登録日:2019/10/23 (水曜日) 10:45:03
更新日:2019/10/23 Wed 10:47:13NEW!
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異世界ミリタリーとは、
1.我々の地球とは異なった地球を舞台にしたミリタリー物語
2.現実の軍隊が、典型的な中世ファンタジー風の異世界に転移する
という2つの異なったジャンルを指す言葉である。本項では主に前者の記述が主で、後者は補助的に述べるに留める。
【1.の特徴】
●概要
こちらは(少なくとも本邦では)1980年代頃から見られるようになったジャンルだが、そもそもの定義が曖昧な所があり、内容も歴史改変SF(オルタナティヴ・ヒストリー)や
架想戦記もの、
スチームパンク、
レトロフューチャーの要素を含み、どれが元祖なのかをハッキリ決めるのは難しい。ただ、初期の作品にして代表作は
『王立宇宙軍 オネアミスの翼』と見て間違いは無いと思われる。
●基本的にはヨーロッパ近辺をモチーフにした世界観をしている
この点は「ナーロッパ」と揶揄される事もある中世ファンタジー風異世界と共通しているが、こちらの理由は近代に起きた二度の大戦がいずれも欧州が主な戦場だった事が大きいだろう。異世界のモチーフになる戦史、兵器、人物、歴史、政治や文化、地理、植生等にまつわるエピソードも当然欧州の方が多くなるし。異世界ミリタリーとジャンル的に近いスチームパンクも、「ネオ・ヴィクトリアン」と称される事がある等欧州文化の影響があった。数少ない例外の『王立宇宙軍』は中央アジアを思わせるエスニック風の世界観であったが、パイロットフィルム版の頃はまだヨーロッパを思わせるような作風であったし、完成版でも一部の登場人物の名前に欧州風の名残がある。
その為、ベトナム戦争のジャングルの緑の地獄や、湾岸戦争以降の果てしなく続く中東の砂漠を思わせるような異世界が舞台になる事はほぼ無い。海外に目を向ければ、異世界ではなく地球外の惑星を舞台にしたミリタリーSFには幾つか見られる。
●必ずしも魔法要素を出す必要はない
中世ファンタジー風異世界では魔法要素はほぼ必須であるが、異世界ミリタリーものにおいては魔法が存在しない設定の作品が多い。
無論、魔法要素がある作品も無いわけではないが、大抵は補助的なものに過ぎない。あまり魔法要素を全面に出しすぎるとパワーバランスがおかしな事になるし、「魔法を使わないと倒せない敵」を出して解決する場合もある。
●モンスター、クリーチャー的な異生物が出てこない
中世ファンタジー風異世界では巨体で空を飛び火を噴く
ドラゴンや
ペガサス、
グリフォン等々の各種
キメラ、雑魚
兼エロ役の
スライム等の魔法生物、
エルフや
ドワーフ、
ミスター竿役のオークや
ゴブリン等の亜人種はお馴染みの存在であるが、異世界ミリタリーものでは基本的に出てこない。これは恐らく、世界観的に違和感がある上、どちらか一方にパワーバランスが片寄りがちになってしまうからだろう。出すとしても地球の生物とはかけ離れたエイリアン的、無機質的な存在になる事が多い。
大抵はマクガフィン的な都合の良い敵役、良くてマスコット、最悪
書き割り同然の背景役である。
亜人は輪をかけて稀な上、出たとしても見た目は普通の人間と殆ど変わりない事が多い。
え?悪役一号にはオークが乗ってたって?確かに女の子攫ってたけど、登場人物を豚に擬獣化して描くのはパヤオ監督特有の表現だから… ●軍隊を描く上でのアレコレの問題を避けられる
異世界という事で軍隊も当然架空のものである為、史実を扱うのであれば避けられない考証を避けられる利点がある。現実が舞台になると、中には変態レベルの考証がなされている事もあるので…。他にも、実在しない軍隊を舞台にしたり、時代的におかしいオーバーテクノロジーや、ミリタリーものによくある架空の国家等も違和感無く出せる。その為か、『大砲とスタンプ』の作者、速水螺旋人氏は「空想は楽」と語っていた。
