進化が止まらない。ラグビー日本代表のナンバー8姫野は、体の強さを世界に知らしめた。守備陣を押しのけてボールを運ぶ脚力と体幹力。研ぎ澄まされた嗅覚で倒れた相手に詰め寄り、ジャッカル(相手ボールの強奪)を成功させるパワー。攻守で存在感は高まるばかりだ。
名古屋市立御田中でラグビーを始めた時から、周りの生徒よりも体が大きく、当たりの強さは突出していた。3人がかりで構えるダミーに突進しては、吹っ飛ばした。
同級生を負傷させる危険性から、当時顧問の松浦要司さん(42)=現・市立志段味中=は「公式戦は100%で良いけど、練習では仲間がけがするからダメだ」と“全力禁止”を命じた。「何で俺だけ本気でやったらダメなんですか」。姫野は食ってかかってきたという。
中3の冬、松浦さんは精神的な成長を願って、米国の心理学者・哲学者ウィリアム・ジェームズの格言を姫野に教えた。「心が変われば、行動が変わる。行動が変われば、習慣が変わる。習慣が変われば、人格が変わる。人格が変われば、運命が変わる」。姫野にとって忘れられない言葉となった。
9月の南アフリカとの壮行試合は、左足首の捻挫で欠場した。そこから傷を癒やし、W杯4試合はフル出場。そして、世界一のパワー軍団と知られる南アとの一戦に臨んだ。「南アのフィジカルに対して、どれだけ前に出られるか。自分自身に対して、チームに対して期待しています。ワクワクしています」。全力で真っ向勝負を挑み、姫野が4強への壁をぶち壊す。そして日本の運命を変える。