関係の上に成り立っていた。 ※自国で行われているラグビーW杯で史上初の8強入りを果たした日本代表。その躍進の”秘密”を3回に分けてお伝えする。
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