また、政治的なイデオロギー問題もある程度は避けられる利点がある。後述になるが、実在の
軍隊を扱った場合、面倒な事になる場合があるので…
ただし、あまりに無制限すぎると荒唐無稽になってリアリティが無くなってしまうので、そこらへんはさじ加減であろう。
●必ずしも戦時中である必要は無い
異世界ミリタリーものは「ミリタリー」と言うぐらいだから華々しい戦争描写のあるものだという印象があると思われるが、必ずしもそうではなく終戦直後や数十年後の冷戦時代から物語が始まったり、戦時中であっても後方部隊の話だったり、変わった所だとそもそも国家間の大規模戦争自体が無い作品もある。
ただし、戦闘シーンが全くない作品も無い。流石に地味すぎるし多少はカタルシスも欲しいのだろう。
●真面目に考えると実はツッコミ所が多い
「異世界である」と言うの事を端的に表す為に少し地形を変えてる程度なら問題は少ないが、大陸の配置をまるごと変えてしまっている場合はそうはいかなくなってくる。欧州風文明は異世界ミリタリーものでもお馴染みであるが、生物学者ジャレド・ダイヤモンド氏が代表作『銃・病原菌・鉄』で語った所によると、ヨーロッパの人間が世界を支配できたのは
地理的な要因が非常に大きく、地形が変わってしまえばどの文明が支配的になるか解らないのだ。
更に言えば、大陸の形が違ってしまえば
そもそも人類が進化しうるかどうかすら危うくなってしまう。『ワンダフル・ライフ』の著者スティーブン・ジェイ・グールド氏は、同書の中で「生命のテープを巻き戻し、条件を変えて(それこそ、大陸の形状を)再生すれば世界はまるで異なったものになる」と述べていた。
一部で
収斂進化の普遍性を強調する意見もあるものの、
生物系三大奇書で知られるドゥーガル・ディクソン氏が語っていたようにヒト型知的生命体を進化の頂点とする必要性はどこにもなく、現に約40億年に及ぶ生命進化の歴史でヒト型生物は我々を含むホモ属だけである。ディクソン氏が著者『新恐竜』で描いたように、たとえ大陸の配置が我々の地球と全く同一だとしても、歴史が違えば文明を持つような知的生命体は現れず、未だに恐竜が闊歩していたのかもしれないのだ。そんな異世界に転生しても『ジュラシック・パーク』めいたサバイバルものにしかならない。
ジャンルが変わってしまった これは、神だの悪魔だのが出てきてある種荒唐無稽であるが故に説明を省ける中世ファンタジー風異世界には無い、異世界ミリタリーもの特有の欠点であろう。
●異世界を作り込むと時間がものすごくかかる
『王立宇宙軍』では、歴史、文化、宗教、民族、風俗、道具、料理、単位、文字、大陸の配置、
太陽系、歴法まで架空のものを設定した結果、
3年かかった。また、無理に現実と変えようとして却って使い辛くなっているデザインも少なくない。我々と殆ど同じ人類が考える以上ガジェットにも
収斂進化は起こりうるし、あまりに異質なデザインにしすぎると
異星人が作ったかのように見えてしまったり、観客がそれと認識できなくなってしまう可能性がある。同作品で、宇宙旅行協会の老人達とカロックがロケットに搭載するエンジンの是非で言い争うシーンで、グノォム博士に何時までにできるかと聞かれたカロックが「ポゥの4つめ!」と答えるシーンがあるが、コレを
「十(とお)の4つめ=40日」だと勘違いする観客が出てしまう自体になってしまった。あまりこだわりすぎても自己満足になりかねないという事例であろう。
他の異世界ミリタリー作品だと、
金も時間も拘りも足りないから大抵のものは現実世界のコピーで済ませている場合が多いし、架空の単位系もあまり出てこない。
言語も実在の文字をそのまま使ってるか多少装飾した程度で、登場人物の名前もヨーロッパの言語(英語、ドイツ語、ロシア語など)をそのまま使ってる事が殆ど。言語学的に綿密な架空言語を設定してもごく一部のハードSFやハイ・ファンタジー好きしか喜ばないだろうし、単純に覚えにくいのだ…
●異世界への転生・転移要素は少ない
中世ファンタジー風異世界では転生(転移)があってこそのものであり、なろう用語で言う「現地人もの」はあまり多くないが、異世界ミリタリーものでは現地人ものの方が主流である。
転生や転移の要素がある作品も無い訳ではないが、割合で言うと少数派である。これは、中世ファンタジー風と比べていろんな意味で我々のいる現代社会と近い世界設定なので説明役となる現代人があまり必要とされないし、先行するジャンルであるスチームパンクやレトロフューチャーでも転生者が出てくるような作品は稀であった辺りが要因だと思われる。
最も、先述のように異世界なのに地球に似たものが出てしまう場合
「実は転生者だったんだよ!」というようなジョークが語られる事もある。
また、「鉄火場なんて知らない一般的サラリマンが戦争やってる世界に転生!」という内容は、見ようによっては『
BLACK LAGOON』に似ていると言えるかもしれない。
●代表的な作品
『
天空の城ラピュタ』『
魔女の宅急便』『
紅の豚』『宮崎駿の雑想ノート』等の宮崎駿氏の諸作品は、異世界ミリタリーものの初期の例と見られる。
『魔女宅』と『紅の豚』はどちらかというと歴史改変(IF)ものの要素が強いが、『雑想ノート』の一編「多砲塔の出番」には20世紀欧州風の架空の国家や兵器が登場しており、現在の異世界ミリタリーものに近い要素が見られる。
お馴染みラピュタのロボット兵、ポルコ・ロッソの愛機「サボイアS.21」、『多砲塔の出番』で悪役大佐が乗っていた超重戦車「悪役1号」等はプラモデルになっている。
1987年の劇場用アニメーション作品。GAINAXの記念すべき第一回作品。上記のように何から何までを一から考えて異世界を作り上げており、犬監督}押井守氏は本格的な異世界ファンタジーをやりきった作品の例として『
風の谷のナウシカ』と本作を挙げている。『ナウシカ』は遠未来が舞台の
ポストアポカリプスものである為、実質的には
先にも後にも本作を超えるこだわりを見せた異世界ミリタリーものは無いと言っても過言ではない。
ただ、肝心の内容が「
まんが異世界ライトスタッフ ~ロケットをつくった男たち~」とでも言うべき地味な内容であった為配給会社は頭を悩ませ、「愛の奇跡、信じますか?」だの「有り難い経典を宇宙まで取りに行く」だの口八丁手八丁の嘘八百を並べ立てた結果案の定赤字を出し、その補填も兼ねてガイナックスは『トップをねらえ!』を制作する事になったという。
また、当時はまだまだ異世界ものに対する理解度が低かった時代であり、配給がどうしても異世界の概念を理解できず
「遥か5万光年彼方の惑星オネアミス」と設定を勝手に付け足されてしまう一幕もあった。
オネアミス王立空軍のレシプロ戦闘機「第3スチラドゥ」は映画の公開から
約30年後にプラモデル化される等、未だに根強い人気がある。
1995年から散発的に発売されている、恐らく国内のフライトシューティングゲームでは最も有名だと思われる“超本格的ヒコーキごっこ“。「Strangereal(ストレンジリアル)」と称される架空の地球を舞台に、『エリア88』ばりに国際色豊かな航空機を駆り空中要塞や巨大レーザー砲などのトンデモ兵器群に挑んで行くビデオゲーム作品。詳細は個別項目を参照してもらいたい。
ここ最近は我々の存在する実在の地球を舞台にした作品が続いていたが、やはりファンの間では不満もあったようで、最新作の『7』ではお馴染みの世界観に戻された。
『キノの旅』でお馴染みの時雨沢恵一氏によるライトノベル作品。2002年にいちばん最初の『アリソン』が刊行され、その後続編の『リリアとトレイズ』とスピンオフ『メグとセロン』が刊行された。2008年には2作を総合したTVアニメ『アリソンとリリア』も放送された。
タイトルの通りパンゲア大陸めいたたった一つの超大陸を舞台にした、親子二代にわたる冒険物語。アニメ版はNHKで放送で放送された為「いかにも」な仕上がりになっていた。
断じてSCPでは無い。 2002年から連載が開始された、岩永亮太郎氏による漫画作品。一人の天才によりオーバーテクノロジー的に技術が急速に進歩した世界を舞台に、戦災復興部隊の活躍を描く。2007年にはTVアニメ化もされた。詳細は個別項目を参照してもら(ry
島田フミカネ氏のメカ少女イラストを元にした角川書店のメディアミックス作品群。2008年のTVアニメーション作品が最も有名か。その後も続編やスピンオフが幾つも作られる人気作品となり、萌えミリを人口に膾灸するのに一役買った。詳細は個別項目を参照して(ry。
当初の設定では、異世界だからなのかどうかは不明だが中国大陸がごっそり無くなってる等、大陸各部に欠損部があった。流石に現在使われている地図では改変は控えめになっている。
2008年にSEGAから発売され、その後もシリーズを重ねているビデオゲーム作品。架空のヨーロッパを舞台に、サイヤ人的な「謎めいた古代の戦闘民族」等のファンタジー要素を盛り込んだ戦記を描くSRPG。2009年にはTVアニメにもなった。詳細は個別項目を参照(ry
キャラクターデザインを人気イラストレーターのRAITA氏が担当しており、氏の作風で特徴的な「小顔で長身痩躯、胸と尻が出たボンキュッボン」な体形をした「セルベリア・ブレス」は人気キャラクターでありやたらとフィギュア化に恵まれている。主人公メカのエーデルワイス号も一応プラモデルにはなっている。
ロシア趣味で知られる速水螺旋人氏が、2011年から連載している漫画作品。
架空の国家「大公国」の「兵站軍」に赴任した生真面目でちょっと気の強い女の子が主人公で、最前線から少し離れた占領地を舞台に兵隊の日常を描く。
月刊誌に隔月連載されてる為単行本の発売は年一冊ペースと遅いが、その分描き込まれた内容が特徴。
カルロ・ゼン氏が2011年からArcadiaに連載していた小説を元にしたライトノベルだったり漫画だったりアニメーション作品。詳細は個別項目参(ry
タイトルに反して本格的な戦記モノで、野郎ばかり出て来るし肝心の主人公も変顔を見せるインパクトの強い内容で大ヒットした。
暁佳奈氏による2015年のライトノベル作品、及びにそれを原作とする2018年のTVアニメーション作品。京都アニメーション大賞唯一の大賞受賞作品。
「テルシス大陸」という架空の超大陸を舞台に、身も心も傷ついた戦闘美少女がタイピストとして第二の人生を生きる姿を描く。両腕の義手や「自動手記人形」という職業名など、一見主人公がガイノイドだと思わせるようなミスリードを誘う作風が特徴的。
TVシリーズの放送中は所謂「萌え」とはやや離れた内容と、同クールに話題作があった事であまり注目されなかったが、内容自体は劇場版なみの超絶作画と人情的な脚本で感動作として評価が高い。
2019年のTVアニメーション、及びにアプリゲーム作品。海が殆ど失われた異世界「イジツ」を舞台に、「穴」から落ちてきた航空機を駆る空戦もの。異世界ミリタリーものとしては珍しく西部劇がモチーフであり、主人公たちは
軍隊ではないのが特徴。
『ガルパン』のスタッフが主に制作した為「二番煎じ」との色眼鏡で見られてしまった感があり、萌えキャラらしからぬ性格の登場人物や大量に売れ残ってしまった関連商品から放送当時の評判は良くなかったものの、あまりに悪評が目立ち過ぎているきらいがあり一方的に駄作だと斬って捨てるべきでは無いとする意見も多い。
その一方でアプリは好調らしく、企画段階からゲーム化も前提にしていた辺り
『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』と同様のメディアミックスを前提とした作品であり、アプリの宣伝アニメと見るのが妥当であろう。
【2.の特徴】
●概要
こちらのルーツはハッキリしており、1971年のSF小説『
戦国自衛隊』から始まった架空戦記ブームがその起源だと思われる。ブームの中で『
戦国の長嶋巨人軍』のような怪作も生まれたが、より現代の異世界ミリタリーものに近い設定の作品として1979年のジェリー・パーネル氏のSF小説『地球から来た傭兵たち』が挙げられる。こちらの舞台は異世界ではなく地球外の惑星な点が、時代とお国柄を忍ばせる。
また、このタイプの異世界ミリタリーものは「
地球なめんなファンタジー」と呼称される事も多く、詳しくは個別項目を参照してもらいたい。
●魔法生物や亜人種が出せる
1.の定義では出すのが難しかったこれらの存在であるが、2.の定義だとむしろ違和感こそが持ち味である。異世界ミリタリーものにおいて「典型的なファンタジー存在と近代兵器が戦ったらどうなるか?」というクロスオーバー的なシミュレーション要素は醍醐味の一つであるし、近代装備に身を固めた自衛官とエルフのような典型的ファンタジー世界の住民が交流するジェネレーションギャップ的なおかしみも魅力の一つだろう。
●異世界“転移”ものが大前提となる
自衛官が転生して中世ファンタジー風の軍隊に戦術指南をしたり、ショット・ウェポンばりに異世界で兵器開発に励んでも面白そうだが、その場合『戦国自衛隊』からの伝統である近代兵器による無双や、「限られた物資をいかにやりくりして戦うか」といった戦術的な魅力は無くなってしまうし、前世のスキルをフルに活かせるような近代的な軍隊がある異世界に転生したら、1.の定義に近くなってしまう。
●政治的に色々面倒な事になってしまう場合がある
1.の定義とは真逆に、実在の軍隊を取り合う以上政治的な話題にはデリケートにならざるを得ない。特に自衛隊を扱う場合問題は尚更で、『GATE』のTVアニメが放送中の頃は良くも悪くも話題になっていた。
●代表的な作品
2006年からArcadiaに投稿、その後2010年に物理書籍化された柳内たくみ氏による小説作品。『迷彩君』の竿尾悟氏によるコミカライズや、2015年から翌16年にかけて分割2クールでTVアニメ化もされ、現在も続編が計画される等人気を博している。詳細は個別項目(ry
高校生時代に自身のWebサイトで連載していたオリジナル小説のリメイク版を2011年から「小説家になろう」で連載、その後書籍に移行した浜松春日氏の小説作品。転移型で異世界との相互移動が不可能だったり、海上自衛隊がメインだったりと『ジパング』に近い内容。
上記二作品以外にも、各種小説投稿サイトには同様の設定を持つ作品が多数投稿されている。塹壕戦よろしく、軍用スコップ片手に突撃してみるのも一興ではないだろうか?スコップが折れても責任は持てないが
【異世界に行きたい!どうすれば?】
●概要
『数学的な宇宙』の著者マックス・テグマーク氏が語る所によると、
並行宇宙には4つのレベルがあるらしいが、異世界ミリタリーものにおいては「レベルⅠ多宇宙」か「レベルⅡ多宇宙」に当たるものと思われる。
●魔法の存在しない異世界
まず魔法の無い異世界であるが、これはつまり我々の地球と物理法則が同じという事であり、これはレベルⅠに相当する。テグマーク氏の表現を借りれば「物理の授業では同じ事を学ぶが、歴史の授業では異なる内容を学ぶ」のだ。
レベルⅠ多宇宙は時空的には我々の宇宙と同一であるが、我々の世界を構成している素粒子の種類は有限であり、組み合わせのパターンにも限りがあるので、超々遠距離には我々と全く同じクローン地球が存在する可能性も確率的には有り得るのだ。その「超々遠距離」というのは本当に尋常ではなく、具体的には
10の10の29乗乗という何だかよく解らん距離にある。単位は光年だろうがミクロンだろうが何でも良い。ここまで桁数が大きくなると、単位が何であっても誤差以下の違いでしかなくなってしまうのだ。
まるで意味がわからんぞ! そんな遠距離に行こうにも、正攻法では光の速さを超えて移動する事は出来ないので到着する頃には多分
宇宙が終ってるし、ワープエンジンを使っても、そのような超々光速航法を行うには文字通り宇宙一つを犠牲にするようなエネルギーが必要になる。
つまり、ヴァイオレット・エヴァーガーデンちゃんには逢えないということ。
スミカ・ユーティライネンです(・ω・` ) ●魔法が存在する異世界
一方『幼児戦記』や『GATE』のような魔法の存在する異世界は物理法則からして異なる訳で、こちらはレベルIIに相当するだろう。
宇宙はビッグバンによって始まった後「
インフレーション」と呼ばれる急激な膨張を起こしたが、一様に膨らんだのでは無く、
某夢の国で売られてる風船のように不均一に膨らんだ
ハハッとすれば、膨らみ方の違いにより異なった“泡”の領域が生じ、それが別の宇宙になる。また、それとは別の説で、
ブラックホールができるとその内側で新しい宇宙が創られるという説もある。こちらの別宇宙も異なる物理法則を持つらしい。
だが、異なる“泡”の領域を行き交う方法は皆目検討もついていないのが現状らしく、またブラックホールの向こう側に行こうと突っ込んでも潮汐力という力でぺしゃんこになってしまうし、新しい宇宙を創ったブラックホールはどっちみち蒸発してしまうらしいので、こちらも難しいだろう。
そもそも我々の宇宙と繋がれるなら
それはつまり同じ宇宙という事であり、別の宇宙では無くなってしまうのだ。
つまり、ターニャ・フォン・デグレチャフちゃんにも逢えないということ。スミカ・ユーティライネンです(´・ω・`)ノシ
逢えない方が幸せかもしれないとか言ってはいけない
【番外編】
●概要
1.と2.の定義を併せ持つ作品(20世紀欧州風異世界の軍隊と中世ファンタジー風の異世界が繋がる、またはエルフやオーク等のファンタジー生物がいる異世界ミリタリーもの)はまず見ない。理由はややこしすぎるからだろう。
以下に、異世界ミリタリーものと呼べるかどうかちょっと怪しいが一応紹介すべき作品を列挙しておく。
●代表的な作品
ロボット作品の片隅で密かにジャンルを築いている「ファンタジーロボットもの」であるが、日本における元祖異世界ファンタジー『
聖戦士ダンバイン』や
きれいなショット・ウェポン『ナイツ&マジック』、『
ブレイク ブレイド』等も異世界ミリタリーものと呼べるかもしれない。
詳細は個別項目(ry 『
艦これ』と並んで萌えミリブームの火付け役となった2012年のTVアニメーション作品。
劇場版は大ブームになった。
「戦車道というものが存在し、それらを行える社会構造があるパラレルワールドの話だから」という理屈で2016年の星雲賞メディア部門を受賞した…という理由で一応リストに入れたのだが、登場する兵器や国家は全て実在のものであり、正直な所ガルパンが異世界ミリタリーものと言えるかは少々怪しい所がある。そもそも星雲賞は過去に、とてもSFとは言えないような『
となりのトトロ』や『
CCさくら』、
制作者ですらSFとは思っていなかった『ママは小学四年生』等が受賞しており、また『
こち亀』が受賞した際は長期連載が終了した頃であった為、功労賞的な意味合いがかなり強かったものと思われる。このように、星雲賞はかなりミーハーというか、「
その年にオタクの間で流行った作品に贈られる賞」といった意味合いが強い。
詳細は個別項目を参照してもらいたいが、当初は典型的な異世界ファンタジーの世界観だった「ファンタジーバトル」の4万年後の未来とされており、宇宙エルフ、宇宙オーク、宇宙ドワーフ等が盛り沢山の楽しい世界であった。宇宙モンスターや宇宙邪神などは引き続き登場するものの、残念ながら現在では設定上の繋がりは曖昧にされてしまい、異世界ミリタリーものとは言い難くなってしまった。
何か他にもある気がするので、たとえ戦時中であっても異世界に転生したい!という方は追記修正お願いします